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5話 年の離れた友達

 今日という一日を差し押さえられた俺は、現役JKと一緒にお買い物へ出かけていた。

 宮野さんは横縞のTシャツにジーパンというシンプルな格好で、しかし美少年然とした見た目がいいので野暮な感じはしない。街角のスナップショットなんかでありそうな、小綺麗なオシャレさすらある。


 しかしやはりというかなんというか。

 まだ七瀬さんと歩いていたときは、年齢差がありすぎてそういうふうには見えなかっただろうけど。ふとガラスに映った俺と宮野さんを見ると……なんかこう、ね。

 女子高生を毒牙にかける大学生感が、ないではない。


 全国の女子高生さん、お気をつけてくださいね。大学生ってのは基本的に一番やべえ人種だから。世の中の出来事すべてが遊びにしか見えてない節があります。

 男達の言う「ずっと一緒にいよう」とか「たぶん結婚すると思う」だけは信じちゃいけない。あいつらは結局彼女に飽きるし、束縛がどうとか言い出すし裏で別の女と会ってる(偏見)。


 その点俺ってば超優良物件。ただいま入居者は募集しておりません。


「トム先輩から悶々としたものを感じるぞ」

「欲求をこじらせてるみたいな言い方はやめてくれな? 考え事してただけだから」


「なにを考えていたのだ」

「別に、話すようなことじゃないし」


「ボクに言えないことがあるのか!?」

「だから、面白くないから言わないだけで」


「信じてたのに!」

「修羅場にすんな!」


 一気に周りはドン引きである。「やだあの人、浮気……」「俺は絶対、そんなことしないからな」「やだ、たっくん格好いい」おいそこイチャつくな滅すぞ。


「……ったく、わざとなんだか天然なんだか」


 人の少ない方へと足を向ける。少し後を宮野さんがついてくる。


「すまない。まさかあんなに反響があるとは思わず」

「高評価ではなかったからね?」


「重版出来とは思わず」

「いつの間に商業デビュー!?」


「末はハリウッドでボクとトム先輩のなにげない会話が繰り広げられることに」

「なにその地球の滅亡かかってそうな雑談。やだよ絶対」


 世界の命運とか、握らされたら脱走する自信があります。俺じゃ神話にはなれない。


「わざとではあったのだが」

「やっぱり確信犯か……」


「誰かと出かけることなど滅多にないから、少しはしゃいでしまった……のだと思う。反省する」

「そう言われるとな。はぁ……」


 ため息をつくも、口元が緩んでしまう。怒る気には到底なれなかった。


「友達と買い物とか、行かないんだな」

「前々から言っているとおり、女友達の作り方がわからないのだ」


「あ」


 ややムスッとした宮野さんの返事に、しまったと固まる。俺としたことが、うっかりしていた。

 いやだってさ、この子普通に友達多そうじゃん。めっちゃ面白いんだよ。みんな、喋っとかないと損だよ。


 と、俺は思うのだが。そうもいかない理由があるのだろう。


「これでおあいこだ。トム先輩」

「……うっす。宮野さん」


「その『さん』付けはなんなのだ。前々から思っていたのだが」

「ん?」


「トム先輩は先輩なのだから、堂々とボクのことを呼べばいいのだ」

「宮野?」


「なぜ苗字! ボクはトム先輩と呼んでいるのに!」

「トムは名前じゃないんだけど」


 下の名前は真広です。


「あ、それもそうだな。宮野で構わない」

「なんなん」


 けろっとした返し。やはりこいつ、天然だ。無自覚アーマーが最強って話する?


 そして呼び方を試せと言わんばかりのガン見である。上目遣いとかじゃなくて、真っ直ぐしっかり見てくる。眼力つっよ。

 これが七瀬さんだったら、恥じらいの視線とか向けてくれたのかな。古河とマヤさんは……まあ、うん。あの二人は古河とマヤさんだからさ。


「み、宮野。……どこから行く?」


 極めて自然に口にすると、満足げに頷いてくれる。


「うむ。それでは、ポイモンセンターに行こうか」

「最高のチョイスじゃん」

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― 新着の感想 ―
[一言] どちらも天然というか、なんか不器用なのか? ポイモンセンターってどんなんじゃろ。
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