33.面接なし!?
お風呂を出て直ぐに晩餐となった。
食堂へ向かうと、そこにはフォーサイト様やアルム、フレイヤさんの姿もあった。その背後に複数のメイドさん。
これが貴族の食卓。
テーブル長ッ。
食器とかの数すご……。
「グレイス、そこへ座って」
フォーサイト様に促され、わたしは着席。
隣にネメシスが座った。
「作法とか細かいマナーは気にせず、ゆっくり食べてくれ」
「……は、はい」
ナイフとフォークを取り、わたしは料理を戴いた。……美味しい。涙が出る程に美味しかった。こんな美味しいものは初めて口にしたかも。
なんの料理か分からないけど!
あまりに美味しくて食事に夢中になっていると――
「グレイス、明日の面接だが……」
眼鏡を掛けたフレイヤさんがわたしに注目していた。ちょっとビックリして、わたしは口に含んでいたものを喉で詰まらせた。
「うぐっ……」
「大丈夫か、グレイス。水を飲め」
ネメシスに水の入ったコップを取って貰い、わたしは飲み干した。
「…………すみません」
「いや、もうここで話しておこうと思ってな」
「え……」
「……採用だ」
「――――――へ」
「もう一度言うか? 採用だ」
「え…………えええええええええええ!?」
食事の席でわたしは飛び跳ねた。
「グレイス! 驚きすぎですよ!」
ネメシスに窘められてハッとした。
「…………ご、ごめんなさい」
謝ると、クィッと眼鏡を上げるフレイヤさんは、改めて鋭い視線を向けて来た。
「いや、こちらも悪かったな」
「でも急にどうして……」
「うん、それなんだが……今日、お前も会っているはずだ。あの茶髪の受付嬢を覚えているか」
「あー…、フォーサイトさんにデートのお誘いをしていた」
「勤務中だったうえ、グレイスに悪態をついていたと兄上から聞かされた。あの後それについて彼女に厳重注意したんだ。その結果、辞められちゃってね……」
呆れ顔で肩を竦めるフレイヤさん。
「――で、人手不足でね。即戦力が必要なんだ」
「それでわたし? 他の受付嬢は?」
「もちろん、使える職員はいる。だがね、ジェネシスは訪ねて来る人間も多ければ、扱う仕事量も多い。だから、経験豊富のグレイスの力が必要なんだ」
わたしが……必要。
必要とされている。
やりかったギルドの受付嬢。
それが無条件で就職できるなんて……
大チャンスだ。
「やります! わたし、ジェネシスで働きたいです!!」
「良い瞳をしている。兄上は正しそうだな。それと、アルム……」
「姉様、グレイスは世界一の受付嬢。私が保証します」
アルムがそう評価してくれた。
嬉しくて胸がいっぱいになった。
「わ、わたくしだってグレイスを認めています! 彼女はいずれ、覇王聖女になるのですよ。最強の受付嬢になるんです」
まるで対抗するようにネメシスも言った。
みんな優しい。
その期待に応えねば……!
「フレイヤさん、よろしくお願いします!」
「こちらこそ。よろしくな、グレイス」
フレイヤさんの笑顔は、花のように優しかった。
この人ならきっと……。