63.攻略ギルド
地下迷宮ダンジョン『フォビドン』の攻略を続行した。――さあ、移動しようとしたその時。
地下ダンジョン攻略ギルドらしき人たちが声を掛けてきた。こんなの場所に人がいたのね。
「君たちすげぇな!」
「この絶体絶命のブラックゾーンを女の子が三人!?」
「おいおい、あの金髪の子はギルドの受付嬢のグレイスさんじゃね? ……ジェネシスにいるよな。有名だぞ!」
アサシン、弓職、賢者という珍しい構成だった。少数精鋭の攻略ギルドかな。たまにそういう人たちがいるって聞いた事があった。
男三人は、わたしに注目した。
「ああ、やっぱりグレイスさんだ!」
「この前、ザンキからも守ってくれたよな」
「ここで出会えるとはな、運命を感じる」
握手を求められたりして、応じた。
まさか、わたしの知名度が此処まで高まっていたなんて……。
「なあ、グレイスさん。良かったら、ウチと組まないか? 三人しかいない少数ギルドだが、みんなレベルは高いよ」
赤髪をしたアサシンの男が提案する。……うーん。と、ちょっとだけ困っていると、ネメシスが入ってくれた。
「せっかくのお誘いですけれど、ごめんなさい。でも良ければ、直ぐそこまでなら如何です?」
そう、やんわり断ってくれた。
さすが師匠~。わたし、男の人にいっぺんに迫られると無理なのよね……。
「そう言わずにさ~、ほら、女の子三人じゃ大変だろう。なあ、そこのメイドさんもそうは思わないかい?」
「思いません」
アルムはばっさりだった。
さすがクリティカル型。言葉もクリティカル!
「……っ! そ、そうか……無理言って悪かったね。またジェネシスで会おう、グレイスさん」
そう言い残して、三人は先へ行ってしまった。
「悪い人たちではなかったのかも」
「ええ、彼らは攻略組ですから、ああ必死にもなるのです。グレイスは知名度も力もありますし、今や誰もが欲する存在。しかも、覇王聖女にしてギルドの受付嬢です。男性からすれば、それはもうアイドルのような存在ですよ」
へぇ~。
――って、わたしそんな事に!?
実感ないなぁ。
それから、アルムがやや呆れた顔でこう言った。
「男性しかいないギルドでしたから、少しでも華が欲しかったのでしょうね。要はナンパです」
「そ、そかぁ……」
そんなに悪い気はしないけど、わたしはやっぱり、この二人がいいな。
◆
今日の攻略は地下10Fまでとした。
あんまり無茶をしても死を招くだけだと、ネメシスは厳しく言った。その通り、ここはブラックゾーン。絶体絶命なのである。
こんな高難易度ダンジョンなので【ゴールド】……つまり『レイドボス出現』もたま~にあるようだ。
レイドボスとは、通常のボスモンスターよりも遥に高レベルで、めちゃんこ強いモンスターの事。いつどこで出現するか分からない。出会ったその瞬間、絶望どころか死を覚悟しなければならない程に強敵。
こんな地下でさえ、出現する場合があるとか――。
「帰りましょう」
ブラックゾーンに対応する専用の帰還アイテムを取り出して、いざサンクチュアリへ帰還……そう思った。
『うあああああああああああ……!』
その時に、悲鳴が。
男性の声だ。
「ま、まさか……さっきの三人が!?」
「そのようですね、グレイス。どうします?」
「どうするって……助けるしかないでしょう」
わたしは迷わず先へ進んだ。




