68.冒険者も驚く過剰精錬
鍛冶屋を出て、皆に報告した。
「出来ましたよ……過剰精錬」
「えぇ!?」「か、過剰なんですか!?」
ネメシスもアルムもビックリ仰天。口をあんぐりさせていた。……そこまで驚かれるなんて思わなかったなあ。
「よく壊れませんでしたね」
「成功率低いのに」
二人がこれほど驚くくらいだから、よっぽど成功率が低いのね。つまり、わたしはオジサンに感謝しても仕切れないってわけね。本当に嬉しいな。
「ちなみに、いくつになったのです?」
「+7紅蓮のバンテージですよ~」
と、報告すると、
「「おおおおおっ!!」」
「まじ!?」「すっご」「ギルドの受付嬢さんが過剰精錬を成功!?」「どんな運だよ」「エクサニウムだって、なかなか手に入らないのに」「グレイスさんだろ? そりゃ~運もいいだろう」「やっぱり、ギルドの受付嬢ってすげぇや」「私もギルドの受付嬢やろうかなあ」「ジェネシスに入るの大変らしいよ」
なんか他の冒険者まで騒ぎ始めた。
えー!
「びっくりした……」
過剰をしただけで、このお祭り騒ぎ。
やっぱり、成功率低いんだー。
ただの情報と実際の行動では、これほどに乖離があったんだ。情報だけで知っていたけど、本来なら難しい事なんだね。
このままだと本当にお祭りになっちゃいそうだったので、その場を立ち去った。
◆◇ ◆◇ ◆◇
オラクル邸へ戻り、解散となった。
各々部屋に戻っていく。
久しぶりに冒険だったから、疲労も蓄積している。明日のお仕事に差し支える前に、身体を休めねば――と、部屋へ戻ろうとした時。
二階の角から、フォーサイト様が顔を出した。
「やあ、グレイス」
「お城から帰られていたのですね」
「ああ、言伝を頼まれてね」
「言伝、ですか?」
「皇帝陛下のお言葉だ」
ルト……いえ、アルシュくんの。
なんだろう、ちょっとドキドキする。
「明日でよければ、仕事帰りに城へ寄って欲しい――との事だ。俺もキミを迎えに行く。インペリアルガーディアンとしてね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、明日ね。俺はまた城へ戻らなきゃだから」
白い歯を見せ、爽やかにフォーサイト様は去った。本当に良い人だなあと思っていると、入れ替わるようにして、フレイヤさんがスーツ姿で現れた。
「帰っていたのだな、グレイス」
「はい、ただいま戻りました……あの、リーベ先輩は」
「うん、もう定時で上がった。ウチは残業はあんまりさせない主義でね、ホワイトな職場環境を目指しているし」
さっすがフレイヤさん!
それでいて、ジェネシスのお給料は満足できるレベル。さすが帝国、年収600万セル、残業ほぼなし、有給も義務化されている。福利厚生もバッチリ。アイテムショップの割引とか完璧。さらに、リーベ先輩とか同僚の子も良い人たちばかり。
これほど好条件のギルドは、他にない。
「明日もがんばります!」
「ああ、明日はいよいよ総合窓口を担当して貰おうと思う。イズンとは、もう話したか」
「はいっ、イズンさんとはもう仲良しですよ」
イズンは、翡翠色の髪で、ショートカットの子。同い年で、わたしの一週間前に入った新人さんだった。その実力は、わたしも認める一級品。既に総合窓口を任されているという類稀なる逸材だった。
あの子に負けていられない、だからライバル的な存在でもあった。
「うん、では頑張ってくれ」
激励の言葉を貰い、フレイヤさんは微笑むと何処かへ行った。……よし、やる気も出たし、わたしはお風呂行こうっと!




