001-プロローグ 暗闇から陽の下へ~召喚されたいのでされましたw~
新連載です。よろしくお願いします。
社会ってのは最低だ。
社畜ってのがいるだろ?
つまりは、会社に、上司に使い回される奴等のことだ。今の日本社会に生きるサラリーマンの大半がそんな状態にあると何かの本で読んだのを覚えている。
まぁ、俺からすれば、そんなの羨ましくてならないのだがね。
だってそうだろう? 仕事以前に職場を含めた身の回りの人間関係が、無条件で始めから最悪なんて、どう対処すりゃ良いんだ。
本当、社会ってのは最低最悪だよ。
学生時代、親があれこれ言う中に、「悪いことをしたら地獄に行く」だとか、悪魔がどうとかと言われ続けたものだが、この社会こそが地獄なのではないだろうか。
そして、そこに巣くう悪魔たちはきっと、自己保持の為だけに味方を作り、お仲間ごっこを続けるために敵を作る。そんな連鎖の中で、都合良く敵として立てられるのが、俺のような余所者だ。
何かにつけて俺の悪口を言い合えば己らのごっこ遊びの存在意義が出来るわけだ。全く下らないと言えば終わりだが、今の社会はそのごっこ遊びで構成されている。枠外にいるのはほんの一部だけだ。
さて、では何時人々は、そのごっこ遊びを習得したのだろうか。そして、例外はなぜ存在し、それが少数なのか。
これも振り返れば至極当然のことだ。
社会に生きる人々は、生まれてから数年で保育機関に預けられる。
そして、ごっこ遊びもその頃より体に染み付き出すのだ。
良くあるだろう? いつも仲の良いチーム以外の人は、無条件で仲間はずれにして行くアレだ。
そして、彼等の世界に突然入り込んだものには容赦しない。寧ろ共通の敵が出来たと喜んで今までの敵味方関係なくいじめ通す。
さて、まずここで一つ目の例外が出てくる。
それはまあ、誰かを仲間はずれにしない方がいいと、そう教育された子ども等だ。
だが、そんな七面倒で、時間をさくような事をする親は、やはり少数だ。
誰もが自身の子供に良い教養を与えようとはするが、そこにかける費用は可能な限り削減する。
結果。社会に出てまで続くごっこ遊びでしか、人との関係を保てない人間が増えるわけだ。
二つ目の例外だが、これは単に保育機関に預けられなかった子供だ。
彼等は、人同士の関係やその仕組みについては、自分自身の知りうる家族構成等からしか連想し、理解することが出来ない。
結果的に、学校などの集団教育等の世界に放り出されたとき、かなりフレンドリーな態度で人と関わろうとするか、自分と他の間に壁を作り、殻の中に閉じ籠ることでしか付き合いかたを選択できない。
無論、それらにもまた別の例外が存在するが、それはまた別の話だ。今回は省略しよう。
話しはもどるが、保育機関に預けられた子ども等は、次に小中高と学校と言う名の枠に閉じ込められ、推奨されてごっこ遊びを更に高度なものへと変化させていく。先生と言うごっこ遊びの先輩が居るのだ、仕方あるまい。
そして、そこで落とされた者も、次こそは自分が加害者になろうと奮闘するのだ。
そんな流れの中で例外を突き通すのは、それだけ考え方に違いがあるのか、プライドか、運が悪かったのか、と言ったところであろう。
俺の周りには、教育の行き届いた生徒が十数人いた。
調度俺が小学生になろうかと言う時期に、子供を育てる環境作りとして、俺の住まう田舎町に彼等は越してきていたのだ。
数十人が、その例外だったのではまた話が違ってくるのは、当たり前だ。
田舎で育ったクソガキどもは、外の世界には興味津々である。
大人の中には、疎外感を感じて避ける者もいたが、子供は好奇心旺盛なやつが多いのだ。
そして、教養のある移住者達にクソガキどもが従い始めた結果、例外の塊が出来上がったのである。
俺はその環境が普通だと思って生きてきた。
それがもっとも合理的だと。
だが、社会に出てみれば、ほら。
どんなに恵まれ、そしてかけ離れすぎて、ごっこ遊びに対処できなくなるような生活を自分が送ってきたかに気が付いたのはいつだろうか。
一年と半年だ。
俺が、そのごっこ遊びの敵役として選抜されてからは、それだけの月日を耐え抜いてきた。かなり頑張ったと自負している。
始めの頃は、そんな馬鹿らしい事には付き合いきれないと放置した。が、それにも限度がある。何かにつけて、失敗を俺のせいにしたり、付き合いきれないと知らん振りをすれば、それは人としてどうなんだ、とかな。
正直、馬鹿らし過ぎてもうこんな仕事は止めてしまおうかと思っている。
もう少し都合の良い職場はないだろうか。
例えば、社員全てが会社に忠誠心を持ち、疑わず、協力すべきと指示されれば従順に従う。
それこそ、社畜を極めきった者たちの世界だ。
だがまぁ、そう簡単には行くまい。
どこの世界にも人間関係は伴う。
そして、今の日本ではどこも同じような惨状だろう。
いっそ、この世界からご退場願いたいものだ。
そろそろ、本題に入ろうか。
結局のところ、今週の出来事に行き着く訳だが、どうも酷すぎてならない。
一年半、生真面目に働くことを心がけたお陰か、上からのお声掛けによりとあるプロジェクトのサブリーダーを任されたのだ。
やっと、俺を少しでも認めさせるチャンスだと意気込んでいた自分が、今は恥ずかしい。
リーダー君と協力していく内に、そのプロジェクトの予定をもっと早め、もっと安定して行えることが解った。
始めに気づいたのは俺だ。
そして、リーダー君に伝えた。
その翌日に皆で集会を開いたのだが、思いの外その提案は受け入れられた。……リーダー君の物としてだがな。
これには参ったが、別にリーダー君に非は無かったので責めようもなく、結局は横取りされるような馬鹿な奴だと言う認識を強めてしまった事だろう。
それから数日間は、からかいの雨だ。
今日なんかは、こうだ。
「リーダーとサブリーダーの差がおかしくない? 顔から能力まで上下逆さだよね」
と、こんな言葉なんて序の口なくらい下品なやつもあったが。……ってか、顔関係なくないですか? 確かに、リーダーのイケメンっぷりに比べたら平凡だけどさ。
やっぱり、俺が田舎出だからか? 何か苦労して出来上がっても、付近の都会人たちが何食わぬ顔で自分のものにしてしまう。無論、対等に扱ってくれる人も居るが、向こうにも立場があるからか、極力関わりを持たないようにする人の方が多いのだ。
結局、またしてもごっこ遊びが、そして自分が一番なんだろう。まぁ、自分が一番と言う点においては、俺もそうかもだが。
「はぁー」
就職先間違えたなぁー、と呟きながら手元のスマホの文字列に目を馳せる。
ウェブ小説。
最近、はまってしまったのだ。これまた現実逃避したい俺には丁度良い代物である。異世界で自由に生きるとか羨ましすぎだろ!
季節は、秋の中盤。少しずつ寒さが這い寄っていた。今年の冬はどう越すかね、何て頭の隅で考えながら、「歩きスマホはだめ!」と書かれた看板の横を、小説を読みながら通り過ぎる。
途中のコンビニでチンして食べるお弁当と飲み物、適当なスナックを購入して自宅マンションまで5分の所、何たら第3高校の前を通る。と、もう既に日は落ちているというのに学生が数人ほど校庭で突っ立っていた。
何だ、不良がイタズラでもしてるのかな、と始め俺は思ったが、どうやら何かがおかしい。
自分でも気付かぬ間に、立ち止まって彼等を見いる。電灯の明かりだけの中に7人の学生。影に覆われていて、男女はハッキリとしない。
次の瞬間、辺りに光が差した。
弧を描くように立った彼等7人の足下から丸い光の輪が広がる。
俺は咄嗟に走り出した。あの輪っかに入らなければいけない気がした。右手にスマホ、左手にレジ袋を握った大の大人が校庭の砂を蹴り飛ばして疾走する。こんなに思いっきり走ったのはいつ以来か。
「知ってる! 知ってるぞ。異世界召喚ってヤツだろお!!?」
>>今話は、こんな良く解らない主人公の(勝手な)考えが羅列されておりましたが、次話(本編)からは、がらっと雰囲気も変わります。今話が読みにくかったかたは、次話等を覗いていただけると嬉しいです。
暫くは、毎日更新の予定です。