第2話
火鉢のパチパチと弾けるような音で目を覚ます。
目を開けると最初に見えたのは、天井だった。
布団の中で右手を開閉させる。ちゃんと動くようだ。相変わらず左手の方はないが。
起き上がろうと上半身に力を入れるが、瞬間全身に激痛が走る。そして自分の体が置かれている状況を思い出した。
そうだ。俺は確か崖から飛び降りて死んだはずだったのだ。それなのに俺は今こうして生きている。
暫し思考を巡らせて、一つの結論に至った。きっと何者かが助けてくれたのだろう。
これがもし事故であったら、してもしきれないほど感謝しただろうが今回は違う。自分から死に図ったので、これじゃありがた迷惑である。
ただぼうっと天井の木目を見つめながら「何で死ねなかったのだろう」と呟いたが、渇いた声帯からは掠れた音しか出てこなかった。
そんな掠れた音さえもしっかり聞こえるほど静かだったためか、突然の人の声に思わず目を見開いてしまった。
「目が覚めたようだな」
その声音は大人の女性というよりかは少し幼く、しかし子どもの声にしては芯があった。
声の主が顔を覗き込んできた。が、逆光になってしまい顔はよく分からなかった。
「驚いているな。無理もない」
そう言って声の主は一旦振り返り、何やらごそごそという音がした後、豆のようなものを手につまんで持ってきた。
この瞬間、男の頭は全てを察した。おそらくはこの女、訳の分からない豆のようなものを自分に食べさせるつもりなのだろう。
「人体に害はないはずだ。食え」
差し出された手には先ほどの豆がある。
男は一瞬ためらいがあったが、その豆のようなものを受け入れた。
理由は二つあった。
一つはきっとこの女は自分を助けてくれたのだから、毒を盛るようなことはしないだろう。
そして二つ目は、毒が盛られていようといまいと、男は既に自分が死んだ者として考えていたからだった。