012- 第11話(番外編?) 王都編より ~初めてのテイム!??~
今回は番外編のようなものとなります。(//のようなもの//←ここ大事!)
かなり文量が、(5000文字から)増えてしまいました。w
「それで、ギルドはどうだったのです?」
城壁の外へと出てから一時間ほど経っただろうか。馬車に揺られるなか、いつの間にやら起き出していたライムによって声を掛けられた。
「いやいや、結構快適な環境だったよ。金かけてるな。ただ、受付の人とかは少し余所余所しい感じがしてたけど………」
俺は、リリーの横で、御者席の微妙に狭い座席のせいか、固まってしまった身体に伸びをしながらギルドでの出来事を語る。次いでに馬車の受け渡しを予約した所も手短に話す。視線は、左上の迂回している山ではなく、前方に見えて来た頂上が白に染められた峠に向けていた。
「ほう。ギルド……次の町で一緒に行く!」
「……お、おう!」
もう話は終わったのかと気を抜いていたら、もう隣国に着いてからの話をされるとは。
そんな風に思っていた俺に、ライムは更なる爆弾を投下してきた。
「ギルドの後は? 聞く分には時間があった様に聞こえた!!」
そ、そこは突っ込まないところじゃないのかな。此方も敢えて、手前までしか話さなかったのだから。
「ぬ、………ああ。ちょっとな。折角テイマーとか言うジョブに就いてるからな……機会があったし試したんだよ、うん。あんまし聞いても面白くないと思うぞ?」
「詳しく話す!!」
はえ!!? 俺が嫌そうに言ったから聞くのか? 嫌がらせなの??! ま、まぁ、別に話す分には良いけどさ。……俺、マジで恥ずかしいから!!
そんな俺の内なる声なぞ露知れず、ライムは更に口を開く。次は何が投下されるか知らないこちらの身にもなって欲しいものだ。
「テイマー、どんな感じ?」
あ、ああ。テイマーって言うジョブでどういった事が出来るのかを知りたかったのね。結果何かが変わった訳ではないけど、助かった気がするのは何故だろうか。……いや、知ってたからね! 知ってたから!!
んじゃ、まあ。話しますかね。
ここは妥当に、事の発端からでも。
◆◇◆◇◆
乗り物屋のグラン店長の弟であるグリンさんとのやり取りを終え、店先で彼と何でもない雑談をしていた。無論、店内で人と会ってからリリーは口を開いていない。
「なるほど。グリンさんも中々大変ですね。準備ができたら隣国へ行くのですよね? もし、また機会があれば、お会いしましょう。……ん、ぬあ!??」
そろそろ雑談を締め括ろうと思っていたところ、視線の端で白くて小さな何かが走り去ったのが見えた。
反射的にそちらを見ると、リスの様な、でもリスとは違って所々長い毛の生えたキュートな生物が眼に入った。
思わず変な声をあげてしまったのは……無かったことにしよう。今は、それよりもあの白い何かの方が重要だ!
「ああ。あれは、ホワイトスクワァーラルですよ。この先の広場に行けばもっと見れますよ? ここまでも、たまに来るんですよね。子供なんかが住んでいた頃は、喜んでましたけどね」
俺の反応に対して、グリンさんは快く解説してくれる。
「魔物、ですよね?」
「一応そうですね。まぁ、害は殆どないですし、人にもなつきますよ? 言い伝えでは、戦争をしていた頃には、連絡のやり取りなどでも活躍したとか、……ああー、つまり手紙を運ばせたって事ですね」
「へえ、なるほど。頭が良いんですね、きっと。えっと、俺たちは、ここら辺で。運が良かったら隣国でもお会いしましょう」
「ええ、ありがとうございました。お気を付けて!」
俺達が路地を曲がるまで、ずっと頭を下げ続けるグリンさんを見て、やっぱり良い人だなと思いながら俺達はホワイトスクワァーラルが多く生息していると言う広場とやらに向かった。
お姫ちゃん等との集合時間まで、まだ一、二時間は余裕があるしな。
「リス……?」
「ん? 何か言ったか?」
「………」
いやいや、何か言えってさ。ん? まさか、リスに反応した俺がダサいとか思ってないよな!? 大人だって可愛いのには反応するやつもいるんだよ! むしろ、そこはキッパリと「可愛いね」、って言えるから大人なんだよ!!
実際にリリーが、そんなことを考えているわけもないのだが、俺は勝手な妄想に浸りながらグリンさんに教えてもらった道を行く。
広場には10分足らずで到着した。そこは、日本人として俺が考える「広場」とはあまりにも懸け離れた場所だった。
まず、広さの桁が違うのだ。小さな山一つ分はある様だ。全体なんて見渡せないから、もっとあるのかもしれない。これは、自然公園とか何とかって言うべきだろ!
敷地の入り口付近には木製の柵が立並び、開かれた門扉の両脇には噴水が置かれている。
敷地内は、少し開けた場所がある以外は、もう山道に入るだけのようで、丘の様な斜面が続いている。その辺りから木々がポツポツと生え始めているのが見えた。
確かにいそうだね。リス。
森だものね!
「さて、探してみますかね」
「むっ、リリーもヤル、デス!」
お、おう。いつになくやる気だな。そのヤルってのが殺るじゃないことを祈るよ!
ここからは別行動で探すことにした。まぁ、別行動と言っても、お互いに見える範囲なんだけどな。
奴隷の契約上の何たらってのもそうだが、何より見付けたらお互いに教え合うって決めたからな。
リリーが、どんどん木々の間に入り込んで行くのを眺めながら、俺は一応は整備された砂道を進んだ。
目を細めてやっとリリーの姿が見えるほど離れた頃、前方に木製のベンチが見えた。しかも、どうやら誰かが座って、こちらを見ているようだ。
知らない人に思わぬ形で会うと言うシチュエーションに少し緊張しながら近付く。
毎度の事でもう飽き飽きだが、お爺さんがベンチで寛いでいた。……おじさんじゃなかっただけましかもな。うん。
「やぁ! こんにちは。今日みたいに晴れている日は、こうやって森林浴なんてのも良いもんじゃろう? 若いの」
俺が近付くのを待っていたのか、大きく深呼吸してからこちらに声をかけてきた。膝の上の手元で何やら小さな革袋を大事そうに持っている。
「こ、こんにちは。そうですね。俺も自然は好きですよ。……その、ところで、ホワイトスクワァーラルって言う魔物を知りませんか?」
「ほわ、……何だって? 魔物なんて城壁の中には居ないだろう?」
「えっと、その。リスみたいな、ちっこい動物? だと思うのですが」
「ん? むぁあ、チビスケたちのことか!! なるほど。世間じゃ、ほわ何たらって呼ばれてるんじゃな」
「あ、はい。そうみたいですね。俺もつい先程知りましたから」
「んにゃ、もうすぐ会えるよ。わしの隣に座っとれな。ついでに向こうの猫娘も呼んできなっ」
「は、はぁ……」
お爺さんの話に曖昧な返事をしつつ、リリーを連れてきてベンチの空いたスペースに二人で座る。
リリーは、もう見つかったのかと思ったのか、テケテケと駆けてきたが、リスらしきシルエットが見当たらず、ガッカリしているようだ。
うむ。俺も段々とリリーの表情の変化が読めるようになってきたかもしれん! ってか、どんだけリスに執着心持ってんだ?
俺達がベンチに腰を落としたのを確認するようにお爺さんが、こちらを一瞥する。
「さて、と……」
お爺さんは、己自身も腰を更に深く沈め、手元の革袋の口を開く。例の大切そうに持っていた革袋だ。
お爺さんが、袋に指を入れて取り出したのは、赤い木の実のような粒だった。
形は向日葵の種子に似ているかもしれない。模様は向日葵のような縞模様はなく、赤一色なので、随分と微妙に見える。
お爺さんは、十程のそれらを己の足元へと優しく放った。
餌、だろうか。
お爺さんは、もう一度革袋から赤い種子を取りだし、今度はそのまま掌の上に乗せている。
そして、ベンチの背もたれに寄り掛かりながら…………目を閉じた。
あれぇ? どゆこと?
リリーと共に不審に思っていると、お爺さんの口許がわずかに動き、何かの言葉が紡がれた。みょごみょご言っていてよく聞こえなかったが、どうや「念力」、と言ったようだ。
お爺さんのみょごみょごから3分ほどたった頃、背後の木々の間からガサガサと落ち葉の下を移動するような、小動物の動く音が聞こえてきた。
眠そうにウトウトしていたリリーは、俺よりも先にその音に気が付いて、ベンチの後ろを必死に身体を捻りながら覗いている。……身長が足りないから、見ていると言うより覗いているになってしまっているのだ。
俺たち二人が背後を気にしていると、真横でカリカリ、と言う音が突然聞こえ出した。
リリーと俺は、ほぼ同時にお爺さんが座る方へと首を回すと、そこには少しくすんだ灰色のホワイトスクワァーラルが2匹、お爺さん掌から赤い実をひょい、と摘まみながらその小さな口で食んでいた。
手足の先に毛は生えていないようで、小さな黒い指が覗いている。
背中には3本の紅色の縦筋模様があり、手足の肘には長い体毛が伸びていた。俊敏に動く度に、その長い毛が身体の動きに合わせて付いてくる。新体操の一競技であるリボンに少し似ているかもしれない。まぁ、それだけ動き回るわけだが。
始めの2匹がお爺さんの掌からベンチに降り立つと、ベンチ下からワラワラと他のホワイトスクワァーラル達がお爺さんに群がり出した。
どうやら始めの2匹がこの群れのリーダー格の様だ。
リーダー格の2匹が、赤い実をほとんど食べてしまったので、お爺さんが新たに小さな革袋から赤い実を取り出して、尻尾をフリフリしている彼らが食べやすいようにベンチの上で掌を広げる。
途端に集まってきた彼らにお爺さんの口許が緩んでいた。
足元に散らした赤い実は既に食べ尽くされたようで、ひょこひょこと歩き回るホワイトスクワァーラルが数匹居るのみだ。
そう言えば、リリーは?、と思い、お爺さんとは反対の方へと顔を向けると、ベンチから大分離れたところでこちらに背を向けてしゃがみこんでいた。
不思議に思って、ゆっくりと後ろから近付いて、上から覗き込む。
「こどもか?」
リリーは、身体を落ち葉に隠し、落ち葉を頭から被った真っ白いホワイトスクワァーラルと見つめ合っていた。
先程見たものより二回りは小さいその顔に、子どもではないかと思ったわけだ。
まぁ、身体が見えんと何とも言えないけどな。
リリーも判断できないと思ったのか、小さく小首をかしげた。
ホワイトスクワァーラルが、驚かないようにという配慮なのか、動作は揺ったりと、そして控えめで。
そのまま3分ほどの間、落ち葉に隠れたホワイトスクワァーラルとりりーが見つめ合うのを眺めていると、後ろから忍び足でお爺さんがやって来た。
そして、俺と同じようにリリーの斜め後ろから覗き込む。
「ほう……チビすけ達のこどもが居るとは。何10年振りかのぉ……珍しいこともあるもんじゃわい」
そう、小声で呟いた彼は、革の小袋から赤い実を5粒取り出して俺に渡した。
俺が受け取りつつお爺さんの顔を窺うと、顎でリリーの方を指した。
餌やり……だよな。
でも、何で俺に渡すんだよ。直接渡せば良いのに。……ん? 俺が何か言うと思ってるのか? と言うか、何か言われるようなことするつもりだったのか!?
まぁ? 確かに、直接渡していたら俺が大声で叫びだしていたことだろうけどさ。
それとも、奴隷の首輪が問題なのかもな。今度、調べてみますかね。
そんな馬鹿なことを考えながら、足元でしゃがみこんでいるリリーに、お爺さん経由の赤い木の実を渡す。
リリーは、視界の端で俺の差し出した木の実を確認し、ゆっくりとした動作で受け取る。
思いの外、リリーは落ち着いているようだ。少なくとも見た目はそう見える。
そして、これまたゆっくりとした動作で、片手の掌に乗せた木の実を数粒持ち上げ、指先に乗せたままホワイトスクワァーラルの子どもに差し出す。
ホワイトスクワァーラルの子どもは、初めの内はキョトンとした眼で、近付いてきたリリーの指を見詰めていたが、少ししてからその指先に木の実が乗っていることに気付いた様で、ジリジリと自分からも距離を縮め始めた。
ただ、かなり警戒心は強いようで、リリーの指先が不自然な揺れを起こしただけでも少しばかり後退っていた。
その行動もまた、可愛さを際立たせているのだけどね。
暫くはそんなやり取りが続いたが、やっと思い描いた時がやって来た。ホワイトスクワァーラルの子どもが、リリーの指先から赤い木の実を取り、食べ始めたのだ。
まぁ、そちらに向けていた意識を少し背けた隙にだったけどな。
サッ、ヒョイッ、だったよ。本当に、サッ、ヒョイッ、だったから。
と言うわけで、今、こやつはその小さなお口を精一杯に広げて、赤い木の実を頬張ろうとしている。
そして、諦めた。
今度は、先端部分から食べようとしている。……うん、少しずつだけど食べる事が出来ている様だね。本当に、少しずつだけど。
子供だからか、食べるのにかなり時間がかかるようだ。リリーは根気強く見守っては、次の木の実を差し出している。
タフやなぁ。俺だったら焦れったくなりそうだ。本当に、何でそんなにこの子等にご執心なんだい、リリー君?
そう言えば、昔は伝書鳩ならぬ、伝書リスやっていたんだっけ。
思えば、モンスターと呼ばれる存在に出会ったのもこれが初だったな。普通に動物感覚だから忘れていたよ。
む? そう言や、テイマーのジョブスキルであるテイムもしてみたかったんだよな。折角の機会だし、やってみるか?
たぶん、ホワイトスクワァーラルは、戦闘向きではないし、伝書だって仕込まないと出来ないかもしれんが、……あのお腹の毛に自分の顔を擦り付けてモフモフしたいんじゃぁー! く、首に巻いてみても良いかもな。嫌がらなければだけど。
さーて、いっちょテイマーのスキルとやらを拝見しますかね。
思えばこちらもあまり使えていない「ステータス閲覧」スキルを行使して適当にレベルの高そうな個体を探す。
──居た。
群れのリーダーか、サブリーダー格の個体だ。
ステータス欄の種族名の横に「上位個体」と書かれているし確実だろう。ランクは、Eマイナスとやはり低い様だが、ホワイトスクワァーラルと言う種族間では、成る程高い方である。
確認する中で観た彼等のランクは、大半がFマイナス辺りだった。まぁ、あくまでこの群れの話であって、そもそも他の群れの個体は観たこともないから比べようもないんだけどな。
因みに、俺自身のランクは、Eである。いやぁ、ヨワヨワなんだろうな。………どうやって上げるのやら。
相変わらず、ホワイトスクワァーラルの子どもに赤い実をあげているリリーと、先程より離れた場所からその様子をニコニコ眺めるお爺さんを置いて、俺はロックオンしたEマイナスの個体の方へとにじり寄る。
出来るだけ刺激しないように静かに歩いたとは言え、足下に積もった落ち葉が音を発してしまう。
音か気配が原因なのかは兎も角、タートゲットの個体は俺の存在に気付き、こちらの顔をジっと眺め始めた。
やりにくい気持ちはあるが、ここで踏み止まったところで、何かが変わるわけではないと思い、そのまま三歩程先まで距離を縮めた。
よーし、もうええやろ。早速始めしょうかね。
まずは、どのくらいの距離から効果があるのか、という点が問題なのだが、ステータス欄で、「テイム:Lv1」と言う文字を押しても「モンスター(魔物)を従属化させることが可能。成功率はレベルと比例し、対象とのランク差によっては不可能。また、種族によっても効果は上下する。」としか書かれていなかったので、実際に探るしかない。
一つ試してみますかね。
では、ちょいと、失礼して。
数歩前のホワイトスクワァーラルに目線を会わせ、良く解らないが一応右手を突き出してみる。
「─テイム!─」
逃げ出しやしないかと言う所も心配だが、あまり大きな声を出すと、お爺さんやリリーにバレそうなので、若干押さえ気味に言葉を発す。
………特に何も起きないな。むしろ、ターゲット君は首傾げてるしな。
も、もう一回試してみるか。もう少し近付いてみたら成功するかもしれない。
先程より慎重に、少し前へと踏み出し、改めて目線を合わせ、再チャレンジしようと口を開いた。
「テイ──!!」
と、その時、目の前にいたホワイトスクワァーラルが、初動無しに走り出した。呆気に取られる内に、もうターゲット君の背中は木々の中に隠れてしまっていた。
ぼおっとしていると、背後から落ち葉を鳴らして近付いてくる足音が2つ聴こえてくる。
あー、やってもうたなぁ、と言う罪悪感と何が原因で逃げたのかと疑問に思いながら後ろを振り返る。勿論背筋を伸ばして片手を後頭部をかく様な仕草も忘れずにだ。
「若いの。あんた何か魔力干渉を試みたじゃろ……?」
先に近寄ってきたお爺さんが、やれやれと首を振りながら問いかけてきた。先程とは違い、かなり大きな声だ。
これは、俺を責め立てるためだなと始めは思っていたが、違和感を感じて回りを見回したところ他のホワイトスクワァーラル達の姿が一切見当たらない。
成る程、彼等への配慮はもう必要なくなったと言うことですね。声音からしてもその音量が普段通りなのだろう。怒られなくて良かった様な、いっそ叱られた方が罪悪感も晴れるだろうにと言うか、……何だか、更に罪が重くなったような感じだ。
「いや、何だか申し訳ない。……えっと、あの子達はもうここに来なくなったりしますかね」
もしそうなら、えらい事をしてしまった事になるだろう。まぁ、お爺さんの表情と態度的にはまだ希望が見えるが、実際のところ解らないのが現実だ。
「うんにゃ、時間が経てば来るだろうさ。まぁ、驚いたって感じじゃよ。稀に居るんじゃよな、チビスケ達に向かって魔法かなんかを放つ若いのが、のう」
どうやら俺が初めてと言う訳ではないらしい。……嬉しくもないが、少しほっとした気がするな。
「ま、今後は気を付けるんじゃぞ?」
そう彼は言い残し、俺が初めて見た時と同じようにベンチにどっかりと座り込み、すぐに舟を漕ぎ出した。
俺は、またもや呆気に取られていたが、リリーの視線に気が付きそちらに顔を向ける。
リリーは、半眼で呆れた顔をしていた。
今回は全面的に俺が悪いから仕方が無いがね。
「そろそろ集合場所に向かいますかね……」
「しゃーねー、ですっ! 誰かさんのせいで、ホワイトスクュー、ッスク………リス達も居なくなったですしっ!!」
……う、うん。今回は突っ込まないよ。そんな立場じゃねーだろって言われそうだし。
よーし、行こう行こうー。
俺が、公園の出入口の方へと歩き始めると、リリーは逆にお爺さんの座るベンチへと近付いた。
ありゃ? まだ何か? と思っていたが、顔を上げたお爺さんとリリーは30秒にも満たない間に会話を済ませてしまった。ついでにリリーは何かを受け取ってるし……。
よ、よし。今度こそ行こうか。
ってか、お爺さん寝てたんじゃないのかよ。
そうそう、公園を出る際に、脇に立てられた看板を見たんだが、「園内の生き物を無断で持ち出す等々の事はしないように! この敷地は国の私有地でもあります。場合によっては犯罪と見なされます。」とか何とか書かれてた。……あぶねーな。むしろ、テイムできなくて良かったかもしれんよ。
あれ? お爺さんはこの事言ってなかったような。ま、まぁ良いか。
◆◇◆◇◆
「で、ライム達と合流したってことっすな! にしても、初っぱなから失敗しかしてない!!」
割りと細かく説明を入れつつ俺が語り終えようかとしたところでライムが終わらせてしまった。どうせなら最後まで語らせて欲しいものだよ。
何だかんだ色々あったなと思い返しつつ、皮袋の水筒から水分補給を行う。喋りすぎて喉がカラカラなのだ。
まだ何かを口走っているライムを放っておき、俺は街道の先を見やる。まだまだ道は長いらしい。ライムによるとあと半日ほども馬車に乗らねばならんらしい。気が遠くなりそうだ。
「何処かで休憩を入れ無いとな……」
誰に答えを求めるわけでもなく、独り言のように呟く。
「……キィィ!」
あ? え? はえ?!!
ぼうっとしていた為か、変な鳴き声が聴こえた気がした。いや、もしかしたらリリーが変な声を……絶対にあり得んな。
「──キィ?!」
こ、今度こそはっきり聴こえたぞ!
嫌な予感を感じつつ、リリーの座る横に視線を向ける。
あっれれぇー!?? リリー君の襟口から見覚えのある尻尾が覗いてるぞー??
このモフモフは、……ホワイト……ほわいと何チャラって奴だよねー。うん……いや、見なかったことにしよう。
……と言うか。どうやって、持ち出したんだ? 俺の記憶が正しければ、その尻尾の模様は、あの子どもリスだよな。……餌付けか?
……これで、あの国に戻れない理由がまた増えましたな。まぁ、帰りたいなんて毛頭思いもしないだろうけどな。
やはり、うちのパーティーってつくづく変なヤツしか居ねーのな!
まだ、旅の初日も終えてないのにさ、……先が心配になってきたよ。
◆ P.S.~ここまで読み進めてくれた優しき勇者へ~
テイマーと言う職業を持ちながら、全くもって活用した様子を描けなかったので、番外編(的なもの)にて書かせていただきました。一章終わったのに、シェフ要素どころかテイマーの「テ」の字と言えるものも無かったことには御詫びを。
こちらを読んでいると言うことは、ここまで続いた私目の拙い文章にお付き合いいただけたのでしょう。
解読のほど、ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
これにて、【第1章 王都編】は終わりとなります。引き続き【第2章 旅編(隣国へ)】を投稿したいところではあるのですが、お察しの通りストックが底を尽きました。元々筆休めとしてこの作品「テイマーなシェフ」を書いていると言う事もあり、只今構想中のメインの作品を優先しながら暇を見つけては、と言った形で書いております。予定では今年度中にこの作品を投稿するのは、今話が最後となるかと思います。〈2017〉
※【第二章 旅編(隣国へ)】ですが、目次にもある通り、諸事情により現在活動を中断しているため、来年2019年春(早ければ年明けより)執筆作業及び投稿再開の予定です。
(なお、今話より(投稿開始以降は)、週3話投稿とさせていただきます。例外を除いた場合となりますので、その点はどうか暖かく見守って頂ければと思います。)
投稿を再開する際には、活動報告にてお知らせします。随時確認したいかたは、お気に入りユーザ登録していただければ、各々のホームより確認できるかと。
まだまだ新米故、拙い表現力や語彙力を何とか駆使して書いてはいますが、皆様のアドバイスやご指摘があればこその作品となります。今後もどしどしコメント等々頂けると助かります。
繰り返しとなりますが、ここまで読んでいただけたかた、無論、途中から読み進めていただけたかたにも、最大限の感謝をしております。
ありがとうございました!!!
あわよくば、これからも皆様のお眼鏡にかなえばと願いながら。あしからず。
〈改稿2017.6/3〉
author;真宵夜々榊
(† ̄ω ̄Т)К<長文失礼しました!>




