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人生に疲れた俺は、シェアハウスにラブコメを求めない  作者: 城野白
初夏の節 それを喜劇と呼べるなら
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3話 ゴーゴー実家!!(やけくそ)

 帰ってきた七瀬さんを四人がかりで誘って、沖縄旅行の計画に引きずり込むことに成功。

 最初は「あの……みなさんなに言ってるんですか?」と言っていたが、だんだん「そうですか、沖縄。行ってみたいですけど」と軟化して、「いいんですか? 私も、ついて行って」と参加の意思を表明。


「君がいなきゃ誰も行かない」

「もちもちの木だよ」

「当然だ」

「そうね」


 と、四者四様の返答をしたところで正式に決定。

 それはつまり、もう一つの問題についても、後に引けなくなったことを意味していた。







「では、いざゆかん我が実家へ!」

「ぉー」


 七瀬さんの説得をした次の日。土曜日、朝。


 たたき起こされ荷物の準備をさせられ朝ご飯を口に押し込まれた俺は、引きずられるように穂村荘を出た。家を出て二秒でホームシック。これまでの最短記録を打ち出した。


 悲しんでも仕方がないので、自分で歩きだす。俺には立派な二本の足がついているのでね。

 まだショボショボする目を擦って、深呼吸。無理矢理スイッチオン。


「で、実家ってどのへんなんだ?」

「隣の県だ。各駅停車で1時間半」


「まあ、そんなもんか」


 俺の歩き方は早起きしたみたいなおぼつかなさだが、実際の時刻は十時半。こんにちはの時間である。

 お休み前の夜って、ついつい夜更かししちゃうよね。おかげでだいぶストーリーを進めることができた。


「最寄り駅まで行けば、父の部下が迎えに来てくれるはずだ」

「うん。……うん?」


 一度頷いてはみたが、なんか聞き慣れない単語があったな。


「そして黒塗りの高級車に乗り、目的地に向かうのだ」


 それってあれですか。ぼから始まるアパレル関係の組織ですか?

 宮野が男として育てられたって、もしかしてそういう……。


 いやいや。早まるな。まずは質問を重ねろ。


「それって、地域に根付いてるタイプのやつか?」

「そうだな。歴史は長いはずだ」


 警察にも手出しができない、と。


「幹部とかもいたりする……よな」

「当然だ」


「お父さんがやってるのって、敵が多い仕事じゃないか?」

「ああ。競合相手はどの時代にもいる。特に今は」


 暴力団ですねこれ。はい。俺の人生さよなら。


 娘が連れてきた、謎のちゃらんぽらん大学生。学力平均、筋力なし、覇気なし財力なしやる気なし。かんっぜんに処刑される未来しか見えない。

 っていうかこの状況、別に怖い大人じゃなくても処刑されるな。俺嫌だもん、自分の娘が俺のこと紹介しにくんの。


 鞄の中を少し漁って、宮野が白い包装紙に包まれたものを渡してくる。


「せっかくだし、これを。父の仕事だ」


 白い包装紙からヤバい雰囲気しか感じねえよ!


「お前のお父さん、こんなものにまで手を出してるのか……」

「そうなのだ。ボクはチョコなどやめたほうがいいと思うのだが」


「ん?」

「チョコ大福など、一時の流行だよ。乗っていいものではない」


「んーっと。え?」


 突如出てきたほわほわワードに、頭が混乱する。

 俺たちって、なんの話をしてたんだっけ。


「ちょっと待て。宮野のお父さんの仕事って、なに?」

「和菓子職人だが」


「すいませんでした」


 ちょっとすれ違ってみたいお年頃だったんだよね。


 と、いうわけで。

 和菓子屋さんのおうち、行かせて頂きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、職人なら部下じゃなくて弟子だろうって。 突っ込みも入らんほどに緊張しているのか… って、彼はボケ担当だっけ。本来。
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