表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生に疲れた俺は、シェアハウスにラブコメを求めない  作者: 城野白
夏 2章 投げ捨てることだって、簡単では無かったけれど
87/173

4話 天敵襲来……かも

 土曜の夜。街は混み合って、雑踏に呑み込まれそうになる。


 視線を彷徨わせて、目的の人物を探す。コントローラー非所持のIQなので、実は二人の顔もあやふやだったりする。

 一度会っただけで顔を覚えられるような機能は、俺には搭載されてない。ゲームとか映画でもけっこう、名前と顔を忘れて「誰この人?」みたいになることが多い。クライマックスでなりがち。最悪。


 服装でも聞いとけばよかったかと思いつつ、捜索を継続。


「はろートムくん」

「曲者」


 背後から声を掛けられて、咄嗟に身構える。


「曲者て。いつの時代の人なの君は」


 前回とは違って、髪を下ろした姿の利香さんがいた。


「ポニーテールじゃないから気がつかなかった……」

「君は女子をなにで判断してるのかな!?」


「あ、や、ごめん。だってほら、だいぶ印象違ったから」


 ずいっと近づいてくる利香さんに、両手を前に出してどうどう。俺は美味しくないぞ。OK?


「トムくんは、この間とどっちが好き?」

「どっちでもいい」


「君あれだよね。女子にモテないよね」

「いい意味で?」


「いい意味ってなに」

「さあ」


 肩をすくめて口を曲げてみせる。

 つまらなそうにした利香さんは、ふいっと視線を逸らす。特大のバツ印をもらった気がする。あと何点削れば赤点だろう。


「彼女いたことあるの?」

「ご想像にお任せします」


「なら、あるに一票入れちゃおっと」

「正解は人生の後で」


「死後!?」


 闇に葬るべき事もあるよね。ま、無いんだけど。


「田代は?」

「もう来るって」


 ほら、あれ。と利香さんが指さす。十時の方角。イケメンの気配。


 人混みの中でもわかる、体格のいい金髪。たとえば宮野のイケメンさを春風とたとえるなら、こっちは夏の風だ。湘南あたりで暴風を吹かせ、男女の過ちを燃え上がらせるタイプの。


「や、待たせた」

「主役は遅れてくるものなんだってな」


「真広クン。その皮肉、冴えすぎ」


 ということで奇妙な三人、集結。







 大学生というのは、なにはともあれ駄弁るものだ。と思う。知らんけど。俺の認識ではそうだ。

 ラーメン屋の一角には常に二十代ぐらいのグループがいるし、なにバックスコーヒーとは言わないけどあの辺は顕著である。外でなくても互いの家に集まるし、会わなくたって電話で駄弁る。


 そういう意味では、この行為は非常に大学生らしいと言えた。

 俺が呼ばれた。というのがだいぶ謎ではあるが。謎、というか地雷の香りというか。まあストレートに表現すれば嫌な予感がする。


 ……リカさんに狙われてたりするのか? 俺。いや、うーん。自意識過剰? わからん。可能性としてはあり得るだろうが、現実問題はどうも読み取れない。女子の表情って本当に難しい。


 イタリアンのファミレスに入って、席に着く。田代が奥で俺が通路側。正面にリカさん。

 前回みたいな雰囲気の店ではないらしい。こっちの方が経済的に助かる。というのが全員の共通認識なのだろう。


 適当に注文して、顔を突き合わせる。

 グラスの氷をストローで鳴らしながら、リカさんが切り出す。


「で、玄斗。なにこの呼び出しは」

「ん? 真広クンを知ろうの会」


 まさかの学会。

 戸村真広大全でも発売するつもりか?


 創刊号の付録はすごいぞ。猫耳カチューシャがついてくる。買ってくれた女の子は是非着けていただきたい。男は失せな。


 というかなんだそれ。急に緊張してきた。


「あばばばば」

「トムくん、めちゃくちゃ混乱してるけど」

「ダウト。ふざけてるだけ。目が落ち着いている」


「…………っ」


 俺を見つめる目は余裕と確信に満ちていて、底まで見通されたような気分になる。


「でしょ」

「まあ。さすがに」


 この間はちょっとしか話さなかったが、これはまじで。俺の苦手なやつらしい。


「じゃあ私がここにいる意味はなんですかー」


 リカさんの問いに、答えを出したのは俺だった。苦笑いと共に。


「……仲裁とか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ただのパリピではないのか。 戸村君、外装甲をぜんぶ剥がされて、お婿に行けない状態になってしまうのか。 ああ、怖い怖い。明日の余力が残っていますように。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ