62.地下迷宮ダンジョン『フォビドン』
ブラックゾーンに相当する地下迷宮ダンジョン『フォビドン』へ入った。そこに蠢くモンスターは、どれもこれも『Lv.60』以上。
この階層、地下10Fには、ブラックスライム、アビススケルトン、デッドリースネイクの【ボス属性】を持つ三種がいる。ボス属性とは、ボスモンスターとしての特殊属性があるようで、要はボスモンスターと変わらない強さを持つという事。
端的に言えば『めちゃくちゃ強い』って、アルムが淡々と説明してくれた。
「――分かりました?」
「ええ、その辺りの知識は持っていますから」
「さすが世界一の受付嬢です!」
鍬を華麗に振り、ブラックスライムにクリティカルダメージを与えるアルムは、後退した。敵の体力はもうそれ程残っていない。
弱々しい動きで、黒いスライムは体当たりしてくるけれど――。
「はぁぁぁぁっ!!!」
連携攻撃で、わたしは『ディバインナックル』を打った。
スライムの黒いボディが破裂し、ぼごぉぉぉぉっと鈍い音を立てて破裂した。それから、一個だけアイテムをドロップ。
【RESULT】
EXP:21222
DROP:ブラックゼリー×1
その様子を見守っていたネメシスが満足気に口を開いた。
「さすが覇王聖女。グレイス、貴女に教える事はもうありませんね」
「いいえ、わたしはまだまだです。ネメシスさんから覇王の何たるかを学び、もっと自分を研磨していきたいです」
「素晴らしい! さすがわたくしの嫁!」
ぎゅっと抱きついてくる。
これが最近、ちょっとクセになりつつあった。
◆
ダンジョンを突き進んでいくと、次に獰猛なデッドリースネイクが湧き出て来た。毒を吐いてくる厄介な大蛇だった。わたしより大きくて、威圧感があった。ていうか、にゅるにゅるが気持ち悪い……。
「……くっ!」
紫色の毒攻撃を回避する。
あれを浴びれば状態異常『猛毒』となり、体力は数分と持たない。命に関わる。
「毒に注意してください、グレイス、アルム!」
後方で支援スキルを掛けてくれるネメシスは、声高く注意喚起した。……確かに、毒は厄介。解毒剤も数本しか持ち合わせていないから、回復にも限度があった。
蛇の口から飛んで来る毒を躱しつつ、わたしはモンスターへ接近。自慢の脚力と回避力で前へ出る。
「――――はぁぁぁあぁっ!!」
そして、奥義を繰り出す。
『覇王天翔拳――――――ッ!!!』
拳の雨がデッドリースネイクのボディを何百と打ちつけていく。その威力は大砲のようで、通常ダンジョンのモンスターなら一撃だ。
だけど、相手はボス相当モンスター。
すぐには倒れない。
でも。
「グレイス、付与しますですよ!!」
背後のアルムが付与を施す。
最近覚えた火力増幅エンチャント。一度攻撃しないといけない制約がある為、先程は接近して貰っていた。
でも今はもう条件もクリアしている。
『パワーアップ!!!』
ごうぅっとわたしの拳に赤みが掛かる。
ブーストしたスキルは、デッドリースネイクを遠くへ吹き飛ばし――そして、ついに倒した。ばんっと弾けてアイテムを複数落とす。わぁ、あんなにいっぱい。
さすが高レベルのダンジョンともなると、アイテムもたくさんだ。
「お疲れ様です、グレイス」
「おつです~」
ネメシスもアルムも労いの言葉をくれた。
「ありがとう」
くぅ~~~、やっぱり冒険って楽しい!
以前よりも強くなったし、余計に攻略が楽しかった。もっと奥へ進んでいこう。