残酷凶人 あしゅらメン
「はい! 一丁上がりぃ!」
真っ暗闇の中に、いきなりねじ込まれる大音声。
うわ!
アタシが目を開けると、みんなが心配そうな顔つきで、こちらをガン見してるじゃない!
きもっ!
「なにしてんのよ、アンタたち!
そんなことより、犯人グループってどういうことなの?」
メルポメネーが、拍子抜けしたように、
「あら、すぐに生き返りましたわ。
つまらないですわねえ」
生き返った?
そういえば、アタシの言うことを聞かずに、地球より重い人命を、安易に奪ったメルポメネーにお説教しようとしたとき、急にクラッと来たのよね。
貧血かしら?
戸惑っているアタシに、アスクレーピオスが、
「どうです?
死亡時間、およそ一秒ですよ。
死亡から蘇生まで、全然タイムラグを感じなかったでしょう?
治療と、トランスフォームは、基本的にほとんど同じなんですよ」
得々と説明しながら、アスクレーピオスは自分もどんどんトランスフォーム。
いつのまにか、少年モードになっているわ。
……か、かわいい……。
それはともかく、犯人グループって何よ!
じろりとメルポメネーをにらみつけると、さっさと目をそらしたわ!
代わりにガベジくんに視線を転じたら、あっさりゲロしたの。
「むん……マルとそのカレシさんの死体を取りに、メルポメネーさんと一緒に、病院を襲撃したんです。
センパイが盗んだ救急車で、入口に突入して、蝶の幻覚を出して……ぼくが警備員をビシバシ倒して……あと、警察が来たんですけど、それも、手当たり次第に倒しちゃったんですけど……パトカーとか破壊して、病院もメチャクチャにしてしまいまして。
どうも、すみませんでした。と思う」
うお~!!!
そんなじゃ、テロリスト認定されもしょうがないでしょ!
アタシが怒っていると、今度はメルポメネーの胸に穴が開いたわ。
胸から、どばっと血が噴き出たの!
ぶっ倒れるアホ妹に、素早くアスクレーピオスが駆け寄り、ちゃちゃっとなにやらすると、あら不思議!
盛大に血をふいていたメルポメネーの体は、何事もなかったように元通りに。
けがしてもすぐに治るのは結構だけど、このままじゃ、アタシたち、一方的にやられるばっかりだわ……。
ケーサツの正義の怒りはもっともだけど、こっちだって、死んじゃうわけにはいかないもの。
こーなったら、反撃よ!
「この死体、好きに使ってもいいですか?
いい方法があるのですよ」
六人分の新鮮な死体を前に、うれしそうなアスクレーピオスが、提案したの。
「なにするの?
とは、もう聞かないわ。
ここから逃げられる手段なら、なんでもこいよ!」
アタシの了承を得たアスクレーピオスは、またもちゃちゃちゃっと死体に何やらやっていると、うわ不気味!
六つの頭!
二つの胴体!!
十二本の腕!!!
六本の脚!!!!
という、アホな小学生が、でたらめに作ったかのような、めちゃくちゃな人体のオブジェが立ち上がり、奇声を発したの!
ガーッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!
「これぞ究極の魔改造!
”残酷凶人 あしゅらメン”です!!」
メンって……マンの複数形かよ!
そして、”あしゅらメン”とやらの頭につながったヒモがくっついた四角い箱を、アタシに渡したわ。
箱には、ゲームセンターのゲームみたいなレバーとボタンがついているわ。
これって、コントローラーなのね。
「あと、技のコマンド表です。
こいつの力で、あなたは菩薩にも、悪鬼にもなれます!」
やめてよ……。
でも、アタシがやらなきゃ、誰がやる!
いきなり出現した、異形の怪物に、警察官たちは大混乱。
やれる、今なら!
え~……”ワンツーストレート”は……打ボタン三回押しっと。
お!
出た!
それから、パワーボム!
ん~、レバーを進行方向に二回入れてから、組ボタンを押す……っと。
あれ?……出ない……ちょっと難しいわね、これ……。
「お姉さま、”あしゅらメン”、めちゃくちゃ撃たれてますわよ」
メルポメネーは優雅に観戦しながら、茶々入れてんじゃないわよ!
アタシ、格闘ゲームは初心者なんだからね!
このあいだ、がぶがぶ君を購入したんだけど、意外に高かったわよね。味はまあ……ぼちぼちなんだけど。にしても、一か月たっても全然減ってないけどね。そんな飲まないし。大五郎でもよかったんだけどね。
ところで、次回のヒヨコちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?
↑名前部分を変更するの忘れてたから、やっと今日、直しちゃった!
いままで、ごめんなさいね!




