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きらびやかな部屋の中央に人だかりができていた。

私は何事かと、人だかりの中に足を踏み入れ、中央にいる人物に目を向けてハッとした。


「君には見損なったよ。レイチェル。まさか異世界からの迷い人であるマコトを陰でいじめているとは・・・」


皇太子殿下エドワード様が困ったように告げた。その顔はいつもの優しげな顔ではなく、本当に怒っている時に見せる無表情だった。


「そのようなことはしておりません」


「しらを切る気か?証拠も証人もいるのに?」


あれは・・・私?

私にそっくりな人が皇太子殿下とその側近の4人に囲まれている。

その状態を私は何故か離れた位置で見ていた。

これはいったいどういうことなんだろうか。

私の気持ちをおざなりにして場面は進行していく。


「エドワード殿下。どうして私のことを信じてくださらないのですか?私は皇太子殿下の婚約者ですわよね?」


「善人な他者を陥れるような人は私の妃にはふさわしくない」


「そんなっ!マコト様が悪いのですわ!必要以上にエドワード様に近づくから!」


目の前にいる私は髪を振り乱しながら叫んでいた。


「言い訳は聞きたくないよ。そんな君でも元は僕の婚約者だったんだ。潔く罪をみとめるといい」


それに答えるエドワード様の声は固く、目の前にいる私をさけずんだ目で見つめていた。それは、周りを囲む4人も同じだ。


「レイチェル、君との婚約は破棄をさせてもらった。君は異世界からの迷い人を苦しめた罪で1ヶ月後に処刑することになったよ。それまでは地下牢ですごしてもらう」


「そんなっ!!なぜ私が!!」


「君はそれだけの罪をおかしたんだ。楽に死ねないと思うといい。・・・連れていけ」


私は淑女の姿勢を忘れてその場にしゃがみこみ泣き叫んでいた。

そんな私を冷めた目でみつめていたエドワード様はまわりにいる騎士に牢に連れていくように指示をした。

騎士たちは喚く私を無理矢理立ち上がらせると、ずるずると引っ張るように牢に連れていった。


「・・・なによ、これは。マコトって誰かしら

?」


異世界からの迷い人は知っている。この国に恩恵をもたらす異世界から突然やってきた人たちのことを指し示している。

数十年に一度の割合でやってくる異世界からの迷い人は実に様々な益を国にもたらしてくれた。

それ故、異世界からの迷い人は国から手厚く保護されている。

その迷い人を私が虐げたと?

どういうこと?

それにしてもこの場面、はじめて見たはずなのにどこか見覚えがあるような・・・。

いつ、どこで・・・?






「・・・イ・・・レイ!」


トントンと軽く肩を叩かれて、誰かに名前を呼ばれる。


「起きて、レイ!」


ゆっくりと目を開けると目の前にはエドワード様がいた。


「ひっ・・・」


思わず怯えたような声がでてしまう。先程まで見ていたエドワード様の冷めた眼差しが思い出されたのだ。


「大丈夫かい?レイ?」


エドワード様は心配そうに私を見つめてくる。私の手をとり、やさしく唇を寄せる。


「とてもうなされていたよ?怖い夢でも見た?」


今ここにいるエドワード様はとても優しい眼差しで私を見ている。とても暖かい瞳。

先程のエドワード様は・・・?


「夢・・・を見ていたのかしら?」


夢にしてはやけにリアルだったような気がしたが。あれはいったい・・・。


「ずっと、魘されていた。とても怖い夢をみていたんだね。大丈夫だよ、レイ。私がそばにいるから」


そう言ってやさしく私を抱き締めてくるエドワード様。

とても暖かい体温で気持ちがいい。強張っていた身体が徐々に癒されていく。


「とても怖い夢を見たのです。エディが私から離れていく夢。そうしてエディが異世界からの迷い人のマコト様の手を取る夢を見たのです。」


あれは、夢。

とてもリアルだったけれど夢だった。

その内容をエドワード様に告げると、ハッとしたようにエドワード様の身体が固くなった。


「私は君に異世界からの迷い人の名前を言ったことがあったかい?」


「え?」


今回来たと言う異世界からの迷い人の名前はマコト様というの?

あれは・・・本当に夢?



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