40.負けない気持ち
大爆発を起こそうとしている元受付嬢のサージュ。なんて事……こんなの自爆テロじゃない!
わたしだけじゃない、多くの人を巻き込もうとしている。……そんなのは、身勝手以上の犯罪行為。
許されない。
「サージュ……貴女を止めます」
「止めるぅ? ふ……うざいわね。もう起爆する……本当に起爆するわよ!!」
それから異常を察知したフレイヤさんとリーベ先輩がやって来た。
「何事だ! む……サージュ、お前を何を……!」
「フレイヤさん……あなたの所為でもありますよ。私を不当解雇するから!!」
「不当なものか。お前自ら辞めたんだろうが」
「うるさいうるさいうるさい!!」
激しく発狂するサージュは、今にもエクサダイトを爆発させそうだった。……まずい。止めないと。このままだと皆死んじゃう。
でも、止めるってどうやって?
考え込んでいると、リーベ先輩がコソコソと耳打ちを。
(グレイス~、あれはエクサダイトだよね~)
(はい。あの感じからして、もう間もなく爆発するかと……)
(そか。じゃあ、私がなんとかしよう。これでも、転移系スキルに長けていてね。実は、冒険者のダンジョン転送担当なんだ~、私)
(そうだったんだ! ということは、物質の転移も……!)
(可能だよ~。アイテム転送は基本中の基本だからねぇ~。アイテムボックスを作ったのも私だし~)
すご!
リーベ先輩だったんだ!
そんな高等なスキルを扱えるとか何者!?
わたしもテレポートとかワープは習得しようと思ったけど、試験が難しすぎて結局叶わなかったっけ……。
(リーベ先輩、お願いします)
(お~け~。グレイスは、サージュの気を逸らしてくれると助かる)
(お任せください)
わたしは先輩の言いつけ通り、サージュの隙を作る事にした。
「サージュ。もう止めて」
「黙りなさい、グレイス。特にあんたは嫌い……大嫌いよ! その金髪とか白い肌とか……可愛い顔とかムカツクの!! なんでアンタなんかがフォーサイト様に気に入られているの! 最悪よ!!」
「そうですか、でも……わたしだってフォーサイト様が好きなんです! 恋だってしていますよ!! こんな気持ちは初めてだった……出逢った時からずっとドキドキして、優しくしてもらって……だから、この気持ちだけは負けるわけには参りません」
真っすぐサージュを見つめた。
すると彼女は一歩引いていた。
「……くっ」
今だ。
わたしは、アイコンタクトで先輩に合図をした。
すると――。
「転移開始……対象『エクサダイト』……アイテムワープ!」
「――――え、しま――」
目を見開き、驚くサージュ。
エクサダイトはどこかへ転送された。
その瞬間、わたしは宙を飛び跳ね……!
「サージュ! あなたをギルドの掟に従い……追放いたします」
ケガはしないよう、威力は抑える。
『――――――覇王岩礁拳!!!』
拳に地属性が付与されると同時に、硬化の特殊属性が纏う。これでわたしの拳は岩のように硬くなる。
それをサージュの鳩尾に捻り入れた。
「え…………ご!? ふぁあああああああぁぁあぁぁ…………っ!?」
サージュはギルドの外へ吹き飛ぶ。
地面に何度も身体を打ち付け、どこかの外壁にぶつかってようやく止まったみたい。
「…………ふぅ」
彼女はもうお客様でもなければ、ギルドの受付嬢でもない。
悪質クレーマー以上の……外道だ。
「グレイス、よくギルドを守ってくれた」
「フレイヤさん……」
わたしは、上司から優しく抱きしめられた。
元上司のエイルには……こんな事されなかった。
フレイヤさんは、胸も大きくて柔らかくて……良い匂いで……本当に優しい上司。わたし、この人になら付いて行きたい。
……ジェネシスへ転職して良かった。
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