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ネコのVRMMO世界ゆったり観光旅行  作者:
【第一章】世界旅行の始まり
18/25

16.新大陸へのリベンジ

 ブロッサムを出て、再び【続きの高原】へ。


 でもズカズカと前には出ていかない。入り口付近で待機し、フィールドで戦うプレイヤーたちを見る。


 その中で目を引いたのは、昨日わたしが苦戦したミニゴブリンと戦う一人のプレイヤー。


 同じ初期防具を身につけた少年の姿のプレイヤーは、鋭さを増すような輝きを放つ刀身を持った片手剣を手に対峙をしていた。


『キーッ!』


 飛び上がり、棍棒を振り下ろすミニゴブリン。


 少年はそれに対してバックステップ。地面に叩きつけるや否や横薙ぎに振るわれた棍棒を、今度は頭を低くして回避。そしてそのまま前に踏み出し、


『ギブ、ァッ!?』


 力強い一撃で、細い上半身を斬り裂いた。


 HPが一気にイエローゲージまで削れた破壊力から、わたしと同じで武器だけ強くしているのかな。


『ギーッ!』


 深いエフェクトを刻まれながらも、再び飛び上がるミニゴブリン。けどこれもバックステップで回避されてしまう。


 あとは同じことの繰り返し。ミニゴブリンは背中から崩れ落ちるとHPを空にさせ、消滅した。


 少年は特に喜ぶことはなく、辺りを見渡し始めると、次の獲物を見つけて走り出した。


「なるほど……」


 うん、何となく分かった。


 バックパックをしまい、腰の小太刀を引き抜く。


 前の武器よりも怪しい輝きを放つ短い刀身は、不思議と自信を与えてくれる。……よし、やるぞー!


 気合いを入れて、前に進んでいく。


『キキッ!』


 ザッ、と草地から何かが目の前に飛び出してきた。

 鳴き声から、そして頭でっかちのその姿は間違いない。



【ミニゴブリン】Lv.3



「リベンジ……!」


 小太刀を逆手に構え、敵の行動を待つ。


『キーッ!』


 やっぱり、と言うべきか。敵は空高くジャンプ。


 だから安全距離までバックステップを取る。


 ドン! と、眼前の地面に落ちる棍棒――すぐに持ち上がり、今度は横に振るわれる。


 それをしゃがみ込んで回避し、前に出る。


『ギバッ!?』


 速度を加えて腹部を付加斬り裂くと、HPゲージがイエローゾーン(半分)手前まで削れた。


 背後にたどり着くと、再び武器を構えて待機。ミニゴブリンはジャンプ攻撃をしてくるだろうし、


 ――コッ。


 そんな音は、小太刀の剣先から聞こえてきた。


 理由は、振り向きざまに放たれた棍棒が、前に向いていた小太刀の刀身に触れたからだ。


「ええっ、そんなの聞いてない!」


 少し遅れてたじろぐわたし。


 ……い、いや落ち着け。考えてみれば、さっきのプレイヤーは後ろに回り込んでなんていなかった。こういうパターンもあるんだ。


 よし、また対峙する形になったり、立て直そう。ジャンプと横薙ぎの攻撃を見切って反撃を、


『キキッ!』


 ミニゴブリンの奇声。


 でもそれは、目の前に立つ敵のものじゃなかった。


 わたしの……後ろから。


『キーッ!』


 無慈悲にも、飛び上がり攻撃を始める眼前のミニゴブリン。


 けど、バックステップはもう使えない。


 だからわたしは横っ飛びで回避した。棍棒は見事に地面を叩き、


 直後、わたしの足元に影が作られた。


『キーッ!』


 それは二体目のミニゴブリンのものだった。


 棍棒が、振り下ろされる。


 ……頭が混乱しかけたけど、これはチャンスだ!


 バックステップを取って回避。そして横薙ぎに振るわれた棍棒を回避して、


『ギボブッ!?』


 すると、後ろから突っ込んできていたらしい仲間の顔面に空振りした棍棒が激突した。


 仰向けに倒れるミニゴブリンはHPがイエローゾーンに。そのままレッドゾーン目の前までーーふむ、味方同士の攻撃でもダメージは受けるんだね。


『ギブッ!?』


 そう考えながら、眼前の腹部を斬り裂く。


 足は止めずにそのまま敵の背後に回り、起き上がろうとするミニゴブリンにトドメの一撃。


 断末魔もなく消滅し始めた敵から振り返り、しゃがみ込む。


 ブォン! と、頭上を通過する風切り音。


 わたしはそのまま音の発生源に駆け寄り、まだ消えていないエフェクトに上書きをする。


『ギバッ!?』


 グラつく二体目のミニゴブリン。


 でも敵は諦めずわたしを睨むと飛び上がって、


 まったく同じ展開で斬り裂かれ、消滅した。


「勝っ……た?」


 言葉にして、ようやく理解する。


「くぅ〜〜……い、いやいや待った!」


 思わずその場に寝転んで、勝利の余韻に浸ろうとした行動をキャンセルさせる。


 あ、危なかった。ここはフィールドだった。いつ次の敵が襲いかかってきても可笑しくない。気を抜かずに進もう。


「ふんふーん」


 そう心に刻みながらも、刻み切れていない自分がいた。

 だってホントに嬉しかったんだもん。



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