4 無意識に作られると怖い①
「これから首都ヴィンターリアと湊町ナトリの都市開発計画についての会議を始めます。皆様には今後必要となる施設などをについて意見があれば仰ってください」
アデリナの司会で始まった都市開発計画会議には各種族や士族の長たち、職業別の責任者たちが揃っていた。
「ナトリに船が出来て船員の教育が進むなか、船が運搬に利用できるようになるまでに倉庫の整備が必要です」
「確かに荷が集まるようになってからじゃあ遅いですしね。早急に手配しましょう」
この提案は誰の反対意見も無く通る。
「ナトリと言えば教会も神殿も出来たと聞いたが一般人の使える施設じゃないようなので礼拝堂の増設が出来ないでしょうか?」
現在のナトリの神殿はマサルの、教会はフィナの住みかになっている。当然だが神の住む建物に入り込もうとする愚か者はいない。
「……そうか。俺が神殿を出て小屋でも建てて住むから神殿を使うか?」
俺の提案に全員の動きが止まりざわつき始める。
「いや、マサル……それはちょっと問題がある。今後のことも考えて普通に礼拝堂の新設を考えた方が良いと思うんだ」
「ザーグがそういうなら別に新設の方で良いか……」
俺があっさりと意見を引いてザーグの言う通りにすると宣言するとそれはそれで何かがおかしいと参加者たちがざわめく。
「で、他には?」
「えっ、船に合わせた船着き場の整備が必要だ。今のままでは造船所にしか停泊出来ず、不具合が生じる」
「了解っと……船着き場っと」
俺が周囲のざわめきに気付きもせず、次のリクエストを問うと慌てて大工の親方が答える。それに俺は即座に作ると答える。
「あとはヴィンターリアには温泉とか色々と象徴する建物があるけどナトリは未だに開発途上なのでこの街といったらという場所がありません。待ち合わせに支えるような何かがあったら街の象徴とならないでしょうか?」
エレーナが言うのは意外と実用性がなさそうで重要なものだ。人が行き交うようになったら人の流れを作る為にもこの街といったらコレ! という建物があるのと無いのでは大きく流通が変わってくる。
「街の象徴? モニュメントか? 何か考えておくよ」
「任せても良いの?」
「そうだな、適当に何か作っておくよ」
こんな感じで淀みなく終わった会議は今後こういうものが欲しいねってくらいの感じで行われたのだが、周りの反応をよく観察すらせずに適当に聞いていた一名……まぁ俺なのだが、によって驚愕の結果をもたらすのであった。