表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/62

悩めない体質

 電車は、やっと銀座駅まで来たわね。

 あーあ、こんなくっさい、粗末な椅子にじっと座ってるのって、なんだか疲れるわぁ。

 じゃ、続き行くわよ。

 

 ……

 

 トロイアの襲撃によって、廃墟と化した故郷で、アルテウスは天に叫んだ。

 

 『神々よ! 私はついに故郷へ帰ってきた! 今、あなたがたは私に何を求めておられるのか?』

 

 ああ、しかしアルテウスよ。オリュンポスの神々がお前の呼びかけに答えることは、決してあるまい。

 

 なぜなら、お前は神の道具であり、その役割は、ミーノータウロスを殺した時に、終わっているのだから……。

 

 オリュンポスの影響を受け付けぬ、クノッソスを崩壊させるために、世界に押し込まれた異物。

 時計仕掛けの英雄、それが、アルテウスなのだ。

 

 強靭な化け物、ミーノータウロスを斃すという、英雄ですら困難な課題を達成させるため、オリュンポスの神々は、アルテウスにある仕掛けを施した。

 

 目的を果たすまで、道半ばで死すれども、ふたたび生を得て、時間をさかのぼり、やり直しを強いられる……それが、アルテウスという英雄の、真の姿なのであった。

 

 おそらく神々は、価値を失くした英雄は、円環を巡る時の牢獄に閉じ込めておきたかったに違いない。

 かつて神々を欺こうとした、シーシュポスのごとく。

 

 しかし、偉大なオリュンポスの神々と言えども、古代神、時間の支配者クロノスとの取引では、妥協をせざるをえなかった。

 

 もし、使命を果たしたならば、アルテウスの時間は、常の人々のごとく、未来へと進ませなければならない。それがクロノスの意思だった。

 

 神々の望み通り、ミーノータウロスを斃したアルテウスに降りかかる数々の災厄は、いらなくなった道具を破棄するための、罠でもあったのだった。

 

 が、オリュンポスの神々とはまた異なる価値観を創造しようとするピタロス一族の力によって、アルテウスは、神々の仕掛けからも解放された。

 

 しかし、くびきから放たれたアルテウスには、もはや大切な何物をも、残されていなかったのだ……。

 

 ……

 

 って、これが消えちゃったのもわからないでもないわね。

 だって、理屈が多すぎるもの。

 哲学者とかが好きそうな感じだわ。シュロスのペレキュデースとかね。

 

 でもね……これって、もうちょっとだけ続くのよ。

 我慢しなさいよね! こっちだって眠いのを我慢してるんだから!


 さて、昨日の夜に、主人公(仮名)ちゃんが、お料理で自分の感情を伝える魔法を授かったということが、前回で、わかったわよね。

 そして今、主人公(仮名)ちゃんは、お台所で悩んでいるわ。

 主人公(仮名)ちゃんの不思議な力のとばっちりで、仲たがいした脇役(仮名)ちゃんと、イケメン(仮名)くんを仲直りさせようと決心したんだけど……。

 

 (せやさかい、どうすればいいんや……。わからないのやで……。なぜかって、わたし、アタマが良くないのや)

 

 すでにあきらめムードの主人公(仮名)ちゃん。

 洗い途中の食器を、ジョイの泡でこねくり回しながら、なんどもため息をついているわ。

 困惑のあまり、モノローグが関西弁になってしまってもいるわね。

 

 かたつむりのように、のろのろと考えているうちに、ようやく、主人公(仮名)ちゃんを包んでいた、モヤモヤの奥に、名案が暁の星のように、燦然ときらめいたの。

 

 (そうだ! あいつに、相談してみよう。ガベジなら、いい感じのアドバイスをくれるかもしんない)

 

 ガベジというのは、主人公(仮名)ちゃんの中学時代のお友達よ。男の子なの。

 でも、主人公(仮名)ちゃん的には、ぜんぜんタイプじゃなかったから、中学を卒業してからは、完全スルーだったけど、今困ったときになって、急に都合よく、その存在を思い出したのね。

 

 よし、万事解決!

 

 主人公(仮名)ちゃんは、急にウキウキし始めたついでに、新しい問題に、頭を悩ませ始めたのよ。

 

 (わたしのこの、お料理の超能力、一体なんて呼んだらいいんだろう? 名前、つけなきゃ。

  そうッ! 料理を作ってるときのッ! 感情でッ! 相手の心を支配する能力ッ!)

  

 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

  

 ……なんだか、ひとりで盛り上がっているようよ。

 こうした効果が限定的な超能力の名称って、基本的に、60年代以降に勃興した、ロックだの、ポップスだのといったジャンル音楽を演奏するミュージシャンや、その歌の名前からとる決まりになっているようね。

  

 (うーん、なんにしよう? 

  ビートルズ? ストーンズ? ラモーンズ? ストゥージズ? ハートブレイカーズ? ヴォイドイズ? メントーズ? って、ズばっかじゃん。ダサい。

  ……ランシド、NOFX、ヴァンダルズ、ブリンク182、サム41、クランプス……なんか、偏ってるな。

  ダイナソージュニア、ニルヴァーナ、スマッシングパンプキンス、GGアリン……ちょっと古いか。

  ヨ・ラ・テンゴ、ザ・ジョイ・フォーミダブル、ハロー・セイフライド……もうよくわかんないな~。

  

  ま、いいや! その辺も含めて、ガベジに相談しよう、そうしよー!)

  

 他力本願ねえ。とにかく、主人公(仮名)ちゃんの中では、解決しちゃったみたいね。


 ジョイのパワーって、かなりすごいらしいのね。今使ってるのは100円ショップで購入したものだから、ほどほどだけど、使い切ったら、ちょっと試してみたいわね。 ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ