28.自由を求めて
聖女・ネメシスは、わたしの前に現れた。
もう二度と会う事もないと覚悟していた。でも、彼女はそれでも目の前に姿を現した。
どうして。
「……ネメシスさん」
「グレイス、わたくしは貴女を見捨てません。だから、追いかけて来ました。今度こそは辛い目に遭わせないように」
ネメシスは頭を下げ、言葉を続けた。
「あの一ヶ月、わたくしは貴女の為と思って静観していました……けれど、それは間違っていた。貴女は冒険を渇望していた。なのに……遠回しにも無理をさせてしまった。これはわたくしの罪です」
「そ、そんな……ネメシスさんが悪いわけじゃ……」
そう、あれは自分が悪かった。
結局、リーインカーネーションを去ったのはわたしの意志。あのままでは潰れていたし、自由な冒険は望めなかった。
だからこそ、我儘を押し通した。
ズルく生きようとした。
だって、わたしは人間だもの。
心がある人間だから。
自由を選べる女の子だから。
決してこの選択が間違いだとは思わない。
この挫折が大きな転換期となり、これからはもっと違った人生を歩めるはず。そう、自分の未来の為にわたしはリーインカーネーションを辞めた。
「わたくしは、父と同じ轍を踏んでしまいました。いけませんね、あの父と同じようにはならないと心に誓ったのに……。グレイス、今度はもう同じ過ちは繰り返しません。貴女と冒険に出たいのです。だから……」
手を伸ばして来るネメシス。
わたしは……。
「……ありがとう。今まで心配掛けてごめんね。わたしもネメシスさんともっと冒険したいです。もっと沢山の事を知りたい」
「グレイス……良かった……」
胸を撫でおろすネメシス。
もしかして、断られると心配していたのだろうか。そんなワケがない。だって、彼女はわたしにとっての師匠なのだから。
自然と手を繋ぎ、わたしはネメシスを連れてオラクル家へ向かった。
◆◇ ◆◇ ◆◇
【オラクル家】
「……わぁ、ここが」
ギルドから歩いて30分ほど。
城より近い場所にオラクル家はあった。
「二人とも俺から離れないでくれ。迷うと大変だから」
先を行くフォーサイト様が気遣ってくれる。
その通り、迷いそうなほどに庭が広かった。
自然いっぱいで、キレイなお花畑が辺り一面に。
木々もたくさん。
これは庭というより、楽園だ。




