13.労働基準監督ギルド
桃色髪のメイド服の女の子がいた。
髪をリボンで結び、小柄で可愛らしい感じの。
エイルに呼ばれた女の子は、こちらへ向かってくるなり――
「どうも。労働基準監督ギルドの『アルム』です」
「アルムさん……って、労働基準監督ギルド!?」
それって……このギルドよりも偉い組織じゃ。なぜそんなギルドが此処に。ていうか、こんなメイドさんがいるものなの?
「あの……」
「言いたいことは分かります。ねえ、エイルさん」
「さあな。それより、グレイス」
「は、はい?」
「クエストを受けたいのか」
そりゃ受けたい。
でも、ギルドの受付嬢がクエストを横取りなんて……そんなこと。
「構わんぞ」
「え!?」
「なんだ、フェニックスが豆鉄砲を食ったような顔して」
またそれ!
わたしそんな顔してないし!
てか、フェニックスってモンスターは聞いた事がないし!
「エイルさん、クエストを受けて良いとおっしゃいましたね」
「特別だよ。ほら、最近よく働いて貰っていたからな。ボーナスってことで」
「でも……」
「なぁにこれくらい不正でも何でもないさ。誰も受けたがらないクエストだし、廃棄予定でもあったからな。別に構わんだろう。なあ、アルム」
なぜかエイルは、労働基準監督ギルドのアルムに問いを投げた。どうして? それの管理はウチがしているはずじゃ……。
「分かりました。でも、私は今日、労働基準監督の仕事で伺ったわけじゃありません。ネメシス様がどうしてもと……」
そこで聞き覚えのある名前が出た。
「ネメシスさん?」
「さすが、総合窓口を任されているギルドの受付嬢グレイスさん、博識です。当然、ご存じですよね」
「ええ……一緒に住んでいますけど」
職場まで付いてきたけど、今は姿がなかった。
「一緒に? そうでしたか……ネメシス様も物好きですね。あの方は偉大な『覇王聖女』ですから……あまりウロウロされたくないのですが」
どうやら、アルムはネメシスと顔馴染らしい。
どんな関係やら――。
疑問に思っていれば……
「戻りましたよ、グレイス。……あら。エイルとアルムまで」
噂の本人がやって来た。
銀髪がまぶしいななぁ……。




