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第4話:最強魔術師は招待する

「シオン……本当に大丈夫なの? 怒られたりしない?」


「大丈夫だよ。俺の父さんと母さんは変わり者だからさ」


「本当かなぁ」


 ミーアと友達になった次の日、俺は彼女を家に招待していた。ミーアを鍛えている間にも、いじめっ子たちがくるかもしれない。虐めをしていたのは昨日の少年たちだけではないのだ。


 俺がいるからミーアには指一本触れさせることはないけど、鬱陶しいのも事実。その点、我が家の庭ならだれの邪魔も入らない。


 ミーアはエルフである彼女を連れていくことで俺が怒られないか心配して抵抗していたのだが、無理やり連れてきた。


「父さん、母さん。昨日言ってたお客さんだよ」


 二人はミーアの姿を見て、少し驚いているようだった。

 特に父のカルロは、口をぽかーんと開けて一瞬固まった。


「やっぱり……その――」


 ミーアは居心地悪そうにもじもじしている。


「おい、シオン。ちょっと父さんの話を聞け」


 カルロは、真剣な時の声で俺を呼んだ。素直に父さんの話を聞きに行く。ミーアには聞こえないように配慮しているのか、小声で話しかけてきた。


「シオン、お前よくやったな! こんな美人の子を連れてくるとは思わなかったぞ。大事にしてやらないと罰が当たるぞ!」


「そうよ、シオン。とても良い子そうだし、お母さん孫の顔を見るのが楽しみだわ!」


 いや、孫は気が早すぎだよ母さん……。

 それに俺とミーアはまだ付き合ってすら――じゃなくて、問題は別だよ別!


「父さんと母さんはミーアがエルフでも気にしないの?」


「どうして気にする必要があるの?」


 不思議そうに首をかしげる母さんのユリア。


「ミーアって多分あれだろ? カセラートのお嬢ちゃんだろ?」


「え、父さん知ってたの?」


「あそこの奥さんはボインボインでなかなか……じゃなくてだな!」


 母さんの眼が冷たくなっていくのを察したのか、こほんと咳払いするカルロ。


「ミーアちゃんの親父……ジークとは酒を飲む仲だ。俺が冒険者をやってた時は、一時的にだがパーティを組んでたこともあるんだぜ。あいつの娘が悪い奴のはずがねえ」


 まさかそんな繋がりがあるとは予想外だった。でも、そういうことならこの反応も頷ける。ただの変わり者じゃなかったらしい。


 不安げに俺を見つめるミーアのもとに戻る。


「父さんも母さんもミーアのことは歓迎だってさ。ほら、大丈夫だったろ?」


「ほ、本当に私なんかがお邪魔してもいいんですか!?」


「ジークのとこの子だろ? 何も遠慮することはない、ゆっくりしていってくれ」


「もしかして父とお知り合いなんですか?」


「まあな。カルロの名前を出せば一発でわかるはずだ。たまには飲みに付き合えって伝えてくれると助かるよ」


「わ、わかりました……!」


 ミーアがほっと一息ついた。

 敵意が無いことを知って、安心したのだろう。家の外に出るといつも差別されて、苦しんできた。だから、当たり前の対応でも嬉しくなるのだ。


 その様子を見ていると、彼女が今までどれだけ傷ついてきたのかということが伝わってくる。


「ミーアちゃんは料理はできるのかしら?」


 母さんは唐突に料理について切り出した。……何か狙いがあるのか?


「りょ、料理ですか!? まだ何も……すみません」


「未経験なのね!? これは仕込み甲斐があるわ……! 初めてなら変な癖もついてないだろうし、これはチャンスね」


「あの……どうかしましたか?」


「ミーアちゃん!」


「は、はい!」


「男を落とすには胃袋を掴むのが大事なのよ!」


「い、胃袋ですか?」


 ミーアはなぜか俺を見た。少しだけ恥ずかしそうにしながら、


「詳しくお願いします」


 母さんの目がキランと輝く。ロクでもないこと考える顔だ。


「ミーアちゃん、安心して。私が手取り足取り全部教えてあげるから。……それから、私のことはお義母さんって呼んでいいからね?」


「そ、それはまだ早いというか……ええっ!?」


「母さん、暴走しすぎだよ。俺とミーアはただの友達だから。料理を教えるのはいいけど、変なこと吹き込むのはやめてほしい」


「シオン……私は別に……そのむしろ教えてほしいというか……」


 何か言いかけたミーアの言葉を遮って、母さんに強く訴える。


「――母さん、わかった?」


「……前向きに善処するわ」


 やれやれ。歓迎も度が過ぎるとアレだな。ミーアも疲れただろう。

 ……あれ、なんか不満そうだな。なんでだろう。


「よし、ミーア。じゃあさっそく庭の方に来てくれるか?」


「えっと……?」


「ついて来ればいい」


「わかった!」

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