チャハーン戦争
本屋の店頭で、アタシの後ろから誰かが近づいてきたわ。
「なにか、お困りですか~?」
「何よ! あんたら、バカにしてんの? アタシはコスプレじゃないって言ってんでしょ? 仲間みたいなツラで寄ってくんじゃないわよぉ! コスプレおやじどもが!」
相手の二人組はびっくりしたようにアタシを見たの。
警官1「いや、わたしたちは日本の警察官でですね……」
アタシ「ケーサツ? あんたらが?」
警官2「これ制服なんですよね、コスプレじゃなくて」
言われてみれば、それっぽい服装してんじゃないの。
納得するアタシ。
そしたら、警察官は何か話し合ってるわ。
警官1「お前、英語できる? この外人さん、ぜんぜん自分の状況をわかってないよ。説明しないと」
警官2「や~、ムリっすね。プーカオナカウさんなら、わかるんじゃないっすか? 外人だし」
警官1「そうだな、ちょっと呼んでみようか。おい! ちょっとこっち来て!」
後ろに止まっていた白黒の車から、同じような格好のがまた一人、出てきたわ。
プーカオナカウ「ハーイ! センパ~イ! ナンカ、ゴヨウデスカ?」
警官1「外人、外人だよ! ちょっとしゃべってくんない?」
プーカオナカウ「サワディー!」
アタシ「英語じゃねーだろ!」
プーカオナカウ「And if good,do not see the movie now together?」
アタシ「そもそも、アタシ英語わかんねーんだよ!」
そして、ついにアタシの宇宙が目覚めてしまったわ……。
カッ!!!!!(←効果音。なんかバーッと爆発する感じのね)
食らえーい! ペ ガ サ ス 昇 竜 波 ? だ っ け ?
ドシャー!!!(←効果音。頭から落ちる感じの音よ)
フッ……他愛無いわね……。一瞬で、全員倒したわ。
って、んなわきゃないでしょ……この後、交番まで連れてかれたわよ……。
(なになに?
なんで二人とも、わたしが料理中にやってたことをマネしてんの?)
首をかしげる主人公(仮名)ちゃん。
大ー正ー解ー!!!!
やっと気づいてくれたわね! アタシ嬉しい!
なんだか、異様な事態に気付いた主人公(仮名)ちゃんは、ふと不安になって、二人をじっと観察し始めたわ。
がっついていた脇役(仮名)ちゃんと、イケメン(仮名)くんは、何となく黙りがちになっちゃったの。
すると、脇役(仮名)ちゃんが、イケメン(仮名)くんをギロリとにらんだのね。
「あんまり、食器をカチャつかせてんじゃねーよ! 行儀わりーんだよ」
ど、どの口でそれを……? と困惑するようなセリフを吐いたのよ。
したら、イケメン(仮名)くんも、イラついた感じで、
「テメーこそ、ビンボーゆすりしながら食うんじゃねー! 作法がなってねーな!」
おまえもな! ともかく、二人は突然、激しく言い争いを始めちゃったのよ!
「ビンボーなんだから、しゃーねーんだよ! ケンカ売ってんのか? おぉん?」
「金遣い荒いから、ビンボーなんだよ! 金もねーのに、ケンカは買えんのか? あぁあん?」
なんとなく止めようと、口をはさむ主人公(仮名)ちゃん。
「あ、あ、あの……仲良くしなよ。人類みな兄弟ってゆうね」
「だぁっとけ! イケメン(仮名)ごときに、礼儀作法のことなんか言われたくねーんだよ! 水洗便所の使い方間違えてたくせによ!」
「んだぉ、ゴルラァ? 脇役(仮名)だって紙ぜんぜん使ってなかったじゃねーかよ! あれ何のためにあると思ってたんだぁ? ボケが!」
「もー、やめなよぉ! ふたりとも、ケッコンするんでしょお?」
脇役(仮名)ちゃんも、イケメン(仮名)くんも、にらみ合いながら、主人公ちゃんに言ったわ。
「「ケッコンは、やめ!!!」」
そして、ものすごい勢いで出てっちゃった。
一人取り残された、主人公(仮名)ちゃんは、すっかりイヤな気持になってしまったの。
(ウッソ。なんで?
……もしかして、わたしの……料理のせい?
”かやく”をフツーの料理に使ったら、ケンカしやすくなるとか?
食った人はゼッテー爆発する、とか。
”かやく”だけにね)
「きゃひゃひゃ!」
ひとりで、笑ってる場合かしら? まったくもう。
こないだ、ホカ弁行って、お金払って、後でお弁当取りに行こうとしたら、すっかり忘れちゃって手ぶらで帰っちゃったわ。こーゆー場合、もらい損ねた、お弁当の行方が気になるわね? ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?