31.新しい居場所
※グレイス視点です
どれほど歩いただろう。
オラクル邸宅の通路はやたら広く、距離があった。廊下にはいくつもの絵画や高そうな壺やらフルプレートが煌びやかに飾られていた。部屋も数えきれない程で圧倒される。
桃色髪の騎士・フォーサイト様の大きな背中を追いかけて行くと、やっとそこに辿り着いた。
「この奥がグレイスとネメシスの部屋だ」
案内された場所は、三階の見晴らしの良い部屋だった。これ……展望台? なんて思わずツッコミたくなるほどの俯瞰風景。
青空の下に広がる街並みを一望できる空間が広がっていた。
もともと高台に三階建てという邸宅。
そりゃ~、景色もいいよね。
「広い……」
「そうですね……グレイス」
わたしもネメシスもその圧倒的な風景に立ち尽くす。フォーサイト様とアルムは普通だよっと二人して笑った。
普通じゃないって~…。
これが貴族なのね。
自分も貴族になれたら、こんな豪邸に住めるんだなぁ。……あ、そっか。フォーサイト様と結婚出来たら――――え、わたし何を。
自分で考えて思わず両手で口を塞いだ。
それから顔が燃えるように赤くなった。
「グレイス……? どうして顔が赤いのです」
ネメシスがジロジロ見てくる。
余計に恥ずかしくなった。
「……ひゃうっ」
「どうして顔を逸らすのです」
「……なんでも……ない」
とてもじゃないけれど、言えるワケない。
…………参ったなぁ。
わたし、フォーサイト様が気になってる。
「……? グレイス? 俺の顔になにか付いてる?」
「いえ……。あの、この部屋借りていいんですか」
「ああ、いいよ。アルムの初めての友達だからな、大歓迎だ。だから、この部屋はグレイスのモノだよ」
フォーサイト様は予想外の情報をくれた。
アルム……友達いなかったんだ。
「……兄様。それはナイショって約束ですぅ……」
アルムは、わたしと同じように顔を真っ赤にして、フォーサイト様を睨んでいた。スカートを両手であんな力強く握って……こんな子供みたいな表情は初めて見た。お兄ちゃん子なのかもしれない。
「悪い悪い、アルム。じゃあ、後は任せた」
「むぅ。兄様、あとでお風呂ですよ」
「もう一緒に入る歳じゃないだろ」
そうフォーサイトさんはケラケラ笑い、背を向けて去った。
爽やかだなあ~。
「って、お風呂!?」
「子供の頃は一緒に入ってたのです。兄妹なら普通ですよ~」
ああ、子供の頃の話ね。
「ちなみにアルムって何歳なの?」
「私は13……あ、違うです。最近、14になりました」
若っ!
わたしは思わず心の中でツッコム。
それにしても子供っぽくないっていうか、シッカリしているような。やっぱり、教育の違いなのかなって勝手に納得した。