表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生に疲れた俺は、シェアハウスにラブコメを求めない  作者: 城野白
夏 1章 誘惑の多い季節ですが、共同生活は続きます。
80/173

9話 十字ボタンの破壊者

 女湯に入ると聞いて混乱した女子高生をどうにかなだめる。

 この意味不明な文字列が逆に落ち着くんだから、俺もいい加減に毒されてきたなと思う。


 むしろ女子高生のサンプルが宮野しかいないせいで、世のJKってみんなこうなんじゃないかとすら考えちゃう夜もある。悪夢。


 でもってその問題を俺にぶん投げるマヤさんよ。理解度が高すぎるんだよな。

 本当に意味不明なことに、たぶん、誰かがどうにかするなら俺が適任なんだ。


 まあ。冷静に考えてさ。

 この家に来てから守られた常識なんて、日曜日は週に一度しか来ないとか、寝たら朝が来るとか、そういうレベルのことしかない。日曜日は週に七回来てほしいし、開けない夜もあってほしいですよね。


 でもってこんなしょーもない話題を出すのに、わざわざ話し合いとかするのもしゃらくさい。


「ゲームやろうぜ」

「げ……げーむとはなんだ?」


「いい加減に帰ってこい。もう二時間経ってんぞ」

「はっ。ボクはなにを」


「なにもしてないんだけどな」


 まじでぼーっとしてるだけだった。ロボみたいに朝ご飯食べて、自分で片付けしてたけど。その後はリビングのソファで座ってるだけ。


 ちょっと怖くなって放置しちゃったもんな。

 時が解決してくれるパターンを願ったが、確認しに戻ってもこれである。


 こうなったらやるしかないだろ。ゲーム。


「なるほどあれは夢だな」

「いや、温泉は行くぞ」


「ボクを置いて先に行け……っ」

「別にいいけど後から来いよ」


「トム先輩の優しさが胸に痛い!」


 手で押さえてソファの上でジタバタする。現役女子高生の本気のジタバタ。けっこう衝撃映像。世界ふしぎ〇見とか、なにこれ〇百景あたりに出したら採用してもらえるかも。


 そんなお魚宮野を横目に見ながら、テレビとゲーム機を繋いでいく。


「マリカって知ってるか?」

「呼んだわね真広」


「呼んでないです」


 颯爽と扉を開けて入ってきたのは、なぜかコントローラー完備のマヤさん。長い黒髪を手で払って、大人の貫禄はバッチリだ。手に持っているコントローラーさえなければ。


「呼ばれなくても問題ないわ。蹂躙してあげる」

「無茶苦茶すぎる!」


 本能に従って生きすぎだろ。


「悠奈もやるわよね」

「あ、ああ。……ボクもやる」


 混乱した表情で座り直し、辛うじて参加の意思を示す。

 人を困らせることが得意な宮野だが、なんだかんだ彼女自身も混乱することが多い。もうちょっと落ち着いてほしいと切に願う。真広おじさん心配だよ。


「懐かしいわね。『緑甲羅のマヤ』と呼ばれた記憶が蘇るわ」

「友達いました?」


「必要経費よ」

「覚悟が重すぎる」


 この人から滲み出るガチ感はなんなの?


 さすがというべきか、変人だらけの穂村荘を仕切っているだけはある。筆頭変人。変人女王。口が滑ったらぶっ飛ばされるのでチャック。


「そうか。マヤさんも剛の者か……」


 静かに呟いて、殺気にも似たオーラを放つのは『女風呂の宮野』。なんだろう。当たり前のことなのに面白いのやめてもらっていいですか?


「ボクもまた、直ドリを極めし者。血で血を洗おうじゃないか」

「そのテクニック、けっこう前から使えないぞ」


「「え」」


 驚きが二つ。

 いつの世代のガチ勢だったんだよ。特に宮野、お前、俺より年下なんだよな? 中におっさんとか入ってんのか?


「とりあえず始めましょっか。俺もあんまりやったことないんで、練習がてら」

「そそそそうね」

「だだだだだな」


「あんたらは血でも繋がってるのか」


 ガタガタ震える姿が完全にシンクロしている。姉妹と言われれば納得してしまいそうな、そんな二人。

 類が友を呼んだのか、影響し合う中でこうなったのか。


 どっちでもいい。どっちでも素敵なことだし、俺にとっては厄介極まりないのだから。

DSマリカは神ゲー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] CMでしか見たことのないマリカー。というより、家庭用ゲーム機って触ったことほとんどないな。 どっちであっても、あんたも同類だ、ということだ。ペットと飼い主の関係。どっちが飼い主だ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ