エドワード視点2
「迷い人の名はなんという。彼に我が国を気に入って永住したいと言わせてみせよう。」
そうして、異世界からの迷い人であるマコトが我が国に来ることになった。
これが、私の判断ミスだったということは、この時にはまったく気づかなかった。
私は間違えたのだ。
権力と地位に固執して、何よりも大切なレイチェルを苦しませてしまうだなんてこの時には全く思っていなかった。
ただ、国が発展すれば、レイチェルがなに不自由なく暮らせるだろうと、ただただそればかりを思っていた。
大切なレイチェルを真綿に包むように大事にしたかったのだ。
傷つけぬように、困ることがないように、辛いことがないように、ただただレイチェルを守りたかった。
☆☆☆
「始めまして。マコトと申します。」
異世界からの迷い人として紹介されたのは、マコトと言う青少年だった。
柔らかそうなほんのりと茶色がかった黒髪は猫の毛のようにふわふわとしている。
理知的な瞳は大きくまるで少女のようにも見える青少年だった。
所作も綺麗で整っており、そこもまた青年というよりは少女を彷彿させた。
「ああ、私はエドワードだ。この帝国の皇太子でもある。よろしく頼む。」
私はにっこりと笑ってマコトに手を差し出す。
握手を求めたのだが、マコトのいた国では握手の習慣があまりないのか、ちょこんと首を傾げていた。
「握手は、知らないかい?」
そう笑って問いかければ、マコトは慌てて手を出してきて私の手を握った。
「すみません。私の国では握手はあまり一般的ではないのです。失礼いたしました。」
そう言って、軽く笑いながら私と握手をするマコトの手は、苦労を知らないのか豆もなく荒れてもいない綺麗な手だった。
ここにくる前は何不自由のない暮らしをしていたんだろうと思い浮かばれる。
話してみる限り、マコトは物腰が柔らかで頭が切れる人間だった。
ゆえに私は、すぐにマコトに気を許してしまった。
「私の婚約者を紹介したい。だが、決して手を出すなよ。」
「わかっております。どんな魅力的なお方でも決して手は出したりいたしませんのでご安心ください。」
そうして、私はレイチェルにマコトを紹介することにした。
だが、レイチェルにマコトが惚れてしまう可能性もあるので、そこはしっかりと釘を刺しておくことにする。
レイチェルはいずれ皇太子妃となる。
マコトとの距離もある程度は近づけた方がいいだろう。
マコトは色々な知識を持っている。
きっと、レイチェルの力になる。
そう考えて、私はマコトとレイチェルを引き合わすことにしたのだ。




