クッキンGoGoGo!
ちょーっと待って、ちょと待ってえ、おにぃ~さ~ん!
……突如としてある実存的な疑惑がアタシを襲ったわ!
アイデンティティ・クライシスをすら招来するその禁断の問いが、あたかも天啓のごとく雷霆と化して、アタシを震撼させたのよ!
なんかアタシの行動に既視感あると思ったら……みんな知ってるかしら?
おシャカ様とキリスト様が、東京都下の某T市で、日常生活を送るっていう、ゆるゆるコメディ、あの驚異のメガヒットコミックを……。
あれとかぶってんのよぉ、コンセプトがっ!
あのマンガも、高貴な存在が卑俗な生活に過剰適応する様を楽しむ、という、要するにギャップ萌え的なおかしさを追求しているわけでしょ?
個人的には、BL的な二次創作を想起したくらいよ。
そう、同じよ、アタシのコミカルなエピと……つっても、アタシは脇役も脇役、いてもいなくてもどっちでもいいB級神だけどさ。
ま、それはいいのよ。コンセプトかぶりなんて、オマージュよ、リスペクトよ、トリビュートなのよー!
でも自分で自分を許せないのは……
キャラかぶりよ。
…………皮……カムリ、じゃなくてよ。
はい! そこー! ウケてんじゃないわよっ!
ホーホホホ、ホーホホホ、ホーホホホホホホホホホホホホ!
↑あー、これも頭髪がすごいアフロヘアーの主人公が出てくるジャンプのギャグ漫画のタイトルをほうふつとさせるわぁ……。
確認するために、コミックを購入することに決めたわ。
でも、この、さんのわ? 違う、ミ、ノ、ワってところには、書店が見当たらないわねえ……。なんか頭が牛の怪物とか出そうな地名だし、イヤだわぁ……。
あ、あった。さっそく入店よ。
『すみません、欲しい本があるんですけど』
『本の名前わかりますか?』
『えーと……確か、”神聖お兄さん帝国”とか、そんなカンジの。あ、マンガなんですけど』
『う~ん……ありませんね……』
……どうしてかしら?
普段は、しょっちゅうぼんやりしている主人公(仮名)ちゃんは、今はなんとなくイライラしていたわ。
中学以来の大親友、脇役(仮名)ちゃんの爆弾発言や、そのカレシを好きになったことが、さすがのぼんやりさんにも、キツイ刺激をあたえちゃったみたいね。
(脇役(仮名)だけは、絶対裏切らないと思ってたのに……ケッコンするなんて、びっくりだよ。あーあ、これであたしは一人で取り残されちゃうってわけかよ……)
み、醜い……。理不尽なジェラシーを心に燃やしながら、でもおもてなしの心を忘れない主人公(仮名)ちゃんは、どうにか自分を説得するの。
(まーいいや。どーせすぐ別れるんでしょ? ケッコンするとか言い出したのは、初めてだけど、あの子のカレシなんか死屍累々なんだから。脇役(仮名)は別名、カレシの墓場だもんね)
こ、これも醜い……。でも、一応、気を取り直して、と。
さて……クッキンGo!
主人公(仮名)ちゃんは、冷蔵庫に入っていた食材?のうち、かまぼこ、ブロッコリーを取り出し、ゴミ箱へIN!
すばやく中くらいのナベを取り、PB商品の安いサラダ油をごぷっ、と注いだわ。
流れるようにIH調理器のスイッチオン、炊飯器からアツアツのごはんをしゃもじですくい、温まりはじめたナベに投入したのよ。
徐々にすでに熱いお米がさらに熱されている間、キッチンの引き出しを開けたわ。
そこには、使い残した即席ヤキソバの「かやく」が。
袋を破り、乾燥した野菜の切れ端をナベに放り込んだの。
さらに、赤い缶に入った万能調味料を惜しげもなく、大量投下。
シンクにあった洗い残しのスプーンを使って、ナベの中身をかき回しているわ。
でも、主人公(仮名)ちゃんの体に異変が。
(か、かゆい……!)
そう、主人公(仮名)ちゃんの、デリケートゾーンが、しかもそのセンター部分、つまり――ってもういいわよね。言わないわよ!――が、強烈にかゆくなってしまったのよ!
(どーしよう。いま料理中だし、でも炒め物の最中だから、ちゃっちゃと済まして、また手を洗えば、いいんじゃないかな。でも……それは、料理に対してちょっと失礼かも!)
主人公(仮名)ちゃんは、おもむろにスエットに手を突っ込み、こころゆくまでかゆみが消え去るカタルシスを味わったわ。
理想と現実の違いってこんなもんよね。
そして、すべて百円ショップで購入した不揃いのお皿に、出来上がったチャーハンを盛りつけ、同じく百円ショップで購入したスプーンを添えて、リビングに戻ったのよ。
近所の粗大ごみ置き場で拾ったちゃぶ台に、お料理のお皿を三つ置いたわ。
「じゃあ、召し上がれ……」
真っ先に主人公(仮名)ちゃんが食べ始めたわけ。
なんか今回はシモのハナシばっかりだったわね……ちょっと出だしでショックなことがあったのがまずかったのかしらん? ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?