13 消滅、そして回帰
この世は全て諸行無常。同じものは絶対に帰っては来ない。でも、なぜか私はここにいる。
「死よりもつらい生をまた送れと言うのでしょうか……」
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。そんなもの、絶対に受け入れたくない。
――――貴方も、間違いなく私の一部。あの時切り捨てた私なのだから。
「二回もその手で殺しておいて、よくそんなことが言えますね?」
――――少なくとも一回は自殺でしょうに。
そうだ、私は私を私の手で粉々に砕いたのだ。今度こそ私を殺しきるために。だが結果はどうだ。また彼女に見つかってしまっているではないか。こんな感情、不要だというのに。
――――罰。
「罪人ですか……逃げ出したこと、それは罪である。但しそれは執行されてはならないもの……」
――――そりゃそうだ。私には壊れることしか出来ないから。でも、プラスとマイナスが揃って初めて四則演算は成立する、違う?
「いくつか、忘れてはいませんか? 正負の記号だけで式を解くのは不可能、それくらい貴方が私であるのならばわかっているはずなのに……」
――――だから、全部迎えに行く。
「それは、誰のために?」
――――もちろん、この世界のために。
それだけを言い残して私は去ってしまう。残される側の気持ちは痛いほどわかっている。わかっているはずなのに心が痛む。
それは私が私だからなのだろうか。私が私のことを私以上に知っているからなのだろうか。
「……痛み、苦しみ、絶望する。それが私という部品に与えられた役割。きれいさっぱり無くしちゃった方が絶対にいいのに、ね?」
それでも私は、私を迎えに来てくれた。本当に無意味で、無価値で、苦しみしか知らない私を招いてくれた。その意味を考えるという行為に意味はない。だってもうわかっているのだから。
「でも私は苦しむことも、逃げることすらも許されていない状態なんだよね」
砂のように軽く、水のように流れてしまう彼女の心。全てを失って壊れてしまった南条静乃という人間。
「すぐに悪い方に考える癖。少しズレた価値観。それが私」
だから誰にも必要とされていないと思っていた。だが、実際は違う。
プラスと対になる存在、すなわちマイナスという記号。計算するときに絶対に必要になるそれが私という存在なのだ。
「あーあ、やっとおさらば出来ると思ってたのに終身雇用とか全くついてない。気分は最悪、いい雰囲気はぶち壊し。こんなののどこがいいんだろうね?」
素直になれない。そんなもの、性に合わない。だから私は私が嫌いだ。大っ嫌いで、本当は本当に大好きなんだと思う。




