第7話:最強魔術師はミミス村に着く
ミミス村に着いた。
二人分の入場料を払って、村の中に入る。
ミミス村は、活気のある街という印象を受けた。多種多様な見た目の人々が行き交い、大変にぎわっている。
「はぁ……大都会だな」
「そりゃあこの辺では唯一ギルドがある村だからね。王都はもっと人が多いって話じゃない?」
かつて人類が支配していた土地は魔王の侵略により、だんだんと縮小している。土地は減っても人口はすぐには減らないから、主要都市に人が集中してしまうのだ。
「剣聖ミーシャを探したいが……こんなにたくさんいるとさすがにわからないな」
剣を帯刀している冒険者はかなり珍しい。だからすぐに見つけられると高をくくっていたのだが、さすがにこれだけの人の動きがあると一人一人を見ることはできない。
なにかヒントでもあるといいんだが。
「剣聖ミーシャはしばらくこの村にいるってことなんだし、そのうち見つかるわよ。きっと」
「だといいんだが」
「それに、冒険者のことは冒険者が一番よく知ってるんじゃない?」
言われてみればそうかもしれない。
俺たちがたった二人で当てもなく探すよりも、よっぽどその方が効率がいい。
「冒険者が集まる場所と言えば……先にギルドに登録しにいくか」
村に入ってすぐの場所に設置されている案内図を見ながら、俺とミーアはギルドに向かった。ギルドまでは十五分くらいで到着した。
年季が入った木製の扉を開くと、たくさんの冒険者の声が聞こえてくる。昼間から酒を飲んで食っちゃべっていたり、会議をしている冒険者、依頼を物色している冒険者など様々だ。
俺はミーアの手を引いて、奥に設置されているメインカウンターに足を運んだ。
ギルドの建物の中を歩いていると、かなり注目を集めている気がする。ミーアの容姿が目立つからだろう。好意的な目線と、悪意のある目線の両方があった。
好意的な目線は、ミーアを単純に可愛いと思っているのだろう。反対に悪意ある目線は、その先を見ると長い耳を見ている。
エルフだということで差別意識があるんだろうな。
冒険者は実力主義の世界で生きている。一般人よりはエルフに関して寛容だが、中には偏見を持つ者もいるのだ。気にしても仕方ないので、そのまま一気に奥まで進んでいく。
「ここで新規登録はできるのか?」
「はい、新規会員様の登録はこちらで承っていますよ」
美人受付嬢は、ハキハキと元気のよい口調で答える。
「会員登録には試験がありまして、最短で明日には受けられますが、いかがなさいますか?」
俺はミーアと顔を合わせた。
彼女が頷いたのを確認して、受付嬢の質問に答える。
「じゃあ明日でいい。時間はいつになる?」
「午前と午後の二回のどちらかを選んでいただければ」
「わかった、じゃあ午前だ」
「かしこまりました。では、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」
受付嬢は机の下に手を伸ばす。俺とミーアにそれぞれ一枚ずつ紙を渡した。
そこには、名前、年齢、性別、出身を書く欄がある。
俺とミーアは、必要事項をさらさらと書き込み、受付嬢に渡した。
受付嬢は問題が無いか一通りチェックを終えると、
「はい、結構です。明日は頑張ってくださいね」
どうやら、無事に手続きは終えられたみたいだ。
「そういえば、この村に剣聖ミーシャが来ていると聞いたんだが、それは本当か?」
「そう……ですね。あまり大きな声では言えないんですが」
「彼女と会ってみたいと思っている。大まかでいい、どこにいるかわかるか?」
「……申し訳ありません。特定の個人に関してお答えすることはできないんです」
「……そうか、わかった。すまない」
さすがに受付嬢が答えるわけにはいかないか。
「おい、新人! 剣聖ミーシャに会いたいなら湖に行けば会えるはずだぞ」
俺と受付嬢のやりとりを聞いていた冒険者が、そんなことを言った。大柄で少し気の強そうなおっさんだが、悪い人ではなさそうに見える。
「ありがとう。……それは確かな情報なのか?」
「保証はできねえが、村の北東に行ってたのを見ると湖目当てだろうな」
「湖……というとピサル湖か。そこには何があるんだ?」
「古代の遺跡とやらがあるらしいが、特に金目のものはねえよ。あの辺には強い魔物もうようよいる。何かの依頼に行ってるんだろうな。夜には戻ってくるはずだから、北門の前で待ってやりゃ会えるだろ」
「情報感謝するよ」
「おう、頑張れよ新人」
俺は教えてくれた男に頭を下げてから、ギルドを出た。
そして、そのままミーアと一緒に村の北門に向かう。
俺たちが入ってきた南門に比べて、人通りはかなり少ないが、住民と思しき人々がまばらに歩いている。そんな感じだ。
「じゃあピサル湖に行くか」
「え? でもここで待ってたら会えるって……」
「夜まで待つ時間が勿体ないよ。それに、もしかしたら戦ってる姿を見られるかもしれない。ミーアは剣聖ミーアが剣を振るところを見たくないのか?」
「……それは、見たいですけど」
「じゃあ決まりだな、行くぞ」
「ええええ!? そんなのむちゃくちゃだよ!」
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