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53.上層部、襲来

 ――日没。

 空は濃い闇に包まれようとしていた。


 今日はなんだか……変な空。



 オラクル家までは距離がある。



 露店を抜けて――噴水広場へ差し掛かった頃。



 まだそこには冒険者が二十人ほどはいた。多分、ギルドの人たちとかだろう。アイテム取引も盛んに行われているし。



「うんうん、冒険のニオイ最高」



 とか恋し気な冒険心を抱きながら歩いていると。




「――――」「…………」

「ふふ……」「~~すぅ」




 四つの気配がわたしの前に落ちた。



「……?」



 目の前に現れたこの四人は一体……?



「ようやく見つけましたぞ、グレイス」



 ひとり老人が前へ。

 只ならぬ気配を漂わせ、わたしを睨む。



「貴方は?」


「はじめまして、グレイス。私は『レーグル』と申すもの。元・リーインカーネーションの上層部の席に身を置いていた一人でございます……」



 ――――なっ。


 ウソ。



 こんな所に元『上層部』が!?



「うひ、うひひひ……この金髪のお嬢ちゃんがグレイスかぁ。可愛いじゃないのォ……!」



 ニヤニヤと見て来る気色悪い男。

 長い舌を出し、こちらを凝視してくる。気持ち悪い。



「まぁ、まてソール。用が済めばその子は喰い殺しても構わんが――今の段階では、あのお方(・・・・)がどう思うかな」

「チッ……! せかっく極上の心を持つ女がいるんだぞォ! 味見くらいいいだろ、味見くらい……ロワさんよォ」



 あの大人の女性は『ロワ』というのか。腰まで伸びる紫色の髪が不気味だ。



「――こんな小娘がこの周辺をザンキから守っているというのか」



 低く重い声。大きな巨体がのしっと現れた。


 で、でかい……。



「んだよォ、イノセンス……。この帝国は『聖域』がだろう。娘はメンテプリコーシスを守っていたんだよォ!」

「――ふむ。では、殺してしまっても構わんのだろう?」

「馬鹿か! 喰い殺すんだよ。手足をもぎ取って……それから皮を剥いで。まあ、あの無駄にデケェ胸は肉付きも良くて美味そうだな」



 ……うっ。


 なんなのこの人たち!



「なんですか……急に!」



 レーグルという老人がカラカラ笑い、わたしを恐ろしく威圧する。……なんてプレッシャーなの。



「ふぉふぉふぉ……。まだ分かりませんかな。我々は元上層部。我らは既にクビになった……それは何故か。お主の我儘(わがまま)のせいですな」



 それからロワが言葉を続けた。



「だから、我々はお前に復讐しに来たのさ」

「復讐? 逆恨みの間違いじゃありませんか!」

「そうとも言う。だが、クビになった事はたいした問題ではない……」


「?」


「お前という存在が現れた事に問題がある。ザンキは世界を覆うべき集合体。……この世界の支配者となるのだ」


「何を言っているの! ……もしかして」


「ようやく気付いたか、グレイス。我々上層部は密かに『ザンキ』の汚染を広めていた。アレはまだ完全態ではない。もう直ぐ生まれ出ようとする『カオスの権化』なのだからな――それが成長しきれば究極完全態(・・・・・)となる。――だが、お前がそれを無駄にしてしまった……ファイク。ヤツは、いい実験体(・・・)だったというのにな」



「上層部が……全部仕組んでいたの!!」



「フフフ……。ソール、見せてやれ」

「ったくよォ、ザンキ扱いが荒いぜぇ~!」



 ソールという男が周囲にいた冒険者二十人に対し、何か黒いモノを放つ。そして、直ぐに変化が訪れた。




『――――がっ、がががががが、ぐああああああああああああ……!!』



 二十人の冒険者が一斉に苦しみだし……なんと『ザンキ』に変わってしまった。真っ黒い影のバケモノ。大きな大きな影。邪悪そのものがそこにあった。



「うそ……ザンキ」

「極上、極上……う~ん、やはり帝国の心は美味だ。田舎のメテンプリコーシスとは大違いだな。心に余裕がある。これでヤツ等はもう人間ではない。ただのバケモノ」



 そんな……二十人も。



 冒険者を元に戻す方法はないの!?



「言っておくが、あのザンキ達を元に戻す方法はない。そもそも、ファイクは倒したのだろう……もっともアレは、我々のモルモットだったがな」



 ――その通り、あの時はああするしかなかった。でなければ、わたしは殺されていたはず。皆だって。



 だから仕方がなかった。



「さあ、グレイス。我々とこの二十のザンキを前にどうするかな……?」


「くっ……」



「そう簡単に逃げられる筈もない。命が惜しくば我々と一緒に来るがいい。お前の心を黒く染め――世界をザンキで満たす。それでお前の役目は終わる」



 ロワが手を広げて、来いと示す。



 わたしは……。

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