表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/81

52.露店巡り

 今日も『クエスト』の受付を処理していった。

 やっぱりというか、わたしに冒険者が殺到した。嬉しいけど、これだけ多いと大変。多分、今日だけで1000人は(さば)いたと思う。


 それと同時に、数々のデートのお誘いや告白。


 嬉しいけど……断るのも精神的に疲れた。

 休憩室に入って、椅子に座った。他に同僚とかはいない。ひとりぼっちだった。


「…………はぁ」


 なんて独りで疲れていると、フレイヤさんが部屋に入って来た。



「なんだ、グレイス。溜息が多いぞ」



 眼鏡の奥にある赤い瞳でわたしを凝視するフレイヤさん。ルビーのように美しい。



「……いえ、ごめんなさい」

「謝る必要はないが……。新しい職場環境に慣れないのか?」

「そうではないんです。同僚も先輩もみんな良い方です。これまでにない素晴らしい職場環境ですよ」


「そうか、それは良かった。ところでアルムなんだが……あの子はどうかな」


 急にアルムの事を聞かれる。

 多分、わたしと居る時のアルムを聞きたいのかな。


「良い子ですよ~。冷静でブレない所とか、木目細かな気遣いとかに救われています。冒険の時は鍬攻撃がカッコイイですね」


「そう評してくれて姉として鼻が高いよ、ありがとう。ずっと友達でいてくれると嬉しいな」


「もちろんです。わたしの方こそオラクル家のお世話になりっぱなしで……少しはお礼したいです。あ……そうだ、給料全額返還とか」


「それはダメだ。労働基準法で定められているし、給料は必ず受け取らなきゃいけない。それがギルドの掟(マニュアル)だ」



「そ、そうですよね」



 でもそうだ。

 少しはお礼をしないとなあ。



 ◆◇ ◆◇ ◆◇



 定時で終わった。


 定時サイコ~~~!!!



 女子更衣室で身体を伸ばす。さっさと着替えて――。



「…………」



 まただ。

 また誰かに見られているような……気が。



「……誰かいるの?」



 透明(・・)になれるスキルとか装備も実在する。だから、そういうのを使って、わたしをストーカーしている……とか。


 スキルなら『インビジブル』。

 でもこれは、かなりの高レベルかつ『ダークチェイサー』のクラスを要する。そんな高位職は、この辺りじゃあんまり居ない気が……。可能性はゼロではないけど。


 装備なら神器に相当するアーマー『エア』だ。でも、そんなウルトラレアアイテムは、世界にひとつあるかどうか。



 そういうスキルとか装備を駆使しているとしたら……。


 ゾッとする……。



「……さっさと出よう」



 ◆◇ ◆◇ ◆◇



 私服に着替えて、わたしはジェネシスを出た。

 今日は珍しくネメシスやアルムの出迎えはなかった。用事でもあるのかな。



「……ちょっと寂しいですね」



 ぽつりと呟きながら、街を歩く。

 空は茜色。もうすぐ日が沈む時間。


 それでも、露店に活気はあった。



 たまには装備を整えて行こうと見まわった。通路の至るところに露店があるから、目移りしてしまう。


「へぇ……」


 見たことのない剣や短剣。盾や鎧、杖やカタール、グローブに楽器やら種類が沢山あった。


「……まって、グローブ! おじさん、このグローブは?」

「らっしゃい、お嬢ちゃん。ほぅ、女の子なのにグローブとはね。なんだい、キミは物理職なのかな」


「え、ええ……そんな感じです」


「そうかい。これはね『紅蓮のバンテージ』と言ってね。包帯のような布なんだよ。すっごく頑丈で破損率も低いよ」

「鮮やかな赤色ですね~…綺麗」

「そうだろう。効果を見て行くかい?」

「お願いします!」


 その装備が気になって、効果を見てみた。



 ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★


【紅蓮のバンテージ】

【部位】武器

【Effect】

 最高のポテンシャルを引き出すバンテージ。


 ATK100

 攻撃速度 + 10

 完全回避 + 5


 精錬値が[7]以上の場合、

 精錬値が[1]アップする毎に

 全種族に対する物理ダメージ + 50%


 エンチャント[改]の場合、

 スプラッシュダメージになる。


 ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★



「こ、これはレアアイテムね……!」

「うん。滅多に手に入らないアイテムだよ。ある冒険者から買い取ったんだけどね~、ほら、拳の物理職って中々いないだろう。モンク職とか……それこそ伝説の覇王聖女様くらいだよ」


 ということは、まだ買い手も付いていない。


 買うしかない!


「おじさん、これいくら!?」

「そうだねぇ~、一応それでもレアアイテムだから『150万セル』だなあ」



「――――え」



 ひゃ、ひゃくごじゅうまんせるぅ!?



 …………お給料、八か月分(・・・・)…………。



 尚、手持ち無し……。



 がっくし……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ