41.人気受付嬢になった!?
サージュを撃退してからというものの、何故かわたしの受付に長蛇の列が出来始めていた。
「グレイスちゃん、今日のオススメのクエスト頼むよ」「あの茶髪のコをぶっ飛ばしたんだって? すげぇパワーだな」「しかも爆発から守ったんだろう。かっけえぇ」「強い受付嬢とか最高すぎでしょ!」「俺もうグレイスちゃんの受付しか頼まないもんね!」「クエスト窓口だけ人多すぎ~!」
「わわわ……」
こんな人数のお客様は初めてだった。
前のリーインカーネーションでは有り得ない光景。やっぱり、帝国ともなると冒険者の数も桁違いね。
ちなみに、意識を失ったサージュは衛兵が連行してしまった。誰か通報したようだ。多分、フレイヤさんかな。
「大人気だねぇ~グレイス」
「リーベ先輩」
「あのサージュの一件以来、冒険者の間でグレイスの評判が一気に広まったらしくてね~。配属初日にして有名人だよ~」
と、リーベ先輩は事情を教えてくれた。
そうだったんだ……。
先輩が言うには、あの時の目撃者が多数いたらしい。わたしのスキル発動シーンとか、かなり注目されていたようだ。
「が、がんばりますっ」
「無理しないでね~。もしも困ったら交代してあげるからさ~」
「ありがとうございます、先輩」
◆◇ ◆◇ ◆◇
――あれから、わたしは四時間ほど休みなく冒険者達にクエスト情報を紹介した。中にはデートのお誘いを受けたりあったけれど丁重にお断りした。
はぁ……疲れたぁ。
「休憩入りな~」
「先輩……」
このジェネシスでは、リーベ先輩が優しく声を掛けてくれる。……なんだろう、前の職場では先輩って居なかったから新鮮!
定期的に気にかけてくれるし、現任訓練もキチンとしてくれる。同じ目線に立ってくれる。こんな事、元上司ではなかったな。
「では、休憩入りますね。先輩、お願いします」
「あいさ~」
◆◇ ◆◇ ◆◇
休憩室へ向かうと、そこにはフレイヤさんが。
「お疲れ様です」
「お疲れ。ほら、奢りだ」
ぽいっと投げ渡されるポーション瓶。
この深緑色……有名メーカーの栄養剤。
飲むと疲労の回復効果がある。
ちなみに、瓶に付いているシールを集めて応募するとスライムのぬいぐるみが当たるキャンペーン開催中。だから余計に嬉しかった。
「いいんですか?」
「もちろんだよ。真面目に働いている者へのご褒美だよ。それ飲んで後半も頑張ってくれ。グレイスには期待しているよ」
「……はいっ」
フレイヤさんめっちゃ優しい!
元上司とは大違い……。
「ああ、そうそう。しばらく定時上がりでいいぞ」
「え……」
「なんだ、フェニックスが豆鉄砲を食ったような顔して」
久々にそれ!!
「あの……定時上がりって本当ですか」
「まあな。ジェネシスは人員も多いし、問題ない」
わたし、泣きそう。
定時上がり出来るとか、天国!
最高の職場環境。みんな優しい。
やっぱり転職して良かったぁ~。