22 夢想消滅
「やっと、見つけた。」
ミーちゃんは私の記憶と同じようにそこに存在していた。段ボール箱の有無など少しだけ違うところはあったが、ミーちゃんはそこにいた。
「ミー。」
私は何の迷いもなく彼女を抱き締める。ちょっとごわついた手触り、私をまっすぐ見つめる瞳、ミーちゃんはここにいると五感のいくつかが知らせてくる。
ミーちゃんの言葉は私には正確に伝わることはない。だって、種族や言語という壁があるのだから。でも、今なら、今だけはわかる気がした。
(――――寂しくなかった?)
彼女の第一声。その言葉は種族を越え、私の鼓膜を震わす。
(ううん、ちっとも。)
(シズノは強がりなんだから。)
(う、うん。そうだね。でも、ミーちゃんがいつも一緒だったから。)
静寂が辺りを包み込む。
一筋の風が一人と一匹の頬を優しく撫でる。
(置いていっちゃってごめんね。)
(謝るのはミーちゃんじゃないから。)
(シズノのこと、たくさん傷つけた。)
(気にしてないよ、全然。)
(でも、やっぱり、シズノの腕の中が、一番落ち着く。)
(――――ありがとう、ミーちゃん。)
(急にどうしたの?)
(大好きだよ。)
(ミーも、シズノのこと――――)
答えは、結局わからなかった。でも、それでいいのだ。
これは私が生み出した、夢でしかないのだから。
夢はいつか醒める時がくる。
楽しい夢も、悲しい夢もこれでおしまい。
でも、ミーちゃんはずっとここにいる。
私の心の中にずっと。
だから寂しくはない。
寂しくなんてないんだ。
なら、頬を伝うこの温かい液体は何なのだろう。
涙は悲しい時だけに出るものじゃない。
うれしい時にも出るものなんだ。
(ありがとう、シズノ。大好きだよ。)
いつだって私の隣には、ミーちゃんがいるのだから。風と共に消えていく彼女はいつかは枯れてしまう花のようで、それでいてとても温かい思い出の一ページが紡がれたのだった。
(fin.)




