表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/81

01.毎日のお仕事

 世界は常にたくさんの冒険者で(あふ)れている。どこからやって来るのか分からないけれど、みんな冒険を求めてやってくる。今日もわたしは、そんな意気揚々(いきようよう)とした冒険者たちを迎え、導いていた。



「こんにちは。わたしは総合窓口を担当していますグレイスです。えっと……剣士さんですね。では、こちらのクエストは――」



 総合窓口とはいえ、実質ここしか担当がなかった。だから、おつかいクエストを(すす)めたり、ダンジョン情報を報告したり、ギルドや臨時パーティを紹介したり、レアアイテムの出現場所を教えたり……仕事は山ほどあった。



 次から次へとやってくる冒険者を順次対応し、そんな風に仕事を熱心に(こな)していけば――もう、定時。夕方になっていた。




 忙しい日が終わった。




「……ふぅ。今日も一仕事したなぁ~」



 こんな忙しい毎日。



 今日の残業は奇跡的になかったけれど、いつも基本的にはある。今月だってもう何十時間と余分に働いていた。疲労困憊(ひろうこんぱい)だった。



 毎日毎日。

 笑顔を()やさず働き詰める。



 ――でもいい。受付嬢がわたしの使命なのだから。みんなを導く存在だから、苦痛になんて思ったことは一度も……ないとは言えないかなぁ~。間違っても口には出来ないケド。



 せめて、残業がなければね。



 ていうか……ほとんどを任されている状況なのもどうかと思うけど。他のギルド受付嬢はまだ新人さんばかりだし。責任重大だけれど、一番長く働いている自分が頑張るしかなかった。



「ウチの会社、ブラックなのかな〜? ほんのちょっとだけ転職を考えちゃうかも。でも、お給料だけは良いからな~」



 ちゃんと残業代も出るし、有給消化も義務化されていた。だから、むしろホワイトな環境だと思う。そういう所はキチっとしていた。どうやら【労働基準監督ギルド】が五月蠅(うるさ)いらしい。



 ……はぁ、と溜息(ためいき)を吐いてもそれは(むな)しく夕焼けへ消えていくだけだった。




 ……ああ、空が血のように赤い。



 と、わたしは帰路に()き……

 トボトボと歩いていた。



 すると今日対応した冒険者とすれ違った。



「やあ、受付のお姉さん! お疲れ様!」



 元気に挨拶(あいさつ)してきたのは剣士の少年だった。


 この若さにして白髪。でもどうやら地毛のようだった。少年の名前はルトくんだったかな。小柄で、可愛らしい子だった。



 クリっとした赤い目も可愛い。



「お疲れ様。ルトくんよね。これから狩りへ?」


「そうです。(すす)めてもらったお使いクエストが終わったので、これから草原フィールドへ行くんです。どんどんレベルを上げて、もっといろんなダンジョンとか攻略してみたいんです!」



 ルトはそんな風に明るく元気に言った。



「冒険かあ、楽しそう」



 でも、わたしは冒険者を導く立場。


 そうやって(うらや)ましいと思うしかなかったけど……そんな時、ルトはやっぱり笑顔でこう言った。



「受付のお姉さんも冒険に出てみたら?」



 ――え。



 わたしが冒険に?



 そんなこと……

 一度も考えたこと無かった。



「……そっか。受付嬢だからって冒険に出ちゃダメってことはないものね。ちょっと考えて見ようかなと思います」



「うん。お姉さんっていろんな情報(・・・・・・)とか詳しいでしょ。攻略とかも簡単なんじゃないかな! モンスターとかダンジョンの事、なんでも知ってるんでしょ!」




 少年は純粋な目でわたしを見た。

 ……なんて的を得たことを。




 そうだ。

 わたしは歩く情報源。そこらにいる冒険者よりも情報通なのだ。あの総合窓口をひとりで担っているわたしにしか(・・・・・・)ない情報を活かせば……もしかして。




「ありがとう、ルトくん!」

「お姉さんこそ、がんばってね! じゃあ!」




 (さわ)やかな笑顔でルトは去った。

 良い子だ~。



 ……よし、明日の帰りにでも冒険へ出てみよう。

いつも応援ありがとうございます。もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ブックマーク・評価をお願いします。


一言でも良いので感想もお気軽にどうぞ☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ