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ユキ様があげる悲鳴のような声に、どうしたんだろうと首を傾げる。
マコト様との念話を終えたユキ様はドカッと、椅子に座り込んでうつむいてしまった。
そっと、ユキ様の元に近づく。
「なにか、あったんですか?」
優しく声をかけてみる。
私にできることはそれくらいしかないから。
でも、ユキ様は椅子に座って頭を抱えるだけで返事をしてくれなかった。
本当にマコト様となんの話をしたのだろうか。
マコト様になにかあったのだろうか。
優しく、ユキ様の頭を何度も撫でる。それでも、ユキ様は私を見てはくれなかった。
「レイチェルに・・・どう説明しろってのよ・・・。」
私がユキ様に香りのよいハーブティーでも用意しようと、立ち上がりキッチンに向かった。
その瞬間、消え入りそうな声で呟いた。
たぶん、ユキ様は混乱していて私がそばにいることにも気づいていないのだろう。
呟かれた言葉は私の耳にしっかりと残った。
私に関することでユキ様が頭を抱えてしまっている。
私に関することで、マコト様から報告をもらうようなことっていうのは、もかして・・・エドワード様のこと?
エドワード様に何かあったのかしら。
ハーブティーを用意しようと向かったキッチンでそのことに思いいたる。
私はハーブティーを淹れることなく、ユキ様のもとに急いで戻った。
「ユキ様!エドワード様になにかあったのですかっ!?」
自分でも思っていた以上の声がでてしまった。そのことにビックリしたのか、ユキさまがバッと顔をあげてこちらを見た。
ユキさまの黒い瞳と視線がバチッと会う。
「な・・・なにを言っているの。レイチェル。違う。違うわ。なんでもないのよ。」
なんでもないとユキさまは言うが、その瞳は泳いでいた。
やっぱりエドワード様に関することで何かがあったようだ。
「教えてください。ユキさま。」
「ダメっ。ダメなの!!」
ユキさまはそう叫んで部屋に籠ってしまった。
不安になって、ユキさまの後をおい部屋に入ろうとするが、ユキ様は部屋の鍵までかけてしまったようだ。
開けようとしたドアはピクリとも動かなかった。
「ユキ様!ここを開けてください!エドワード様になにかあったのですか!?」
エドワード様は私と婚約破棄をしたお方だ。でも、私はエドワード様のことを嫌いにはなれなかった。
離れていた数ヵ月もずっとエドワード様のことを思っていた。
優しかった頃のエドワード様の優しげな笑みを思い浮かべる。
今でも繊細に思い出せる笑み。
大好きなエドワード様。
「ユキ様!教えてください!!ユキ様!!」
ドアをドンドンと何度も叩くが、ユキ様からの返答はなかった。




