8.お姉ちゃんと小話
ちょっと短いです、ごめんなさい。
キャンプ地にテントを張ってログアウトに成功したわたしは、現実世界に戻ってきていた。
時刻は夕飯どきの七時。
わたしもまたお姉ちゃんと一緒に晩御飯を取っていた。
「……でね? 泉が凄く綺麗だったんだー」
お姉ちゃん特製オムライスを頂きながら、今日のプレイ内容を話す。
「んー、そっかそっか」
ニコニコと笑顔でお姉ちゃんは話を聞いてくれて、
「……ところでナギさんって女の子なのよね? 男じゃないのよね?」
「お姉ちゃん、もうそれ四回目だよ」
時々、出会ったプレイヤーについて聞いてくる。
それも怖いくらいに真剣な表情で。……もし男の子だったらどうなってたのかな。
「そっか……やっぱり女の子なのね」
ホッと胸をなでおろすお姉ちゃん。
「ほーいやは(そーいやさ)」
ご機嫌な様子でパクリとオムライスを口にして、
「アンタ、その子とフレンド登録したの?」
「ふれんど?」
「……ああそっか、教えてなかったか」
複雑そうな顔でお姉ちゃんはスプーンを咥えて、
「フレンド機能ってのはね、文字通り仲良くなった人を登録できるシステムなの。登録すればどんなに離れた場所にいてもメールや通話ができたり、コミュニケーションが取りやすくなるのよ」
ふーむ、つまりLINEみたいなものなのかな?
……待て待て? ってことはつまり、
「登録すれば、簡単に会うことができるってこと?」
「その通り」
「ああぁ……」
がくり、と項垂れるしかなかった。
せっかく仲良くなれたのに、今度はいつ会えるか分からない。【Frontier World】は広いし、さっきみたいな偶然の再会はそうそう起こることじゃない。
もしかしたらひと月……いや一年、十年……。
「ぁぁ」
「ごめん音子、これは先に教えとくべきだったわ」
「う、ううん、いいの」
お姉ちゃんは何も悪くない。
それに、絶対会えないってことはないもん!
「次に会った時にお願いしてみる」
「そっか」
お姉ちゃんは心から安堵した様子を見せた後、
「……その時グダらないためにも、まずは実際に登録をやってみた方がいいわね。あたしこの後、ちょっとした用事で【ブロッサム(第二都市)】に行くことになっているから、そこで落ち合いましょ」
「うん」
「あ、それと――」
スプーンを咥えたお姉ちゃんの表情が真剣に変わる。
鋭利な刃物のように鋭くなった瞳でこちらを射て、
「――クレアさんって本当に女の人?」
「お姉ちゃん、もうそれ七回目だよ」
本日、20時にもう一話更新します!