003- 第2話 ~城内のちっぽけな探険~
その日の夜。
風呂なんてモノは存在しないし、付近に川もないから水浴びも出来ないと聞いて、仕方がないから濡れタオルで体を拭き「日本人を何だと思ってるんだ!」、と一人萎えていた。
それから5分後。
何故かあの7人の勇者くん達の中で、一番リーダーシップがあったと言うか、一番話していた青年と、中庭のベンチで隣り合って夜空を見ていた。
「おっさんは知ってたんですか?」
「何を? って聞くまでもないか。予想はしてた、……けど」
言い淀む俺に、彼は聞き返してくる。
「けど? 何です?」
「まさか本当に来るとは思わなかったね。異世界……」
予想はしていたのか、一度頷いた彼は、少しニヤニヤしながら続けて口を開いた。
「じゃー、行きなり走ってきたのに何もなかったら、ただの変人ですね」
「それでも、結果オーライだろ。……お前らは何してたんだ? あんな時間によ」
からかわれるのが苦手な俺は、話題を変えようと、誤魔化すように数少ない彼等を見た記憶から質問をしてみた。
すると彼は、少し俯きながら一言「花火です」、と答えた。
「は? いや、秋じゃんさ。なぜに?」
「………3週間前です。僕らは元々8人でつるんでたんですが、ちょうど俺の親友であるそいつが、……交通事故で」
「そ、……か………」
「はい………」
何か、思ってたより全然重すぎるはなしだ。止めてよね、全く。ん? それで花火は?
「8人で観るのが、毎年の恒例だったんです。今年も観ようって、約束して……でも、あいつは来なくって」
「お前のせいじゃないだろ……?」
「それが、どうやら遅刻しそうになって、不注意に道路を横断したそうです。誘ったのは僕からです。だから、……結局、皆で出来なかったので、あのときに」
「あんま、無理すんなよ?」
「はい。何か、おっさんには関係ないのにすみません。でも、ちょっと楽んなりました」
「おう。俺は明日には出てくけどさ。また会ったら宜しくな」
「はい! こちらこそです。 そう言えば、何故お城を出るんですか? ここに残ることも出来たかもしれないのに」
ふ! 解りきったことを!
全力の拳を握って答えてやるよ、青年くん!!
「そりゃ、当たり前だろ! 異世界召喚されたんだ。この世界を最大限楽しまなくちゃな!」
目もとにまだ光る水滴を付けながら、青年は苦笑いして答える。
「何か、……良いですね。問題解決したら、少しはこの世界を楽しんでから元の世界に帰りたいものです」
「そか。あー、一つ言っとくがな? あまり、この世界の人が言うことを鵜呑みにするべきじょないと思うぞ?」
「ええ、解っています。皆と相談して決めていこうかと」
さて、夜も更けてきたし、そろそろ部屋に戻って寝ようかね。
「あー、それから少年よ。俺はまだ二十歳過ぎだ。おっさんじゃねぇ。次からは三草って呼べよ、な?」
少し目を見開いた青年は、口元に笑みを浮かべる。先程彼が口にした、少し楽になったと言う言葉は誠だったようだ。
目元を拭って立ち上がった彼は、もう自信を持った表情をしていて、そのまま俺に向かって名乗ってきた。
「僕は、八雲 森羅って言います。17歳です。お休みなさい、三草さん」
「おう! おやすみ、森羅くん」
何故か、酷く悲しい相談を受けた気がするが、取り敢えず中庭を抜けて城内に戻る。
そして、そのまま寝床に……行くわけがないだろ! と、言いたいところだけど、ステータスも調べたいから一度、拠点に戻る。
召喚された俺たちには、それぞれ個室が貸し出されている。個室と言っても王城のものだ。かなりデッカイ。
だがしかーし! ベットはゴワゴワなのですな。麻か何かで出来てるのだろう。
そんなあまり落ち着かないベッドの端で上半身だけ寝転がった俺は、ステータスを表示させた。
「─ステータス・オープン─」
相変わらす、透明がかった茶色のウィンドウが眼前に表示される。
¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦
名前:三草 九鵺
年齢:21歳
種族:異世界人
状態:異常なし
ランク:<不明>
【ステータス】
LV :1/10
HP :30/30
MP :300/350
バイタリティ(体力):25/30
力 :5
俊敏:40
精神:50
知力:70
気絶値:9
運 :30
《point:0》
ジョブ: <未選択>
サブ: <未選択>
アクティブスキル:なし
パッシブスキル:なし
耐性スキル:なし
固有スキル:<未選択2/2>
《point:0》
称号スキル:〖勇者召喚に自分から巻き込まれたアホな異世界人〗〖女神の譲歩〗
装備:???
¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦
さてさて、さっきは出来なかったし、今から存分に突っ込もうじゃあないか!
まず一番目に焼き付いたこいつから。「勇者召喚に自分から巻き込まれたアホな異世界人」とはなんだ!? これ、誰が書いたよ! 俺アホじゃねーし、バカでもねーし!
それから、「女神の譲歩」って本当に何だよ! 確かに、助かってるけどさ。どうせなら「加護」とかにしてくれよ! 何か「嫌だけど仕方がないから手伝ってあげる」、って言われてる見たいだし、ツンデレかよ女神!!
……あとは、マトモなのか? いや、本来のステータス表示を見たことねーから、何とも言えないけどな。
にしても、未選択の項目多いな。いや、それを処理するために一度拠点に戻ったのだけどね。
で? まずはジョブだよな。「未選択」ってのは、こらから選択できるってことか。さっきもそうだったしな。さてさて、これは期待できますよー? これぞ、異世界召喚だとか転生系の醍醐味ですしね。ワクワクします。
ジョブの「未選択」を押すと、トップページの横に、吹き出し状のページが出た。
¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦
【ジョブ】選択
◆農家
◆剣士
◆魔法剣士
◆商人☆
◆拳闘士
◆弓使い
◆魔術使い
◆盗賊
◆テイマー☆
◆泥棒☆
◆料理人☆
◆鞭使
◆殺し屋☆
◆トレジャーハンター☆
◆マッドサイエンティスト☆
////
¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦¦
えっと? 今度の星は、向き不向き不向きの特に相性が合うヤツってことかな?
に、してもだよ。「泥棒」「殺し屋」と来て「トレジャーハンター」に「マッドサイエンティスト」ってなんだよ! 俺と相性良いの、これ? ずいぶん陰気だな。一応コイツらは、候補から外しておこうか。異世界召喚されて、即牢屋行きとか、シャレにもならんよ。
む! 異世界だから死刑って線も大いにありうるぞ。却下だ、却下。
で、どうしよう。折角だから星付きを選ぶべきだよな。「商人」「テイマー」「料理人」からだよな。そうなると、もう一卓しかないのが少し悲しいけど、「テイマー」にしましょう。
モンス集めるのも楽しいだろうし、何より夢の職業の一つでもあるからね。
あと、余計かもしれないけど、今の自分がまともに戦闘行為が出来るとは思えないしな。
はい、ポチ!
ジョブは「テイマー」にしたけど、「サブ」ってなんだ? …………ん、ああ。なるほど。サブでもジョブが持てるのか。
「サブ」を押して表示された吹き出しは、「ジョブ」のものと同じだったのだ。
これは……「料理人」にしよう。言っちゃ何だが、夕食としてご馳走になった料理は、王城の物だと言うのに、かなり微妙だった。
兎に角味が薄いのだ。塩とかねーの? 胡椒は? 醤油は? この国って、調味料の種類どのくらいなのかな?
それは、明日にでも城下町で調べてみましょうや。
次は、固有スキルの二つ目の選択だな。これはもう既に決めてある。さっき覗いたときに見付けてしまったのだ。「ステータス閲覧」である。これは、異世界ものの小説なんかだとチートとされてるものだ。ま、どうせデメリットが付き物なんだろうけどさ。
これで、ステータスについてのお仕事は一先ず終わりだ。さーて、さてさて、次はお待ちかねの城内探索と洒落混もうじゃあないですか。特に、文献とか秘蔵のお宝とかも見てみたいな。折角だから、「ステータス閲覧」とかも使ってみたいしさ。
おっと、忘れるところだった。仕事用スーツのままじゃ、動きにくいし着替えないとな。スーツ自体は柔軟性のある素材で仕立て上げられているので、動き回っても壊れはしないが、汚したり、どこかに引っ掛けて破けたりしそうなのには、気が引ける。
部屋に支給品として置かれていた寝巻きとは別の、動きやすい作業服に着替えてから俺はその拠点を後にした。
◆◇◆◇◆
城内は静かな夜の帳に包まれていた。所々に備え付けられた松明が優しく揺れる。時折、見回りの騎士と思われる甲冑の人影が、しっかりとした金属質な足音を響かせていた。
さて、部屋を出たのは良いものの、お城の見取り図なんて無いからな。どこに行きましょうかね。
取り敢えず、左の壁伝いに行く戦法でもやりましょうか。
左側の壁伝いに中腰で歩く。見回りの騎士は、置物や廊下の隅の影に身を潜めてやり過ごした。
5分ほど進むと、前方に今までの個室部屋よりも大きな扉が見えてきた。ふっふっふ、何か匂いますなぁ。これは辺りではなかろうか。
一周回って戻ってきた見回り騎士をやり過ごして、扉に手をかける。キィ、と木が軋む音が僅かに鳴り、扉は内側に開いた。
中は、真っ暗だ。
こんな事もあろうかと、部屋にあった蝋燭を持ってきた。扉を後ろ手に閉め、胸元のポケットにあるライターで、蝋燭に火を灯す。
何でライターを持ってたのかって? 別に俺は喫煙しないのだけど、上司とかは俺が持ってないと不機嫌になるんだよな。外に出たときとかさ。そんなとこまで理不尽だよなぁ、全く。
んで、……この部屋は何でしょうかね。
奥に進むと、大理石で出来た壁と床が段々と粗悪なレンガに変わっていく。人が3人縦に寝転がれるほどの通路を奥に進みきると、その幅のままの階段が、地下へと口を開いていた。
僅かに吹き上げる生暖かい空気に包まれた俺は、横に広すぎる階段の端を忍び足で降りていく。
途中、何度か蝋燭の火が消えてしまい、火をつけ直したが、地下に着きそうかと言うところで消えた時にはそのまま蝋燭もポケットに戻した。
何故か。理由は至極簡単なことだ。地下の方からも明かりが漏れていたのだ。これは、蝋燭ではなく松明の光だと思う。
出来るだけ壁側の陰に隠れながら、地下室に俺は侵入した。
さて、鬼が出るか仏が出るか。少し怖いが、楽しみでもある。
地下室はかなりの広さがあり、左右に鉄格子が並べられていた。まるで牢屋である。が、中身はほとんどが空っぽのようだ。時々格子の奥の方に、人のような影が横たわっているが、生きた人の気配は全くしない。毛布か何かだろうか。
やがて、それから変化もなく、一番奥まで来てしまった。気負ったのがバカみたいじゃないか、と思いながら一番奥に一際大きく取られた区画の格子を覗く。
やはり、この中にも生物の気配はなかった。
「さて、戻ろうか」、と思ったところ、頬をあの生暖かい風が薙いだ。地下室に降り立った時にも感じた風だ。
「……………………?」
もう一度、最奥を鉄格子の間から覗く。
やはり何もない。が、その向こうから風は吹いているようだ。
どんなギミックなのかと頭を悩ませながら、鉄格子の端にあった、錆びたドアノブを回してみる。
──回らない。
中央壁際に置かれた松明の明かりは、奥までは届ききらない。
右手でライターを灯し、逆の手で風から守るようにしてドアノブを見てみる。
あー、鍵ですか。まぁ、当たり前だよな。付いてない方がおかしい。ここの探索は断念しますかねー。
仕方なく、俺は南京錠の付いた地下室際奥の格子ドアを諦めて引き返した。
その後、一度拠点(個室)に戻り、服や身体の煤を拭う。
汚いままだと見付かった時に言い訳も出来ないからね。どこに潜り込んでたんだよって言われそうだ。
結局、お宝は見付けられなかった。あそこは怪しいと思ったのだけどなぁー。
よーし、休憩も終わったし、次だ、次!
再度、先程と同じようにして壁を伝う。今度は、右側だ。
そして、進むこと15分ほど。先程とは逆転して、どんどん明るくなる。これだと、蝋燭は必要ないかもな。
そして、少し明かりが収まり始めた所で、行き止まりにたどり着いた。
何か、如何にもな感じのデッカイ建物が、少し離れたところからでも解る。倉庫か? それとも謁見の間とか……は無いだろうけど。何だろ。
そして、今度も扉に鍵は掛かっておらず、出来るだけ静かに、それでいて自然体で中に踏み入る。
どうもー、ごめんくださぁーい。
本だ! ヤバイよココ。映画に出てくる図書館見たいだよ。
建物は、円形のドーム型。真ん中が吹き抜けになり、それを囲むようにしてドーナッツ状の本棚がズラリと並ぶ階層が段々に建てられている。
明かりは、吹き抜けの天井から伸びるシャンデリアが一際眩しく。各々の階層には、優しいオレンジの光が灯っていた。
明かりは、火によるものではなく。何かの鉱物によってもたらされている様だ。
これは、…………広すぎて何から見たら良いのか解らないな。と言うかジャンルとかも解らないじゃん。戸棚には、記号と数字しかないし。案内板とかは無いの?
読書用なのか、綺麗に配置されたソファーや小机の横を抜け、一階層目を見て回ると、半分ほど回ったところでカウンターを見付けた。
カウンターには、5センチ前後の厚さがある、透明な結晶板が5つ置かれていた。各々の手前には腰掛けが置かれている。
何だろ? 電子機器じゃあないよね。魔法か魔術?
俺は、腰掛けには触れずに、その板に触れてみた。ふわぁ、っと僅かな光が点り、文字らしき模様が浮かぶ。
えっとー、「検索範囲を入力してください」、か………?? この、下のキーボードにか?
俺は仕方なく、ボードに同じく表示されたキーボード状のモノを押して行く。
まずは、これ、「世界の法則」だ。
次は、「神」そして「ジョブ」、「スキル」「モンスター」「種族」、最後に「地図」。
調べたい、調べるべき事は数多とあるが、そんなの一夜で調べきれるわけがない。だったら、今一番必要だと思うものを調べなければ。
完全に合致する資料はなかったが、大体そんな感じのは検索に引っ掛かってくれた。とは言うものの、1つだけ妙なものがあった。「地図」と言う検索については「エラー」の文字が出てきただけで、検索に引っ掛からなかったのだ。
結晶板同様、カウンターの上にはA3程度のメモ用紙と羽ペン、インクビンが置かれている。
階層と本棚の番号らしきものをメモして、余分に十数枚の紙とその他筆記用具を片手に、真ん中の吹き抜けに取り付けられた螺旋階段を上っていく。
一階は、読書スペースなのか、本棚の数も少なかった。
検索に引っ掛かった中で、一番近いのは二階層目だ。「魔物一覧」的なタイトルのものだったと思う。あと、「種族」についてもこの階だ。
三階層目だと「法則」関連の資料が多いようだ。
二階層にたどり着くと、古本と植物油のような匂いが俺の鼻をついた。地球にいたときに嗅いだ、女性用の香水に少しにているかもしれない。それよりは、全然優しいとは思うが。
そのまま、手元のメモを頼りにホールを半周ほどする。
あった。ここだ。にしても、本棚一つでもかなりの量の本があるのに、ここから探すのは中々骨が折れそうだな。
そうこうして、背表紙と格闘していると、後ろから誰かに声をかけられた。
「むぅ? あなたも来てたんね。おじさんさん」
あえ、………は?
思わず、フリーズしてしまった。メモを握る手が、少しこわばる。そして、思いきって振り返った。
「………あー、……勇者候補の学生さんか。驚いたよー、見回りの騎士なんじゃないかと」
俺の後ろに立っていたのは、少し眠そうな女子生徒が二人だった。二人とも容姿は良く似ていて、背丈は中学生ほどだが、他の人と同じく高校生なのだと思う。
違う点と言えば、髪の色が紺色と赤茶色と言うところだけだった。
二人を観察していると、赤茶色の方が話しかけてきた。先程も彼女が話しかけていたようだ。
「なるほど。確かに物騒って言うか、物々しいんよね。それにしても、驚きすぎな気もしたんけど、何か良からん事でもしてたん?」
「え、いや。ここに勝手に入ったしな……」
「へ? 自由に出入りして、調べもんしても良いって言ってたやん? 姫様の説明で………?」
「お、………まじか。──すまん、聞き損ねたみたいだ」
「そーれすか。おっさん大人なのに結構抜けてるんやな」
おっと、そこは敢えて聞かなかったのだよ。だから、俺は大人だ!
「………酷いなぁ~。興味が湧かなかったから聞く気になれなかったんだよ」
すると、今まで黙っていた紺色の方が口を開いた。
「………? 確かに眠かった」
うん。今も随分と眠そうですけどね。きみ、そのまま寝落ちしちゃうとか言うオチじゃないよね。
「ねーねは、いつでもそうでしょ? 人の話ぐらい確り聞くんよ!」
……ねえ、それ俺はどうなの? 何か責められてる気がするのは気のせい? ねえ。ねえ!
「おっさん。何て呼ぶ!?」
俺の内心はそっちのけで「ねーね」、と呼ばれた紺色の方に質問される。
呼ぶ? 名前のことか?
「ああ、一応名乗っておくか。俺は三草 九鵺っていう」
「む、………ライムと呼べ」
「ずいぶん日本人離れした名前だな。ハーフか?」
「ペンネーム。むしろ、本名明かすとかあり得にゅ……」
あ、噛んだ。……格好付けたのだろうが、少し残念な子なのかもしれないね。でも、確かに本名を無暗に明かすのは良くないかもしれない。次からは少し考えましょうかね。
「ねーね………」
「ライムと呼べ!!」
「ら、ライム姉。うちのペンネーム? は、なんなん?」
「リムと名乗るといい……」
「えっと、三草さん。と言うことなので、うちの事はリムって呼んでな?」
「と、おっさんの名前は少し変?」
「おい! 変とかゆーなし。地球でもかなり弄られたんだからよ。それにまだおっさんゆーか。俺はまだ二十歳過ぎだっつうの!」
「それは、ドント マインド! いつか認められるさ。諦めなければ。うん!」
「いや、何が、うん! なのかは解らないけど。取り敢えず、ありがとうと言っておくよ」
失礼と言うか勇気があると言うか。俺の言語力では表現できない少女だな。この子は。
「俺はこれから調べ物するけど、君は? 眠そうだけど」
「そうなんよ。ねー、……ライム姉が、寝かしてくれんから……」
「そう! 仮眠をとる! そしたらまた読書」
「そ、そうか。引き止めた様で悪いな」
「いい。ではお休み………」
「では、お休みなさいなんよ~」
そう言って自称ライムと言う実に猫っぽいペンネームな彼女は、フラフラと歩き去っていく。続いてその後ろをテコテコとリムと名付けられた少女が後を追った。紺と赤茶が去っていく。
二人とも生まれたての子猫みたいにヨタヨタしてるから、躓いて怪我でもしないか少し心配だ。
……人の心配してるけど、俺も少し疲れたな。こんなに動き回るとは、……召喚陣の時に全力疾走したせいもあるのか、かなり身体にガタが来ている。
向こう(現世)で最後に買ったコンビニ弁当でも食べてから寝ますかね。
あー、……ポテチはどうしようかな。……日保ちするだろうし、今度でいいか。
ありゃ、七千文字になってもうた。w
この後、もう1話投稿します。
(† ̄ω ̄Τ)Κ