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32.最高の生活環境

 お店のような広い部屋を借りて、わたしはポツンとベッドの上にいた。ネメシスも隣の部屋にいるみたい。



「こんなに広いと……ちょっと(さび)しいかな」



 数十メートル歩いてやっとにベランダがあるし、そこから街を一望できた。景色も凄いけど、部屋には色んな物が備わっていた。



 暖炉、本棚とか広々としたテーブル、美しい絵画、お洒落(しゃれ)な置物、お花、観葉植物。絨毯(じゅうたん)だって、これは帝国製一番の特注品でしょう。



 そして、高い天井には最上級のシャンデリア。

 すっごく豪華です……。



「まさに(ぜい)の限りを尽くしたって感じですね……」



 いつしか受付嬢の仕事で、お給料を溜めてマイホームを購入しようかという人生設計があったけれど……フォーサイト様が言うには、この部屋はわたしのモノ(・・・・・・)らしい。



 つまり、ずっと住んでいいって事。

 実質、貴族の仲間入り!?



「…………わぁ、やば」



 そう考えて、わたしは全身が震えた。


 こんなただの受付嬢のわたしが……貴族に?


 ブンブンと頭を左右に振って我に返った。



 いえ……わたしは受付嬢(・・・)よ。



 こんな素晴らしい環境を手に入れたからって、欲望に負けちゃダメ。……確かにフォーサイト様の事は気になる。でも、あんな素敵な方なのだから、女子が放っておかない。だから、きっと心に決めた女性がいるに違いない。



「…………はぁ、儚い夢かなあ」



 ふかふかすぎるベッドに身を預け、枕を抱いた。



「……お風呂に入ろうかな」



 部屋にはお風呂があった。

 アルム(いわ)く、4、5人は余裕で入れるジャグジーらしい。



 浴室に入って、スカートを脱いで次にブラウス。

 全て脱いでわたしは中へ――。




「…………へ」




 しかし、そこには既に先客が!?



「ちょ……ネメシスさん!!」


「待っていましたよ、グレイス」


「び、びっくりしたぁ……ていうか、お風呂は各部屋に備え付けられていますよね!? どうして、わざわざこっちに!」



 そう聞くと、ネメシスは呆れた顔をして、



(さび)しいからに決まっているでしょう。さあ、こちらへ」


「随分と素直に言うのね……」


「ひとりぼっちは(さび)しいものですよ。どうせなら部屋も一緒にして貰いますか」


「うーん、そうだね。わたしも慣れなくて……。でも、お風呂に勝手に侵入しないでね。怖いから」



 そう注意すると、ネメシスは頭を下げた。



「ごめんなさい。わたくしは、グレイスが好きなので」


「……あーもう。そんな事言われたら怒れないじゃない。分かった、好きにして」



 ええ、とネメシスは笑い、わたしを椅子(いす)に座らせた。



「……洗ってくれるの?」



「もちろんです。大切な弟子(でし)ですから」


「普通逆じゃないの……?」



「師とは、弟子(でし)を導く存在ですからね。でも、今はお風呂ですから……そうですね、親愛なる友として」



「ネメシスさん……ひゃぅ!? ちょ、そこは……」



「…………また大きくなりました?」

「わ、分からないよ、そんなのぉ~」



 それから、わたしはネメシスのされるがままに……。もぉ~、お風呂に入るたびに色々触られている気がする。

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