答え
「姉様はマサルの告白の回答をしに来たハズなんです」
アイラがそう言い終わると同時に立ち上がり瞬時に転移しようとするビクティニアス。しかし転移はそれを妨害する障壁に阻まれて失敗する。
「えっ? なんで転移が!」
「そこの魔法を司る女神様じゃない?」
「アイラ!? なんでこんな事を!? 」
「いや、普通に逃げようとしたから障壁を張っただけですよ? ちゃんと話し合って下さいよ。この時の為に新しく用意した魔法なんですから逃がさないですからね!」
転移妨害の障壁……この時の為だったの!? 開発に協力したのは内緒にした方が良さそうだ。
「……マサル」
「はひっ!」
突然呼ばれた名前に飛び上がり反応してしまう。皆が息を飲むのが分かる……
「む……」
「む?」
「向こうで話ましょうか……」
「姉様っ!」
完全に逃げ腰なビクティニアスと逃がさまいとするアイラだったが、実際にこの空気で自分の恋愛の話をするのはとても厳しい。
「アイラ、大丈夫……ちゃんと話してくるよ」
「うぅ……マサルがそういうなら……」
残念そうにアイラは引いてくれる。
「ビクティニアス、行こうか」
ビクティニアスを連れて船の船首に来た。
「こっちの世界に来てからずっとビクティニアスは、こんな俺の事を気遣ってくれていたよね。ずっと、一人で生きていた俺は、あのポータリィムで一緒に夜空を見上げた夜から一人じゃないんじゃないかと思える様になっていった」
「……懐かしいわね」
「でも、俺は只の人で……ずっとビクティニアスと一緒に歩いていけないから……そう思っていた」
人と神。姿こそ似てはいるが寿命から何から何まで全てが違う存在だった。
「うん」
「でも、ほらこないだ……って言っても何年も前か。一応、神になった訳だろ?」
「そ、そうね」
流石に察しの悪いビクティニアスも何を言いたいのかに気付きソワソワしだし、そんなビクティニアスに気付いて挙動不審になってくる俺。
「(しっかりしなさい!)」
船尾の方から覗いているアイラセフィラが俺の尻を叩いてくれる。そんなアイラの優しさに喉を鳴らし気を入れ直して覚悟を決める。
「………あの夜から君は俺にとっての女神だった」
「ふふふっ、最初から私は女神よ?」
「あっ! そうだな……えっと、ビクティニアス! 今まで色んな人や神様を見てきたけど、感性としては美しいと思っていた女性は何人かいた、でも感情が揺さぶられる程に美しいと思ったのは君だけだ。愛してる……ずっと一緒にいたい!」
そっと手の内に自身で作り出した神鋼の指輪をアイテムボックスから取り出してビクティニアスに跪き差し出す。
「改めて言うよ、ビクティニアス俺と結婚して欲しい」
「っ!………こ、こちらこそ宜しくお願いします。私も貴方と永遠を生きたい」
左手を差し出すビクティニアスに微かに震える薬指へ指輪を通す。すると、ビクティニアスの中と俺の中に何かが繋っていくのを感じた。
「今のは……?」
「きっとこの世界も私たちの事を祝福してくれてるんじゃない?」
「……世界……そういえば、さっき永遠って言ってたけど神様って寿命で死なないの?」
「ううん、神だって寿命はあるし死ぬわよ。それは人の命よりずっと長いだけ……永く遠くに来るいつか迄一緒に生きましょうって事」
「じゃあ、人間と一緒か……」
「そうね、一緒ね」
こうして、俺とビクティニアスはアイラセフィラが感極まって抱き付いてくるまで、そっと見つめ合うのであった。




