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人生に疲れた俺は、シェアハウスにラブコメを求めない  作者: 城野白
春 3章 腹ペコJDはわかりたい
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8話 これはデートに入りますか?

 唐突にお出かけに誘われてから、三秒。

 俺の脳みその溶けていない部分が全力で駆動する。


 落ち着け戸村真広(19歳)。相手は誰だ? 古河水希だ。オッケー。

 今度のお休みってなんだ? 土日のことだろう。オッケー。


 一緒にお出かけ。

 なるほど。


「みんなでってことだよな」

「ううん。二人でだよ」


「ごふっ」


 思わず吐血しそうになった。なに? なにこれ?

 もしかして俺、デートに誘われてる? まままままさか。そそそそんなことああああるはずないynぇ。


「……ああ、なるほど。グルメフェス的なやつだろ」

「動物園だよ」


 ――なんで!?


 まずい。心臓が変にバクバクし始めた。流れる汗が冷たいのはどうして? とんでもない異常事態を肌で感じ取っているからだろう。


 これが恋ですか。そういう季節が始まっちゃってるんですか。さすがシェアハウス。なうでヤングなパリピがウェイウェイだ。


「…………動物園のカフェ限定メニューか?」

「む。失礼な。戸村くん。私だって、カフェのついでに動物くらい見るよ」


「なんかすげー安心した」


 さっきのドキドキはただの動悸らしい。それはそれで問題ありだな。


「チケットが二枚あってね。あ、これは友達からもらったんだけど」

「バイトの?」


「そうそう。本当はこの間紹介された人と行って、て言われたんだけど」

「え、すげー申し訳ないんだけど」


 このチケットは本来、長谷に渡されるべきものだったのだ。まあ、本人が断ったならどうしようもないのだが。


「いいのいいの。戸村くんと行きたいって言ったら『男なら誰でもヨシ!』って言ってくれたんだよ?」

「節操ねえな!」


 あとそこ二人の間でものっすごい誤解が生まれてるよね。言っておくが、俺と古河は恋愛とかにはならないからな。

 ならないったら、ならないんだからな!







 とまあ。


 ツンデレっぽく言うことで「実際デートしたら楽しくて浮かれて告白とかしちゃうんでしょ。へいへい若いのへいへい」みたいな空気にはしてみたが。


「ぐぎぎぎ……」

「むむむぅ……」

「へぇー」


 女子高生と女子中学生、ついでにOLさんにも見送られて家を出る。というこの時点でだいぶ萎えムードではある。

 羅刹みたいな顔をしていたのが宮野さんで、なんか悲しそうな顔をしていたのが七瀬さんで、ニヤけていたのがマヤさん。


 三者三様、話しかけたら面倒くさそうなので無視しました。


「動物園、楽しみだねえ」

「まあな」


 隣を歩く古河は、いつも通り上機嫌。花柄のワンピースと、つばの広い帽子を被って軽快に歩く。

 明るく染めた髪と、きらきら輝くような表情。


 ほんと、俺じゃなきゃ瞬殺されるレベルで可愛いんだよな。


「戸村くんは動物好きなの?」

「植物もわりと好きだけど」


「野菜も美味しく食べるもんね」

「それとこれとは別じゃないか?」


 やはりこいつ、動物園を食材の宝庫と思っているのではないだろうか。カバさんのお肉って柔らかそうだよねえ。とか言い出しても驚かないぞ俺は。


「じゃあさ、なんの動物が好き?」

「牛か豚なら、豚」


「動物園の話だよっ!」

「そのツッコミは俺がするやつだろ!?」


「え……私、なにか間違った?」

「あ。ごめん、なんでもない」


 ノリと勢いで会話を進めてしまったために、意味不明なツッコミをしてしまった。反省。


「好きな動物……か。ペンギンはけっこう好きかな」

「動物園にいるかな」


「いるだろ。たぶん」


 水族館にもいるところはあるし、あいつわりとオールラウンダーだよな。などと思う。なにがオールラウンドなのかは知らん。


「古河は好きな動物とかいるのか?」

「カバさん」


「やはり肉質か!?」

「?」


 きょとんとして少し考え、ああ、と手を打つ。


「ぷにぷにして可愛いよねぇ。でもカバさんって、走ったらすごく速いんだよ」

「……そっちか。ええと、四十キロくらい出るんだっけ?」


「六十キロだって」

「こっわ」


 そんなん車じゃん。意志を持ってぶつかってくる生身の車じゃん。

 カバが駆け回ってるアフリカ、まじデンジャラス。絶対住めないです日本でよかった。


「すっっごく憧れるよね!」


 拳をぎゅっと握ってうっとりした表情。なるほど。本当にカバのことが好きらしい。


 どうやら古河は食事だけの人間ではなかった、と。そりゃそうだという話ではあるが。なんにせよ。

 好きなものに真っ直ぐなのは、彼女の性質らしい。


 ちなみに、カバのどこに憧れるかはまったくわかりません。

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― 新着の感想 ―
[一言] カバ、怖いよ。凶暴だよ。凄く沢山人殺しているんだよ… あれは、なんか実は美味しくなさそうだなあ。相撲取りのお肉も、全然柔らかくはないという事だし。 ペンギンの手羽先餃子の方がきっとおいしい、…
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