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何でもいいので感想をお寄せください。できるだけ期待に沿いたいと思います。
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何かが欠落していた。自分の中に。そういう気持ちをいつも抱いていた。友達の輪の中にいても、何かが満たされなかった。楽しいのはその時だけだった。友達と別れて真夜中家への帰り道、一人で自転車を漕いでいると、無性に叫びたくなった。
俺の居場所はここじゃない。もっと素晴らしいはずなのだ。どこかに俺を待ち焦がれている人がいて、絶対にそこに辿り着かないといけない気がした。そこだけを頼りに生きていた。
それはむしろ強迫観念のようでもあった。転んで右膝を擦りむいたら、左膝を擦りむかないといけない気がした。ずっとそうだった。
そうしたことを日記に書いていたら、親がそれを読んだようで、精神科へと連れて行かれた。もしかしたら、彼なら分かってくれるのではないかと期待した。期待してしまったのだ。俺は彼にすべてを話した。自分の気持ち、家族や友人に抱いていることなどすべて。
彼は俺の長い話を聞いたあと、目をつぶった。そして長いことそうしていた。目を開けると、彼は俺を、ある感情を宿した目で見た。その感情は俺が最も嫌いだった。哀れみというやつだ。
多分俺は自分をよく哀れんでいたのだと思う。欠落という欠陥を宿した俺を。しかし俺は他人から哀れまれるのが大嫌いだった。自らを優れた人間だと思っていたからだ。実際そうだったと思う。何をやらせても俺は良くできる方だった。だから自尊心が肥大した。臆病な自尊心ではなかった。むしろ人と比べ得ることで優越を得ていた。尊大な羞恥心ではあった。自らと同レベル以上の人間としか喋りたくなかった。故に俺は李徴にすら劣っていた。
だから俺は、彼を殴った。なぜだか分からなかった。これまで俺は人を実際に殴ったことはなかった。意外と拳が痛く、それだけが鮮烈な記憶となっていた。だが彼は怒らなかった。むしろ一層憐憫の情を濃くしていた。
平謝りする母を前に、医師は言った。
「新堂くんは、ホワイトスクールへ入学する必要があります」
そして今に至る。




