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ゼウスの訪問

 夜更けに突如建設中の大聖堂内にある俺の部屋のドアをノックと呼ぶには乱暴すぎる力で叩く音で目を覚ます。

「誰だ一体……こんな時間に」

「邪魔をするぜ。お、意外と良い所に住んでいるな」

 背が高くドアをくぐるように俺の部屋に入って来たのはヘラの夫ゼウス神だ。

「いきなり何の用事だ? ヘラ様も来ているのか?」

「いや、一人だしヘラには何も言ってないさ……結婚するんだってな、祝いに酒を持ってい来た」

「急に気持ち悪いな。まぁ、せっかくだから一緒に飲もうか?」

「……あぁ」

 月を眺めながら一言も発することなく静かにグラスを傾け氷の音だけが二人の間で交わされる。

「もう知っているだろうが神は案外弱い。頼るのが苦手だし弱っているところは見せれない」

「そうだな」

「でもビクティニアスはお前に頼った。邪神騒動の時なんかはお前の前で泣いて見せた」

 少し悲しそうな顔をしてグラスに酒を注ぐゼウス。

「全知全能なんて言われたってなんの役にも立たないことなど山ほどあるんだ」

 そういうゼウスの顔は紛れもなく父親のものでビクティニアスを大切に想っているのが伝わってくる。

「あんたは間違いなく人間の産みの親だよ。本当に面倒で弱くて手がかかる」

「おいおい、ヘラみたいな事を言うなよ」

「でもそんな父親の姿を見て

 そんなこんなでシーサペントの燻製を肴に朝まで飲み続けたのだった。



「おいマサル勝負しろ! オレだってずっと娘のように思ってきたんだ。おっ? 分かるか?」

「ゼウス……お前酔ってるのか?」

 若干呂律が回っていないし目は座ってきている。

「ぶぅわか! オレが神酒の一本や二本で酔うわけねぇだろ!?」

 完全に酔っ払いの台詞を吐かれても対応に困る……取り敢えず大聖堂が壊されるのは不本意だ。

「分かったから広い所に行くぞ。ほら立った立った!」

 酒瓶片手に大聖堂の庭に出ていくゼウス。

「……素直に俺までついていく義理は無いか……面倒だし放っておこう」

 と一人ちょびちょびグラスを傾けていると、

「なんで来ないんだよ! お前に娘はやらんってやりたいんだよう」

「知るか! 飲むなら大人しく飲め!」

 まだ片手に持っている神酒の酒瓶を取り上げグラスへと注ぐ。

「だいたい祝いに来てくれたんじゃなかったのかよ」

「祝いに来たさ! でもビクティニアスは昔っからヘラにばっかりなついてオレの事を少し遠ざけるんだ……」

 それはお前の女癖のせいだ! とは思っていても口には出さない。

「女の子は大体男親にべったりしたりしないさ……格好良い背中を見せていれば良いんだよ」

「お前を引き合わせる為に賭け事好きなオッサンくらいに思われてるよ……きっとそうだ……」

 じゃあ、何で賭け事でスキル券の譲渡をしようと思った!? 俺のせいみたいに言わないで欲しい。

「じゃあ、何で賭け事なんて形にしたんだって顔してるな? 予知や占いで他の方法だと駄目だって出たんだよ……オレだって格好良く娘の為だ、使いな! くらい言って全部くれてやりたかったよ!」

 どんな予知や占いだ……急にゼウスが不憫に見えてきた。

「にしてもぶっちゃけだな? それは俺に話しても良いのか?」

「どうせお前は色々な話を聞いてるんだろ? こそこそ情報収集してたのは聞いているからな」

 こそこそと言われても普通情報収集は公募で集めたりしない。

「別にビクティニアスに知られなかったら困るような情報なんて無いだろ?」

「只の人間だった神になりたてのヤツが好き勝手に情報を集められるのが困ってるんだ」

「そりゃあ、身の回りで困った事ありませんか? って言って雑用をこなしていたら人の口は軽くなるもんさ」

「ホームセンター男か……難儀で面倒な生き物だ」

 もう完全に習性として俺に身についている特性だ。

「確かにな……難儀な生き物だよ」




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[気になる点] 「いや、一人だしヘラには何も言ってないさ……結婚するんだってな、祝いに酒を持ってい来た」   持ってい来た ⇒ 持って来た 「あんたは間違いなく人間の産みの親だよ。本当に面倒で…
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