11話 ONSEN
マヤさんにぶっ飛ばされた俺はヤムチャ先輩みたいな倒れ方をしたわけだが、地球のどこかで神龍がなんかしてくれたので復活。重力十倍の小さな星で修行はしていないので弱いままです。弱くてコンティニューとかいう響き、絶望しかないよね。
んでもって弱いままの俺は、そのまま三人で夕方までゲームをしたわけだ。
徐々に卑劣になる戦法。行動パターンなどの人読み、どうしようもない運ゲー。そういった友情破壊の方程式に乗せられて、まんまと険悪になるならゲーム向いてないと思う。
「かぁぁ真広腹立つわぁ」
「マヤさんこそ陰湿なんですよ。なんであんなバックスナイプ上手いんですか」
「経験が違うのよ経験が」
「どれだけの被害者がいたことか……」
「三桁はくだらないわね」
「やっぱり陰湿じゃないですか」
バチバチする俺とマヤさん。さすがにちょっと焦ったか、宮野が仲裁に入ってくる。
「まあまあ二人とも。これはゲームなんだから」
「「ゲームだから!」」
「ゲームだから?」
声が揃って、それでスンッと電源の落ちる俺とマヤさん。
敵対モードから急に元通りになって、やや困惑気味の宮野。
「そうよ。ゲームだから思いっきり喧嘩できるのよ」
「人格否定とかはダメだけどな。やっぱり対戦系はバチバチしたほうが面白いだろ?」
「な、なるほど……ボクはてっきり、本気で喧嘩しているものとばかり」
「なわけないでしょ。私が怒ったら無言でビール飲み始めるから」
「怖すぎるのでやめてください」
威圧感すごいおっさんかよ。
「ちなみに、トム先輩が本気で怒るとどうなるのだ?」
「寝込む」
「貧弱だな」
「怒るのってエネルギーいるからな」
俺のことを邪悪だなんだと言うわりに、真っ正面からはぶつかってこないのが不思議ではあったが。喧嘩と戯れの違いがわからなかったらしい。
ま、確かに年上二人がバチバチしてたら怖いよな。俺たちの説明不足もあったかもしれん。
「つーわけで、ここまで含めて遊びな」
「わかったぞ。次からボクも、それっぽく敵対感を演出してみせる!」
「言い方は考えような?」
日本語が下手なんですよこいつ。
みたいなやり取りもあり、時間はあっという間に過ぎ。
「じゃあ、そろそろ行くわよー。各々、タオルと着替えの準備しなさい」
マヤさんの指示に従って支度を済ませ、玄関に集合する。
いやー女子四人との温泉ねえ。
別になにがどうってわけじゃないけど、どんどん上がっていくな俺の犯罪係数。そろそろ冤罪じゃきかなくなるかもしれん。最近は交番の近くを通らないように気をつけてます。自己防衛。
「真広は助手席。あとは後部座席にね」
「「「「はーい」」」」
しれっと助手席固定にしてくれるのはありがたい。
乗り込んでシートベルトをして、鍵を閉めるまでが車校ルール。
エンジンを入れて、滑らかに発進。
運転席のマヤさんが、サングラスをつけてニヒルに笑む。
「ちゃんと捕まってないと、振り落とすわよ」
「あらやだカッコいい」
前二人は年長バカコンビです。どうぞよろしく。
運転は超がつくほど安全だった。
◇
ONSEN到着。
穂村荘から四〇分ほど車で走った山の中に、そこそこ大きな施設がある。まあぶっちゃけ露天風呂があればオールオッケーなので、大きさはそんなに関係ない。
「温泉卵はなさそうだねえ」
「家でも作れるのではないか?」
「ちっちっち。悠くんはわかってないなぁ。温泉地で食べるから温泉卵は温泉卵たり得るんだよ」
「そ、そうなのか。……ボクはまだ未熟」
「いや。別に家で食べても美味いだろ」
「それは否定しないよ。でも風情も重んじたいよね」
「卵はないけど、牛乳もいいわよね」
「そうですよ! 温泉と言えばいちごミルクです!」
「た、確かに! ボクはコーヒー牛乳でいくぞ!」
「うむむむむ」
盛り上がる中で、なぜか一人、梅干しを食べたような顔をしている古河。ちなみに普通に梅干し食べた時もけっこうブサ顔になりますこの子。面白いよ。
「どうしたんだ? 決めかねるか」
「そうなんだよねえ。戸村くんは決めた?」
「その日の気分だな。今日はまだ決めてない」
「決められないよね。お風呂に四回入れば、四種類飲めるけど……」
リセマラみたいなこと言い出したぞ。
「お風呂は一人一回よ」
「そうだよねえ。マヤちゃん、また来ようね」
「そうね。また給湯器が壊れたらね」
「遠回しに断ってませんかそれ?」
そんな頻繁に壊れるもんじゃないだろ。
まあ当の古河は「そうだねえ」とか言ってるからいいんだろうけどさ。黒めのジョーク、本当に拾わないよな。マヤさんもちょっと寂しそうだ。
そんな会話をいつも通りにしながら、受付を通って分かれ道へ。
「それでは皆さん、ごきげんよう」
なんか適当に格好つけたけど、女湯の向こう側に消えた後でした。ぐすん。




