モヤマスターに俺はなるの巻
「父様これは?」
「それはスエードといってだなぁ、動物の皮から作ったものだ。」
「じゃーこれは?」
「まったく、忍は色んなものに興味津々だなぁ。誰に似たんだか‥。」
もうすぐ3歳の誕生日を迎える俺は、父親に家にある物の名前や用途を聞いていた。そしてそう、俺の名前はまさかの"忍"である。生まれたその日に半蔵が付けてくれたんだが、理由は「かっこいいから」だそうだ。デジャブだ。
生まれたばかりの時は動くことも話すことも出来なかったが、3年間聞いているだけでこの国の言語を日常会話は完璧にできるくらいまで上達していた。あとは物の名前を覚えるくらいかと思っていたんだが、驚いたことに日本にある物と名前はほとんどが一致していたので覚えるのにそう時間はかからなさそうだ。
それよりも日本にはなかった?もしくは見たことがなかったものが一つだけあった。それは、人体からごく稀にでてくる、湯気のようなモヤモヤしたものだ。
初めて見た時は、半蔵が鹿を狩って持ち帰った時のことだ。半蔵の全身をモヤモヤとした湯気が覆っているのだ。目を丸くしてじっと見ていると、次第にモヤは薄くなって消えてしまった。見間違いかとも思ったのだが、半蔵は狩りから帰ってくるたびにモヤモヤになって帰ってくるのだ。
こうして日常生活を送っている時はまったくモヤつかないのに、なぜ狩り後だけなんだろうと不思議に思っていた。
「父様、体の周りのモヤモヤしたものはなんですか?」
と、聞い見ると半蔵は、自分の身体をキョロキョロ見ながら、
「ん?なんかついてるか?」
と、よくわからないと言った表情で返してきた。
「今はでてないんですが、狩りから帰った後とかたまに、モヤモヤした湯気がでてるんですけどわかりますか?」
と、その時のことを細かく説明しても半蔵には心当たりはないようだった。それは母様に聞いても同じだった。
だが、そんなある日のこと。
色んな物に興味津々な俺は、家の裏にある古井戸の中を覗き込んでいた時、自分の体重を支えていた右手が滑りそのまま井戸に落っこちたのだ。
それを見ていた半蔵がすぐさま飛び込んで助けてくれてので、大事には至らなかったが俺の体に異変が起きた。そう、モヤである。
俺の全身からモヤが出ているのだ。煙のように掴むことはできない。
だが、腕を振っても離れることはない。
意識をして右手にモヤが集まるイメージで拳に力を込めてみる。
すると、モヤが少しずつ右手に集まりだしたのだ。右手のモヤが大きくなるにつれて全身から生気が吸い取られるような感覚がする。
と、少し力を抜いた瞬間にモヤは拡散して消えてしまった。だが、俺はある確証を得たような気がした。
モヤの正体それは、生命エネルギーだ。言い方を変えれば"氣"とでも言うのか、戦闘民族が出したり引っ込めたりしてるあれだ。生命の危機を感じた時に本能で発現したんだろうか?
あの事件以来、俺はこっそりとモヤの扱いを練習していた。井戸に落ちた時に生命の危険を感じ無意識で出せたんだが、今では体の一部に全神経を集中させることで、ほんのりだがモヤがでるようになった。10秒ほど維持するのがやっとだ。すぐに拡散してしまう。これは相当な訓練が必要だな。
その日からの俺は1日のほとんどの時間をモヤ修行に費やするようになった。
全神経を右掌にモヤが集まるように集中させる。
全身から生気が抜けていくと同時に右掌に野球ボール大のモヤが集まる。この状態を維持する。
10秒‥20秒‥30秒になる前にモヤは拡散して消えてしまう。
「約30秒くらいか‥。よしもう一回。」
一人でぶつぶつと喋ってる俺を半蔵は首を傾げながらじっと眺めていた。
「なぁ、忍。何して遊んでるだ?」
「父様、見ててくださいね。」
俺は少しは扱えるようになったモヤを右掌に集めて自慢げに半蔵に見せた。
「‥‥‥‥なんの遊びだ?」
「どうですか?父様みたいに多くはないですがある程度は動かせるようになったんですよ。」
「だから、なんの話をしてるんだと聞いているんだ。」
「え?‥‥‥この白いモヤ見えませんか?」
「以前もそんな話をしてたが、俺には白いモヤはまったく見えないぞ‥‥‥。」
まさかとは思っていたが、やはりこのモヤは他の人には見えていないらしい。今まで一人モヤ遊びをしていた俺は他人から見たら危ない子だったといことか‥‥。なんてこったい。
それから、俺はなるべく人目につかないようにモヤマスターになるべために訓練を続けた。
それから一カ月ほど経った日、ある事件をきっかけに俺は運命的な出会いをすることになる。
細かいこと書くと話進まないし、書かないと話進まないし‥‥。どっちにしろ話進まなくて困りました。
もっと工夫して読みやすいように努力しますm(_ _)m