宝探しゲーム
皆さん、お久しぶり。
メルポメネーで~す。
お姉さまは、オリュンポスでヒヨコちゃんたちをよみがえらせる準備が終わったそうですのよ。
なので、地上へ、長距離ワープ中とのことですわ。
そこで、わたくしとガベジくんは、ヒヨコちゃんたちの遺体を、掘り返すことになりました。
ヒヨコちゃんたち、死者はこの世との縁が切れている状態なので、とりあえず、モノにしまっておく必要があるのです。
魂の状態なので、大きさや、形状は何でも構わないのですが、ヒト型のほうが、安定して格納しやすいようですわ。
というわけで、安土城で買ったおみやげの、武将フィギュアに入ってもらうことにしました。
で、さっそく例の場所へと向かったのですが……。
なんと、林の中には、なにやら目立つ黄色いテープが張り巡らせてあるではありませんか!
ご丁寧に、”立ち入り禁止”なんて、印刷されていますわ。
嫌な予感を抱きつつ、お昼でも暗い林の中を透かし見ると、なにやら、制服を着た殿方が、何人も動き回っている様子。
しかも、わたくしとガベジくんに、声をかけてきた人がいらっしゃったの。
「君たち、ここは立ち入り禁止だから、引き返してもらえるかな」
「むん……す、すみません。なにかあったんですか? と思う」
ガベジくんの質問に、声をかけてきた制服のおじさんは、
「くわしいことはまだ、教えられないんだよ。
でも、ちょっと大変なことになっているらしい」
「むん……そうですか。お邪魔してすみませんでした。と思う」
あっさり引き下がるガベジくんに、わたくしは思わず抗議しましたわ。
しかし、ガベジくんは、あからさまにおびえた様子で、
「むん……警察に見つかってしまったみたいです。
これで、ぼくたちは名実ともに犯罪者になってしまった……と思う」
なるほど、地元を管理している治安維持組織に、死体が発見されてしまったのですわね?
そんなこと、わたくしにお任せなさいな!
指先ひとつで、追い払って見せてあげましょう!
と、わたくしは超の幻覚を大量発生させて、林を包み込んでやりましたわ。
すったもんだあって、最終的には、警察官のみなさんは、林から退散しました。
「これでよろしいでしょう?
彼らがいなくなれば、ゆっくり作業ができますわね」
得意になっているわたくしの高揚感を妨げるように、ガベジくんは不安げな面持ちで答えましたの。
「むん……でも、すぐに戻ってくるようなことを言ってたのが、聞こえましたよ。
なんらかの原因で、害虫が大量発生しているようなので、それに対処できる装備を持ってくるだとか、なんとか……と思う」
ガベジくんは、ほんとうに気が小さいですわねえ!
また、ヒヨコちゃんの聖水を拝領させてやろうかしら?
まったく。
で、死体を埋めた現場に到着したわたくしは、ちょっと驚いてしまいましたのよ。
そこは、警察によってとても荒らされていたのです!
あちこちに番号の書かれた四角いプレートが置かれ、周囲には担架やら、専門的な道具が置き去りになっていました。
しかし、何より困ったのは、埋めた場所の目印が、なくなっていたのですわ!
「むん……どこにヒヨコを埋めたのか、覚えてますか? と思う」
「わかりませんわ……確か、彼女の遺体を納めた穴には、チュッパチャップスの棒を立てておいたはずなのですが……」
「むん……ちょうど、遺体を発掘する前に来てしまったようですね……。
もう少し、待てばよかったかもしれません。
そうすれば、少なくとも、ぼくたちが穴を掘ることにはならなかったろうから。と思う」
「いまさら、過ぎたことをとやかく言っても仕方ありませんわ。
手当たり次第に掘ってみましょう」
さあ、ヒヨコちゃんの遺体と、対面といきましょうか!
わたくしは、スコップの柄を握りしめましたの。
天気のハナシはなるべく避けないと、お姉さまとかぶってしまいますわね。
ですが、プライベートな話題で、面白いことなんかわたくしにはありませんのよ。
あ、そうそう。
そういえば、このあいだめったに会わないおじさんが訪ねてきたとき、三歳の子供は、すぐにおとなしくしているのがイヤになったのか、おじさんに向かって、バイバイ、なんて手を振り始めたのですわ。
まったく、顔から火が出るような思いとはあの事ですわね!
ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?




