36.久しぶりのレベルアップ
黄金の剣に惹かれていると――
また『毒』の飛沫が。
「きゃっ!」
なんとか回避。
わたしの回避力も捨てたものじゃない。
このまま一気にフォーサイト様の元へ。
「グレイス、俺がコイツをタゲっているから殴るんだ」
「分かりました……!」
オープンフィンガーグローブをぎゅっと直し、わたしは走り出す。
それから、スライムに接近して――
「たあっ……!」
一ヶ月振りに拳を殴り入れた。
すると、はじめてスライムを殴った頃とは違い、確実なダメージが入った。
「…………」
久しぶりの戦闘の味。
良かった……変わっていない。
体に程よく感覚が染み付いていたらしい。
間髪を入れず、奥義を繰り出す。
『覇王爆炎拳……!!』
拳に紅蓮の焔が宿る。
業火は果てしなく燃え続けた。それをわたしはモンスターのボディに目掛けて突っ込む。
「ていやあああああッ!!」
ドォォォォォォォォンと轟音がして、白いスライムは吹き飛んだ。そして、洞窟の岩に激突して弾け飛んだ。
【RESULT】
EXP:6340
DROP:塩×1
【Lv.27】 → 【Lv.28】
久しぶりのレベルアップ!
「……やった。やりました、フォーサイト様」
「よくやったね、グレイス。カッコ良かったよ! 聞いてはいたけど、本当に物理タイプだったなんて……まるで覇王のようだったよ」
「そ、そうですかぁ。そんな褒められると照れちゃいますっ」
「少しの時間だったけど、よく分かった。グレイスは冒険に出ている時が一番輝いてるな」
ニッと笑い、更に褒めてくる。
わたしは顔が真っ赤になった……。
…………好きかも。
◆◇ ◆◇ ◆◇
オラクル邸へ戻り――自分の部屋。
汗を掻いたし、またシャワーを浴びにお風呂へ。
今度はもうネメシスの姿はない。
一人ぼっち。
ちょっと寂しいけど……
でも、たまには一人が良い。
石鹸を泡立てて、身体に塗りたくっていく。
「…………」
フォーサイト様に振り向いて貰えるよう、明日から始まる受付嬢の仕事も頑張らなきゃ……。一番になって、いつか……この想いを。




