56.心をひとつに
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」「グレイスちゃんを守れええええ!!「あの黒いバケモノがやべぇモンスターみたいだぞ!!」「触れるなよ、取り込まれるぞ!!」「距離を取れえええ!」「フレイヤさん、俺たちも駆けつけたぞ!!」「ギルド、ネコネコ団も駆けつけましたぁぁ!」「この黒いのがザンキぃ!?」「はじめてみた!」「スレイプニールギルドも参りました!」
どんどん現れる冒険者たち。
……ああ、あの顔ぶれ。
全員、わたしが受付をした――。
ひとりひとり見覚えがあった。
もちろん、覚えている。
だって、大切なお客様だから。
総勢1000人が集結した。
更に……
帝国・サンクチュアリの騎士たち、3000人。
インペリアルガーディアンのフォーサイト様も。黄金の剣を構えて、堂々と前へ。……来てくれたのね!
その中から、白髪の少年がわたしの方へ。
こ、この子……!
わたしは思わず、手で口を覆った。
どうしてこの子が!?
「お久しぶり、お姉さん」
「あ……あなた、ルトくん!?」
あの一番初めに冒険のキッカケをくれた少年だった。今でもこの笑顔は覚えていた。……ていうか、どうしてこんな場所に?
「その名前は偽名です。改めて名乗りましょう、僕の名前は『アルシュ』です。この帝国・サンクチュアリの皇帝です」
「…………え?」
今、ルトくん……なんて?
ぼうっとしていると、フォーサイト様が傍に。
「グレイス、この御方は皇帝陛下で間違いありません。陛下こそ、このサンクチュアリの聖域そのものです」
そう言われ、わたしはポカンとした。
え、まって……頭の処理が追い付かない。
――でも、やっと分かった。
え、え……ええ~~~~~~!?
「こ、皇帝陛下……」
「ああ、いい。もっと気軽に呼んで。お姉さんは特別だから」
「そ、そう仰られても……」
「さあ、それよりあの四人とザンキだろう」
「は、はい……あれを何とかしないとサンクチュアリが!」
「みんなの力を合わせよう。心をひとつにすれば、勝てる」
ルトくん……いえ、アルシュ皇帝陛下は純粋な眼差しを向け、手を伸ばしてきた。わたしは握手を交わし、誓った。
「必ず……必ず敵を倒しましょう」
「うん。グレイス、君が指揮を執るんだ」
「……分かりました」
もうやるべき事は決まっている。
この絶望的だった状況を打破するには、心をひとつにするしかない。冒険者や騎士たちの皆さんの力を合わせて。
「皆さん……わたしに力を貸してください!! アッセンブルです!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!」「しゃあああああああああああ!!」「うああああああああああああああああああ!!」「ザンキをぶっ倒せええええええええ!!」「クソ上層部もぶっ倒せえええええええ!!」「グレイスちゃんを守るんだああああああああああ!!!」「うああああああああああ!!」「冒険者なめんなのよおおおおおおおおお!!」「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」「みんな、やっちまええええええええええ!!」「だらしゃぁぁぁぁぁあああ!」
冒険者たちが一斉に飛び出していく――。