26.帝国最大ギルド『ジェネシス』にて
ギルド『ジェネシス』は、国の中心に近い場所にあった。そんな場所へ遊びに行った事はなく、これが初めてだった。
帝国最大のギルドというだけあり、大規模で城のように巨大。自分の所属していたリーインカーネーションよりも遥に大きくて眩暈がするようだった。
「すご……」
「大きいだろう。所説あるが巨人が建てたという伝説がある」
「巨人、ですか」
そういえば、もっと高難易度のダンジョンには巨人がいると聞いたことがあった。倒すのもかなり大変だとか。でも、こうして帝国に貢献する巨人もいるんだ。
少し歴史を知りつつも、わたしは中へ。
「ありがとうございました、フォーサイトさん」
「いや、俺もついていくよ」
「え……」
「ひとりは寂しいだろう。俺が見守っててあげるよ」
なんと優しい……。
こんなに心優しい言葉を掛けて貰えるのは初めてかも。
「本当に何から何まで」
「良いさ。妹の頼みだし、なによりも俺自身もキミに頑張って欲しいって思うしさ」
ニコっと屈託のない笑みを向けてくるフォーサイトさん。わたしはその笑顔がまぶしくて顔が赤くなった。……わぁ、カッコイイ。
……ドキドキしつつも顔を逸らして、わたしは向かった。
◆◇ ◆◇ ◆◇
フォーサイトさんを連れて歩くと、注目度抜群だった。
みんな彼を見た。
なんと男性ですらその視線は、彼に。
「……フォーサイトさん凄い人気ですね」
「ん、ああ~」
あんまり興味はないのか、素っ気ない。
どうやら人気とか拘っていないようだ。なんだか意外。でも、そんな彼がちょっと気になり始めている自分もいた。
この騎士は皆の憧れなんだ。
受付へ向かう。
少し待たされてやっと番が来た。
「――ご利用ありがとうございます。ご用件をお伺いします」
ショートカット茶髪の受付嬢だった。
丁寧で姿勢も良い。わたしから見て彼女は出来ると思った。長く在籍しているのかも。
「あの、このギルドの受付嬢になるのは……どうすればいいのでしょうか」
「…………」
なぜか『?』と、受付嬢は首を傾げた。
そんな『?』になられても、わたしも困る。
ていうか、フォーサイトさんを見ているよう。それから、受付嬢は赤面してわたしにお構いなしに――
「フォーサイト様っ! あの、今日のご予定空いてませんか……」
当の本人は面倒臭そうに、けれど丁寧に対応した。
「残念だけど、俺にはグレイスがいるから」
やんわり断っていた。
――で、なぜか睨まれるわたし。どうして!?
「……えーっと、なんでしたっけ」
うわ、この子! なんて態度を! 受付嬢にあるまじき接客である。第一印象から一転、これはダメね。
「ここのギルドの受付嬢をやりたいのです」
「……ふぅん」
ふぅんって……やる気なさすぎ!
完全に逆恨みじゃない……!
困っていると、フォーサイトさんが横から入って来た。
「すまないが、このグレイスさんを何とかあげてくれないかな。俺からも頼む」
「……え、ええ。フォーサイト様がどうしてもとおっしゃるのなら……」
渋々と受付嬢は奥へ行った。
「……っ」
「まあまあグレイス。落ち込むなって。大丈夫だよ、俺は味方だ」
「フォーサイトさん……はいっ」
そうだ、彼が味方してくれる。
堂々としていよう。
しばらくして桃色髪のエルフが。あの人が上司――…って!
「エイルさん……?」
「はじめまして。……ん? エイル? ああ、妹な。エイルからお前の話は聞いているぞ、グレイス」
「妹さん!?」
「なんだ、聞いていないのか。私はエイルの姉で『フレイヤ』だ」
え…………ええええッ!?




