11.二人の聖女は同棲!?
都【メテンプリコーシス】へ戻った。
日も沈みかけている。
ネメシスとはまた余暇のある日に冒険へ行こうと約束を交わし、わたしは自宅へ――――あれ?
「ネメシスさん。どうして同じ方角へ?」
「わたくしもコチラだからです」
ニコっと笑い、ついてくる。
同じ方角なんだ。近くなのかな。
◆◇ ◆◇ ◆◇
職場【リーインカーネーション】から徒歩十分の場所。そこの女子寮がわたしの部屋。……それはいいのだけど。
「ネメシスさん?」
「はい」
「あの~…ココはリーインカーネーションの女子寮ですよ?」
「ええ、存じています」
え、どういうこと。
確かに彼女はギルドの受付嬢もしていたみたいだけど、同じ所属ではないはず。よく分からないけれど、挨拶をして寮に入ろう。
「じゃあ、また」
「ご一緒に」
「はい!?」
ネメシスが家に入って来ようとする。
えっと……。
「エイルからの許可は得ています。今日からグレイスと一緒に住むことになりました。よろしくお願いします」
ぺこっと……ネメシスはお辞儀した。
「…………え。ええ~~~~!!」
驚いた。
上司が勝手に許可を~! なにしているの、エイルさん!!
うーん、困ったなぁ……。わたしの部屋はそれほど広くもないし、ていうか、ワンルームなんですけどー!
でも、放っておくのも出来ない。
仕方ないので、わたしはネメシスを入れた。
◆◇ ◆◇ ◆◇
「おお~、ここがグレイスの部屋ですか」
くんくんと匂いを嗅がれた。
「なるほど、フローラルの香りですね」
「うぅ……」
なんか恥ずかしい。
そういえば、他人を部屋に上がらせるとか殆どしたことが無かった。過去に上司がズカズカ入って来たくらい。
あの時は闇鍋パーティして散々だったけど。
「わたしはお風呂行ってきますね。ネメシスさんも後で……」
「一緒に入ります」
「へ……」
「さあ、行きましょう。わたくし、グレイスと一緒にお風呂に入りたいです」
なんか瞳を星のようにキラキラ輝かせている。そんな期待されても!? ていうか、いきなりハードル高すぎない~!
◆◇ ◆◇ ◆◇
――――なぜ。
どうしてこうなった。
「…………」
「グレイス、無口ですね。そんな寡黙なキャラではないでしょう」
落ち着きのある口調でネメシスは、わたしの耳元で囁く。しかも何故か背後から。もちろん、裸同士。裸の付き合いだ。
それから、わたしを椅子に座らせて来て……なぜか勝手に背中を洗い始めた。そこまで気を許した覚えはあんまりないのだけど、なんだろう逆らえない。しかも……ネメシスの指が擽ったい。
ヘンな気分。
「…………っ」
「くすぐったいですか、グレイス」
こくこくとわたしは頷く。
今はそれくらいしか反応できないほどに顔が真っ赤だった。も~、なんなの。でも、悪い気もしないし……新鮮だった。
「……ネメシスさん、その」
「えいっ」
「んぁっ!?」
そ、そこは……!
「ふむふむ……」
「ふむふむじゃないですよぉ。は、放して……」
「大きいですね」
ネメシスは、わたしのサイズを確認しているようだ。女同士とはいえ……これは……ちょっと。手つきがイヤらしすぎるぅ……。
「グレイスは、こんな良いものを持っているし、金髪の長い髪ですし……肌も透き通るように白い。身体も引き締まっていてエロいです。これほどの美貌を持っているのに男性のひとりやふたりいないのですか? 絶対モテますよね」
褒められて嬉しいけど、エロいって……!?
そんなの自分じゃ分からないし……。
「興味がないっていうか、仕事一筋なのですよ。
でも、今は何よりも冒険が好き。もっと攻略とかしてみたいですし、高難易度ダンジョンとか挑戦してみたい。そうですね、わたしは冒険に恋をしてるのかも」
うんうんと頷くネメシス。
「素晴らしい答えです。さすがグレイス。わたくしの嫁ですっ」
きゃっきゃと抱きついてくる。
「わぁっ……」
も~…、あんなまぶしい笑顔で抱きつかれては……なにもかも許せちゃった。でもそうか、ネメシスは初めての冒険仲間、なのかな。




