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目を覚ました時、一番最初に目に入ったのは心配そうな顔をした皇太子殿下だった。
目を開けると、皇太子殿下がホッとしたように少し微笑んだ。
「よかった。目が覚めたんだね。急に倒れるからビックリしたよ」
「申し訳ございません。ご迷惑をおかけいたしました」
両手を皇太子殿下に優しく包まれている。それが少し気恥ずかしい。
ずっと、こうして傍についていてくれたのだろうか。皇太子殿下もお忙しいのに。
私はいったいどれくらい意識を失っていたのだろうか。
「謝ることはないよ。それに、レイが倒れたのは半分は私のせいでもあるんだから」
ちゅっ。と軽く皇太子殿下の唇が私の頬に触れた。
「そんなっ!倒れたのはエドワード様のせいではございませんっ」
「いいや。私のせいだよ」
「違いますっ。私の自己管理能力が足りていなかっただけです・・・」
最近は、皇太子妃となる重圧を感じて食事も喉を通らなかったし。
それなのに、皇太子殿下は優しく自分のせいだという。そんなことありはしないのに。
皇太子殿下は笑みを深めて私の唇にキスをした。
「愛しているよ、レイ。君はね、私の子を身籠ったんだよ?」
「えっ・・・?」
優しく囁かれる声。一瞬何を言われたのかわからなかった。
身ごもった・・・。身ごもったって妊娠したってこと・・・?
このお腹の中に皇太子殿下の赤ちゃんがいるの?
そっと、腹部に手をあてる。
まだ実感はできないが、ここに皇太子殿下の赤ちゃんがいるという。
「ふふっ。これで、レイと一緒に過ごすことができるね。皇太子の子を身籠ったレイはもう皇家の一員だよ。来週には迎えにくるからね」
「えっ?」
愛おしいというように、皇太子殿下の手が優しく私の腹部に触れる。そうして、優しく撫でられる。
でも、来週には迎えにくるってどういうこと?
「私の子を宿してくれたからね。この場合は例外があって、すぐにでも一緒に住むことができるんだよ。でも、部屋の模様替えとかあるから一週間は待っててね」
そうだったんですね。
もしかして、皇太子殿下は私が妊娠するのを待っていたのだろうか。そうすれば、早く一緒に住めるからと・・・。
そう思ってしまうと、皇太子殿下の柔らかい笑みが何故か黒く見えてしまった。
その瞬間、何かが脳裏を掠めた。
・・・このスチル見たことある。
え?スチルって何?
なんのことだかわからないけれども、急になぜだか、そのように思ってしまった。