35.黄金に輝く剣
ペンタグラムを使い、レッドゾーンの『洞窟』へ向かった。広い洞窟の中は冷たくて寒かった。
「……うぅ、いつもながら薄着すぎたぁ」
「大丈夫かい、グレイス」
身を振るわせていると、フォーサイト様が顔を覗かせてきた。
「は、はいっ……」
おかげで全身が一瞬でポカポカになった。
そ、そっか。フォーサイト様でドキドキすれば寒さなんて吹き飛ぶ。……って、わたしやっぱり恋しちゃったのかなぁ……最近変かも。
俯て歩いていると、小石で足を引っ掛けて倒れそうになった。
「……きゃっ」
すると、フォーサイト様が支えてくれた。
「やっぱり寒かったのかな」
「…………」
「グレイス?」
「…………あのぅ、そのぅ……」
このまま……雰囲気のままに……キスとかしちゃって――
「グレイス、モンスターだ!」
…………ですよねぇ。
タイミング悪く、モンスター登場。
洞窟系というとゴーレムとかコウモリ系かな。
と、敵モンスターを確認すると。
「あの白色のモンスターは『ホワイトスライム』だ……」
「スライム!? ……う、うそ」
こんな洞窟にスライムがいるんだ。
しかもホワイト?
「ヤツ等は、洞窟内にある塩分を好む。だから、あんな色になっちゃうんだよ」
そういえば、アイベックスというヤギ系モンスターが、塩分を求めて険しい崖を登攀すると聞く。そこで岩肌を舐めて塩分を摂取するという。
あのスライムも同様に塩分を求めた事により、身体が変色したのかもしれない。
「気を付けて、グレイス。あれは見かけによらず『Lv.50』もあるんだ」
「50も!? た、高い……」
「大丈夫。俺がキミを必ず守る。さあ、壁するよ」
と、フォーサイト様は駆けだしていく。
カ、カッコイイ~~!
とか油断していると、ホワイトスライムの攻撃が飛んで来た。
「……え」
ぷしゅーとスライムの体液が飛んできて、それがわたしにベシャリと……ねばねばの白い液体が顔に掛かった。
「…………いたっ」
「それは白いけど『毒』だよ、グレイス。ほら、この解毒ポーションを!」
瓶を投げられて、それをキャッチ。
すぐに飲んだ。
「……あぶなかったー。毒ダメージだったの……」
うぅ……。
でも顔に白いものが付着したままー…最悪。
手で拭おうとすると、中々の粘着力だった。
「気持ち悪い~…」
ゲンナリしていると、フォーサイト様がいつの間にか剣を抜いていた。……あれ、どこから出したのだろう。
確か彼は剣を携えていなかったし……もしかしてスキル?
フォーサイト様の手には、黄金に輝く剣があった。ピカピカ金色に光る刃。神秘的でわたしの心は奪われてしまった。
「きれい……」
不思議だった。
何処からともなく取り出された剣。
あれは何?