2話 ノーマル?
三次元の面識がない女子とかいう、宇宙で一番興味の無い人種との合コンが決まったわけだが。決まってしまったわけだが。
「先輩はそのままで行くと大事故を起こす気がするので、練習が必要ですね」
「ああ。合コンごっこを穂村荘で開催すべきだ」
「おー。面白そうなことになってきたねえ」
「あら。合コン?」
「マヤさん帰ってきたぁぁぁあああ」
玄関ドアを開け、爆速で状況を把握してニタァと俺を見て笑う。やばいぶっ殺されるかもしれない。
と、いうわけで。
合コンの事前練習。やるんだってさ。
「まずは自己紹介です。第一印象が大事ですよ」
ぺしぺし膝を叩きながら、やけに乗り気な七瀬さん。
「うん。俺も第一印象って大事だと思うよ。誰の、どんな出会い方がなにとは言わないけどね」
「うっ……あれは忘れてください」
関わらないでくださいだったっけか。けっこうな初対面を経験していると思う。
くてっとテーブルに突っ伏して、七瀬さん脱落。
「トム先輩はふざけそうだからな。真面目にやったほうがいいとボクは思うぞ」
「君たち一回鏡見てきたら?」
「?」
「うん。その反応は予想できてた」
きょとんとした宮野。こいつ……。いや、なにも言うまい。
「まあいいから、とりあえずやってみなさいよ。自己紹介」
「あ、はい」
マヤさんに命じられ、咳払いを一つ。
「戸村真広です」
「零点ね」
「ジャッジ早っ!」
「あらそう。じゃあ、続けていいわよ」
「……ええと、趣味はゲームと読書です…………」
(完)
「真広。帰っていいわよ」
「ここ俺の家なんですけど!?」
しまったとは思ったけどさ、でも実際、こんなもんじゃないんですか? 名前と趣味。それ以外に特記事項が思いつかない。
「と、トム先輩。ボクはゲーム好きだぞ」
「ありがとう……」
「わ、私も読書好きですよ!」
「ありがとう……」
さっきは反撃してごめんね。君たちは正しいよ。全宇宙の法則だよ。
「はい戸村くん。お茶」
「つーか、なんで古河は練習してないんだよ」
「水希は顔パスに決まってるでしょ」
「まさかのVIP待遇」
「女子の世界で、合コンの十割は顔よ」
「現実って怖い」
そんな競争社会で生きてるんですか皆さん。どうかご無事で……。あとできれば、マヤさん以外はそんな現実知らないで生きてほしい。
「ちなみになんですが、男に求められるものってなんですか?」
「顔ね」
「顔かー」
どっちも変わらなくて草なんだ。
「あとは聞き上手ってことも大事だけど。それは真広なら問題ないでしょ」
「はぁ」
「次点でパリピ的なノリの良さだけど、それは他のメンバーに期待しなさい」
「俺のステータスで一番低いやつですね。了解です」
ノリが悪いわけではないが、自分で空気を作ったりするのは苦手だ。下手すりゃ合コンなんて、隅っこで机の角囓ってたら終わる。俺はビーバー。ジャスティンじゃないほうの。
となると、あとどうにかなるのは自己紹介か。
――って。
「なんで俺、モテにいこうとしてるんですか?」
「言ってなかったかしら。うちの外になら、彼女作っていいって」
思わずずっこけてしまう俺。ごんっ、と机の天板に頭をぶつける。
だが、音はそれだけではなかった。椅子がずれる音、机を叩く音、慌ただしい足音。俺以外に三つ、動揺の気配。
「ええと……俺、彼女作っていいんですか?」
「禁じた覚えはないわよ」
「いやいや。禁じましょうよそこは。アイドルくらい厳しくいきましょうよ」
「冗談よ。ダメではないけど、作ったら大変でしょ?」
「ですよねー」
彼女に今の生活どうやって説明しろって言うんだよ。女子と共同生活してます。夜とかもけっこうお話ししたり、あ、沖縄旅行も一緒に行くんだぜ(キラッ)って。サイコパスじゃんそんなん。
「ち、ちなみに……先輩の好みの女性って」
「あ、ああ……十二歳以下の女子だったか」
「待て待て待て。なんでそれが三次元にも適用されてんだよ。そういう人を否定はしないが、俺はもうちょっとノーマルだぞ」
流れで恐ろしいことになりそうだったので、どうにか否定する。
「ノーマル?」
「ノーマル、ときたか」
「ノーマルねえ」
「ふーん」
ここに揃った女子四人。そろってふむふむと頷く。
そして一斉に自分の体を抱き、一歩後ずさる。
「「「「それって――」」」」
「言っとくけど全員だいぶ普通じゃないからな!」
なんでこの人達、自分がおかしくないと思ってんの?
解散。解散だばかやろう。




