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次第に痛みよりも身体の方が痺れて動けなくなっていく。
エドワード様も、相手が5人もいるからか、苦戦をしている。しかも、私を背に庇いながらだから余計だ。
「くっ・・・。」
エドワード様との力量の差もあるのか、エドワード様は防戦一方だ。
次第にエドワード様の体力も削られていく。じりじりと後ろに下がっていく。
私の方も身体の動きが徐々にきかなくなってくる。どうやら毒といっても痺れ薬のようだ。
まあ、やっかいなことには変わりがないが。
ここを切り抜けるにはどうしたらいいのでしょうか・・・。
「くっ!!」
カランッ・・・。
「エドワード様っ!!」
敵の一人の剣が、エドワード様の剣を弾き飛ばし、もう一人の剣がエドワード様の右腕を切り裂く。
エドワード様の右腕から血が吹き出す。
エドワード様は痛みに顔をひきつらせながらも、それでもなお私のことを守ろうとしてくださる。
丸腰のエドワード様に敵の一人が剣を向けた。
何も言葉を発することもなく、敵は剣をエドワード様に向けて容赦なく繰り出す。
「ダメーーーーーっ!!」
エドワード様が切られてしまう。
そう思った瞬間に、エドワード様と私をまばゆい光が包み込んだ。
「・・・レイ!」
「エドワード様・・・。」
もうダメだと強く思ったときに、強い光が私とエドワード様を包み込んだ。
そして、気づけばエドワード様が私の顔を覗き込んでいた。
ここは・・・?
私たちは無事だったの・・・?
「レイ!よかった。」
「・・・ここはどこでしょうか?」
エドワード様の安心したような表情が目に入る。その顔には、敵と相対していたときのような緊張感はない。
私たちは無事に逃げ延びたと言うの・・・?
「・・・私の屋敷だ。」
エドワード様が目をついと右上に逸らしながら告げる。
エドワード様の家?
ということは、ここは皇太子宮・・・?
視線をエドワード様からそらし、左右を確認する。
そこは、確かに見慣れた部屋だった。
私も世話になっていた皇太子宮の客室。そこに私は寝かされていた。
「すまぬ。レイは最初の攻撃で痺れ薬を塗った矢を受けていたことに気づかなかった。私の落ち度だ。医師の治療を受けてもらった。だが、まだしばらくは安静にとのことだ。ここで休んでいくといい。」
「そうですか。やはり、痺れ薬でしたか・・・。」
エドワード様が詳細に私の状況について教えてくれた。
矢の傷はそれほど深くはないこと。
安静にしていれば痺れ薬の効果も薄れること。むろん治療はしてくださったようだが、それでも完全に痺れ薬が抜けるまでには多少の時間がかかるようだ。
それにして、なぜ急に目を開けたら森ではなく皇太子宮にいるのかしら。




